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鉄の試作

 落ち着いた後の反省会でさんざん絞られた。

 飛行か落下制御か魔力操作か、兎に角何かレベルが上がるまでは、飛行は基本禁止になった。

 藁を詰め込んだ練習場所の上で、低空飛行の練習だけが許可された。


 3月10日には、南方作戦に向けて鷹村に集結の予定だ。それまでの数日は、カシイワ師匠と炉の実験をする予定だ。上手く、酸化鉄の還元に成功したら、七村連合内で密議を行う予定だ。


 先ずは、単純な塊鉄炉?と、火魔法兼用方式だ。ドラム缶半分ほどの窯の中に木炭と鉄鉱石を交互に層状に積み上げる。着火したら、フイゴを使って火力を強め、鉄鉱石を木炭で還元する。鉄の融点までは必要ないはずで、うまく行けば、海綿状の鉄の塊ができるはずじゃ。


 それから、熱いうちにハンマーで叩いて不純物を取り除くんじゃが……鉄のハンマーや金床がない。仕方ないので木で代用しよう。火バサミも無いから、石斧で代用しよう。

 やり直しを考慮して、耐火煉瓦や木炭は数回分集めて貰った。そう、鍛造の場合は、炉は使い捨てになってしまうはずじゃ。

 燃える事を考慮し、道具の予備を何個も用意して貰ったし、準備は大変だったろうな。


「いや。最高機密の新作焼き物というカモフラージュが使えたから、其れ程でもない。割り振って楽をさせて貰った」


 安心させようと言ってくれているけど、目にクマが出来ているよ。


 流石に、2人でフイゴを動かし続けるのはキツイ。炉を準備した所で口の固い者を三人程呼んだ。何時間か焼いて、真っ赤な塊を取り出して、大きな木槌で叩き始めた。


 火花が飛び散って熱い。というか、服が燃えかねん。


 結構柔らかいな。どんどん変形していく。う〜ん。本当に不純物が取れているんだろうか?


 しばらく、ひっくり返しながら叩いていると、黒く、丸く、平たい、何かが出来た(・・;)


 イカン! 成功なのか失敗なのか全く判らん。


 鑑定では、一応『鉄?』て見えるが……役に立たん。


「どうした。タツヤ。失敗か?」


「……ゴメンなさい。よくわからないの(T_T)

 色が変わったから、変化したのは確かだけど、鑑定しても成功なのか失敗なのか全くわからないの」


「そんなことかw 硬さや脆さを調べれば良いだけだろw タツヤは、まだまだ素人だなぁ」


 カシイワ師匠が色々な物を持ってきて調べ始めた。


「脆いのは多分、表面に何か張り付いているためだな。硬い石では傷つくから、噂に聞く『鉄』に比べれば柔らかいんだろうな。

 次は、もっと徹底的に叩いてみよう。出来た物は、下敷きにでも使うか、木を敷くよりは有利だろう」


 それから、アマカゼとのデートの1日を除いて、カシイワ師匠と試行錯誤して過ごした。


 なお、鉄造りのクエストは完了し、報酬は持久力強化と手刀だった。手刀は、かなりの魔力を消費しながら、手の周り5cm程度の位置に切断用の力場を作る魔術だ。何の役に立つの? と、一瞬戸惑ったが、金属加工用だと気付いて微妙な気分になった。


 そして、新たなクエストは、妖魔王殺害だった。



    ◇ 



 3月9日の昼、熊村の外れに集まって密議が開かれた。参加は、前回と同じ9人だ。ただ、会議をしている事自体は秘密ではない。『最高幹部会議?』名称は曖昧だがそんな感じだ。口の固い戦士長が二人、小屋の出口で控えている。


「まだまだ目標には程遠いが、鉄だ。順番に見てくれ」


 切断して金属光沢が見えるようにした破片を参加者に回覧した。


「ワシは、研究を深めこれを大量生産出来るようにしたい。その相談に集まって貰った」


 ?!?!


「一体何の話だ? 去年より食糧事情は良いから、娘を売り飛ばそうとする奴はいないぞ? まさか⁉︎ 奴隷狩り! タツヤが?」


 ヤクモさんだ。何故この人は女性を物扱いしたがるかなぁ?


「話を聞いて欲しい。鉄を買いたい訳じゃない。作りたいんだ。鉄を作れという神託を受けたんだ。

 そして、試してみたら、見せた通り一定の成果が出た。だから、皆に説明しに来たんだ」


 ワシの発言にブナカゼさんが補足した。


「先に、私から皆に黙っていた事を謝罪させてくれ。

 誠に申し訳ない。

 実は、何ヶ月か前から、タツヤから相談を受けていた案件だ。『ムササビ村を手に入れて、七村連合の鉄造りの基地にしたい』と


 タツヤから相談を受けて……最初は半信半疑だった。落胆するのが数人で済むならばと、黙っていた。

 しかし、試作品を見ると……真面目な話に見える。


 タツヤによると、まだまだらしいが、原料がムササビ村にある事は確定だ。

 そこで、移民を多数募って送り込み、ムササビ村を実質的に乗っ取りたい。その為の協力をお願いしたい」


「ムササビ村の従属には、後ろ向きと報告を聞いていたんだが、違ったのかい?」


 キバヤリさんだ。


「生活が成り立たない可能性があったからね。でも、鉄を造るために行くなら別だろ? 鉄造りの対価として、食糧などを連合から運び込む事も、納得のいく話だろ。

 条件が成立するか曖昧な時は、発言を慎重にするさ」


「確か従属の最低限の条件は、村の名を変えない事と、酷い扱いをしない事だったな。移民の数は、多ければ多いほど歓迎か……

 皆、先ずは詳しい話を聞こう。『カヤの外だった』と思う部分はあるが、連合としては何も決めていない。

 今から、十分意見を言える」


 キバヤリさんは、本当に協力的だ。物凄く助かるな。


次も少し鉄の話を進めます。

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