ヒヨドリからキジ村
フクロウ村長は、必ず援軍を出すと強調した。だけどなぁ〜、脅したみたいでモヤモヤするなぁ。
次の1月20日に、ヒヨドリ村に到着した。この村でも、同じ話をするだけだ。フクロウ村が、独自に先触れを出した事もあり、話は更に簡単だった。
どちらかと言うと、呪術士の小鳥さんの話が長かった。小鳥さんは、24年前の10歳の頃に熊村で修行したそうだ。イモハミ婆さんや、歳の近かったカニハミさんの近状をしきりに気にしていた。
小鳥さんにとって大事な青春の思い出なんだよなぁ。
さてと、魔術士が居るなら重要な話もある。
スナメリやフクロウ村にも、イモハミ婆さんの弟子はいるが、開眼前だったから話せなかった事だ。秘儀の話があると小鳥さんと二人だけで話す機会を持った。
「秘儀の話。見習い時代にこの台詞を聞いた時はドキドキしたわ。初期教育の時に単なる密談の誘いだと知って、少しがっかりした。
どんな話なのかな? タツヤちゃん(^_-) 」
なんか軽い人だな。それとも、イモハミ婆さんと同じで緊張しているのかな?
「一つは、小鳥さん用の言霊の巣作りです。これは、小鳥さんが了解して貰えれば直ぐに済みます」
「ああ、ヒノカワ様が使うと噂のやつね。タツヤちゃんも使えるんだ。良いわよ。違和感が起きるんだよね」
「では、失礼します」
言霊の魔術は、術者と伝言相手双方に、『言霊の巣』を作る必要がある。それを基点に、言霊が行き来する。
『言霊の巣』自体は、魔力を消費しないが、魔力的構造体なので、破壊する事は出来る。作る時に、結構な違和感があるので、了解を得ずに作ると直ちに破壊される。実は、了解を得ていても、驚きの余り破壊され、作り直ししているのを見た事がある。
まあ、負担が大きく頻繁に使うような魔術でないが、緊急連絡用として準備した方が良い。
そう、言霊に必要な魔力は巨大だ。イモハミ婆さんが取得して、遠距離通話にワクワクしていたが……単独だとカニハミさんですらタコ村から熊村へ魔力不足で返信出来ない。イモハミ婆さんが嘆いていた。
「もう一つは、魔術について判った事の情報共有です。此方は、開眼済みの者限定の情報です。取り扱い注意願います」
「ふふふ、本当の秘儀に属する話があったのねw 楽しみだわ」
ワシは、魔術士の間でも極秘とした部分を除いて、イモハミ婆さんらと整理し合った情報を伝えた。
「そういう訳で、可能ならヒヨドリ村でも、小さい子に対する呼吸方の訓練を試して下さい。
イモハミ婆さんが長年続けてきた努力の成果を少しでも拡げる為には、才能ある人材の探求が重要です」
「魔力の才能は、偶然であり、遺伝しない。しかも、私らが開眼まで20年位掛かるのは、才能が『並』だから……
娘には聞かせたく無いね。でも、いるかどうか判らない才能保持者に頼る訳にはいかない。だから、娘に修行を続けさせる必要がある。
辛い話なので、採用するかは、考えさせてくれるかい」
「はい。もちろんです。
七村連合でもあくまで『埋もれているかも知れない、才能の探求』を強調します。背景の知識は、魔術士限定です。失礼ですが、娘さんにも秘密でお願いします」
才能の探求か……鑑定のレベルを上げていけば、若しかしたらと思っている。でも、今は大戦に勝利する事が優先だ。
魔力の増強、飛行の魔術、発火に消火、土壁、言霊のレベル上げ、思い付くだけで、色々ある。可能性の問題は、後回し。
翌日、ヒヨドリ村から西北西約10kmのキジ村に向かったが、また繁殖地単位の襲撃を受けてしまった。一度経験すれば、色々改善点は見つかるw 近かった事もあり、殲滅後そのままキジ村に向かった。
笑顔で門から入ったら、歓迎の為に待機していた娘さんが、悲鳴を上げて逃げて行った。……そっか、血塗れで笑顔は、殺人鬼にしか見えんな。時と場合を良く考えねばならぬ。
着替えてから、出来るだけ愛想良く接するように気をつけた。オオカゼさんも交えた話し合いで、明日一緒に残敵掃討する事にし、その日は軽い挨拶のみとした。
翌日の残敵掃討は、ワシの遠距離攻撃の紹介を兼ねてさっさと終わらせた。出来るだけ和かに、味方なら頼もしいと、意識して貰う事に気を使った。
ふと、魔力が増えている事に気付いた。魔力強化のレベルが上がったようだ。後で、全力の魔力弾を二発撃てるようになったか確認しよう。二の矢も持たず強敵に向かうのは馬鹿のする事だ。
掃討から戻ってから各村でしてきた説明をし、その晩は、戦勝祝いの宴だ。簡単な踊りがあったのでワシも参加した。男女が次々相手を替えながら踊る形式だ。案外楽しい。悲鳴を上げて逃げてった娘さんも、踊った時にくすっと笑ってくれた。
そうそう、この村にもアオハナさんという、成り立ての魔術士がいたので、秘儀に属する話もしておいた。
次は、ここから北西約12kmのテン村だ。シカ村からは西南西約29kmで、この辺りでは有力な村だ。頑張ろう。
次は、テン村のテンヤ村長の話です。




