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南方作戦

 南方作戦は鷹村からだ。鷹村は、熊村と狼村に近く七村連合の安全圏に入っている。


 先ず、鷹村から狐村への経路で一つ。狐村から東北東の女狐村、南東のマムシ村、西のムササビ村へ、それぞれ一つ。最後にムササビ村から南南西のムクドリ村への一つ。計5つの繁殖地を潰して経路を確保する。


 七村連合としては、ムササビ村の最低限の安全確保もしたい。特に、いつの間にかムササビ村が滅ぼされるような事態は防ぎたい。そのためには、ムササビ村に近い繁殖地を2つ殲滅する必要がある。


 付近の村との交渉の結果、ムササビ村近くの繁殖地殲滅に戦力を出す交換条件として、更に2つ標的を追加する事になり、標的は計9つとなっている。


 天気が良かった事もあり、作戦は順調に進んだ。そして、3月26日には、作戦終了を祝う宴会が狐村で執り行われた。ワシの天測では、明日が春分かつ新月だ。既に一年の1/4過ぎたんだなぁ。


 アマカゼと一緒に、打撃部隊の若衆らの話を聞いていると、狐村の呪術士見習いのアカハナが旦那と一緒に近づいて来た。


「タツヤ様、連合の皆様、戦勝おめでとうございます。

 皆様のお陰で、村々の行き来が楽になると、皆喜んでいます」


「戦勝おめでとう。

 こちらこそ、狐村には特に多数の戦士を出して貰ったことを深く感謝します。狐村の戦士は素晴らしい。そちらのマナブ殿など、武技も高く、また若衆への指導も熱心だった。村々を代表する勇者と言っても過言ではない」


 わざわざ、旦那と一緒に来たんだ。煽てておいた方が無難だろう。


「旦那を褒めてくれて、ありがとう。

 タツヤ様も美しい婚約者と優しそうなお姉さんがいて、羨ましいわw」


 アカユリ姉さんも集まって、暫く他愛もない話で和んだ頃、マナブさんが自然に話題を変えた。


「ウチの村の巡邏体制も大変だが、ムササビ村はもっと大変じゃないか? 簡単に従属させてしまったが大丈夫なのか?」


「ああ、そうだなぁ。大変だと思う。皆、頭を悩ましている。だが、従属させた以上、何とかするさ。大戦に勝利してからだが」


「周りを完全に掃除してくれれば、ウチの村が引き受けても良い。と言うか、ムササビ村の人口が増えるまで、狩場として使わせて欲しい所だが……連合に参加していないと名目が立たないんだろうなぁ」


 うん? 連合参加に色気とか有るのかな?


「今回の大戦には関係ない場所だからなぁ。ワシは此れから、西に移動して無人地帯の繁殖地を一つでも削ろうと思っている。敵を事前に削っておけば、少しは有利になると思うんだ」


「西のどの辺りですか?」


「無人地帯の西にあるテン村だなぁ。繁殖地を潰す為に、付近の村が独自に戦士を集めているはずだ。

 予定では、明日の新月目処で作戦を開始する。七村連合からも既に 3名派遣している」


「テン村からは、何か特別な貢物でも?」


「貢物かぁ……考えていなかったなぁ。戦闘を有利にする事しか考えていないから、戦鬼とか言われるんだなぁ。

 まあ、良いさw 大戦に大勝利出来れば、色々な可能性が広がるだろう。別に欲張らなくても構わないだろう」


「その点は、お爺様やブナカゼ様が手配しています。打撃部隊の皆様が納得の行く様に条件等の協議は進んでいます。

 後は、タツヤさんが山犬村に集結する時期を決めて頂ければ、作戦は開始できます」


 アマカゼだ。一瞬、え! と思ったが、そう言えば、『任せておけ』と言われた記憶が残っている。


「う〜ん。連戦している皆にも休息は要るからな。それに、一度シカ村に行って試したい事もある。10日後位かな。

 連合に戻って、状況を確認して、正式に決めよう」


「我々からも、義勇兵を募ろうと思う。帰る時に使者として同行させて貰っても良いか?」


「???テン村は、此処から何日もあるぞ? 戦士を出してくれるのなら非常に嬉しいが、可能なのか?」


「流石に今回の作戦のように大人数は期待しないで欲しいw だが、妖魔にひと泡吹かせ、村々に名を(とどろ)かせるチャンスだ。希望者は何人も出て、選抜が必要になるだろう。

 それに……東の無人地帯が怖い。いざという時に助力が得られるよう、出来るだけ多くの村と(よしみ)を結びたいという本音もある。


 そう。これは単なる空想だが、広い範囲の村々で協力し合える仕組みがあったらと考えてしまう。七村連合が打通作戦で経路の安全を確保した村は、既に26村か?これらの村が5名ずつ出すだけで100を超える数の戦士が集まる。

 協力し合える村が増えるのは、大きな意味があり、ついつい夢想してしまうんだ」


「確かにそうだなぁ。だが、七村だけでも内部調整は大変だし、更に多くの村が協力し合える体制は……今の所は夢物語だなぁ。第一、一同が集まって会議出来るような小屋もない。

 昔、クニという枠組みがあったそうだが、村々の不信を買って崩壊したそうだ。

 大きな協力体制を構築し維持するのは度し難い問題なんだよなぁ。

 そんな中、チャンスを作ってくれた七村の皆には、ワシは心の底から感謝している。ワシの心の中では、妖魔を倒す事と同様に七村の繁栄が重要なんだ」


 下手に色気を見せて、七村の不信を買ってはマズイが、連合を拡大させる機運は外側にもあるんだ。凄く勉強になる。



次は、飛行魔法に再チャレンジします。

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