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連合への帰還

 1月31日の夕方、ワシらは狼村に到着した。


 強行軍の予定だったが、大規模な襲撃に合い帰路も繁殖地を一つ始末せざる得なくなった。


 大規模な戦力移動は、本当に危険だな。難色を示す村があるのは当然か……ただ、ヒノカワ様が、『巨大な魔力を持つ僕や君は特に刺激し易いんだよw 』と仰っていたから普通はもう少しマシなのかな?


 呪術士のカスミユリさんの出迎えを受けた。そこで、ヤクモ村長は既に熊村に向かったのを知った。熊村では、ワシの帰還に合わせ会議が予定されている。レベル2に上がった言霊で、早めに連絡してあるから、明日には代表が集まっている筈だ。


 ワシからいち早く報告を聞くより、根回しを優先か…コッチでも何か動きがあったのかな?


「小鳥とスナコか、懐かし名前を聞くね。立派にお役目を果たしているのね。イモハミ婆さんに話してあげると喜ぶだろうね」


 カスミユリさんに、夕食を誘われて旅の話をしている。


「スナコさんは、テンヤさんと凄く仲良さそうでした。幸せに暮らしていると思います」


「そうかいw あの子は、信じられない位に一途だったね。まだ、10歳なのに、『必ず修行を成功させて、テンヤ様に振り向いて貰うの! 私のような普通の村娘が、次期村長の正妻になるには、それしかない!』と息巻いていたのが懐かしい。

 2歳も歳下の子の何処が良いの? と、思ったけど、本当に相当光っていたんだろうねw」


「そうそう、テンヤ村長は防具を真剣に研究していましたね。機能的な格好良さが重要だと。カッコイイがスローガンのヤクモ村長と気が合うかも知れません」


「あはは〜。あの子は、女に威張ってチヤホヤされたいだけよ。センスは余り無いわw まあ、他に居るから良いけど。防具を作らせる時は声掛けてね。センスがある男を送るから。

 そうそう、あの子が先に行った事情を説明して無かったわね。南側の村がまとまって援軍派遣を申し出たのよ。見返り無しでね。でも、裏の目的は明らかでしょ。

『手柄を上げるのが明らかなタツヤ君は後回しで良い』なんて、失礼しちゃうわよね」


 有難い。1日考える時間があるだけでも助かる。勇者隊? 遠征組? 親衛隊はもう使っているか、うーむ? ピンと来るカッコイイ名称が必要だが、ワシもセンスが無い方だからな……


 翌日の熊村での会議、ワシの報告後、どの作戦を優先すべきか議論が始まった。ワシとしては、山猫村作戦後は、各村から3名ずつだして、打撃部隊を編成したい。

 十分な練度があれば、その程度の数で撃破出来ることが判っている。

 議論は、やはり南側の村の扱いで行き詰まった。

 援軍を受ければ、七村連合から見て南東側の無人地帯で大戦が起きた場合に援軍を出す義理が出来る。


「タツヤは、南東で大戦になったら、どうするつもりだ?」


 ブナカゼさんが、タイミングを見計らって声を掛けてきた。


「ワシ個人としては、選択肢は無い。今回の大戦で妖魔王を殺り切る事が前提だが、今後は全ての大戦に参加する。

 ヒノカワ様が、黙って背負って来てくれた責務を引き継がねばならぬ」


 うん? 今の今まで気付いてなかった者が複数いるぞ!


「援軍を出す出さないの議論は、目と鼻の先で苦闘するタツヤを見捨てるか見捨てないかという議論だな。

 全く馬鹿げている。私らは、そんなに卑怯でも懦弱でも無い。とは言え、今回みたいに全戦士を繰り出すのは負担が大きすぎるのは事実だ。

 さて、どうすべきか……」


「今考える必要は無いと思う。厳しい戦いを経れば、男は一皮剥ける。ワシらも、この大戦に勝利して、一層強くなるだろう。

 目と鼻の先の大戦なら、勇んで志願する勇者が、輩出するようになるだろう。割り当てを何人にするか? なんて、今考えるのは馬鹿らしい。

 今は、目の前の大戦を少しでも有利にする事だけを考えよう」


「それは……まあそうか。よく考えたら、大戦は全ての村が連合する慣わし。戦士を送れるなら送るのが、慣わし上当然か。何人送るかは、其々の村の事情によるとしか言えない。

 南側の村に聞かれたらそう応えよう」


「それなら、作戦の優先順位は、

 山猫村安全圏作戦

 ツバメ村打通作戦

 南方打通作戦

 他の援軍見込み村への打通作戦

 西方大遠征

 で良いな。

 しかし、今年も戦続きで負担が大きいな」


 山猫村のネコヅメ村長だ。まとまってホッとしているのが見て取れる。


「ひとつ提案なのだが、各村から選りすぐった先鋭部隊を編成しないか? 山猫村の作戦後は、他村との共同作戦だ。人数が必要な部分は、他村に負担して貰っても良いと思う。

 ワシらは、妖魔の群れの撃破だけ考える事にして人数を減らしたい」


「カッコイイ部分だけ掻っさらうだと! 他村がそんな事許す訳が……許さざるを得ないのか」


 ワシの提案に、ヤクモ村長が自己解決をしてしまった。


「そう出来ればいいな。さっき打撃部隊とか、勇者隊とか言っていたアイデアだな。異議など出る訳は無いな。

 なら、各村ベテラン2名、有望な若手1名位出してくれ。ただし、防具を忌避しない者に限る。

 見掛けなど気にせず一匹でも多く狩ることのみ考える打撃部隊を作ろう。

 無論、志願者のみだ。村に志願者が居なければ出さなくて良い。

 こんな感じでどうかな?」


 読心術でもあるの? ブナカゼさんが、ワシの考えていた事をさっさとまとめてしまった。


 何時も感じるのだが、この世界の会議は、簡単すぎる。文明が進む前で、純朴で率直って事かな……


 帰ったと思ったら、また旅に出ます。次は、南方です。



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