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笑顔重要

「タツヤさん、別にフクロウ村を恐怖のどん底に叩き落したい訳じゃ無いですよね。だったら、今帰るのは不味い」


 恐怖のどん底???ワシと何の関係があるの?


「やっぱり、解っていなかった。タツヤさん、若過ぎるんだよなぁ。

 フクロウ村の戦士達は、タツヤさんらの戦闘跡を確認しました。そして、思った筈です。もし、タツヤさんらが敵になったらと。

 ついでに、タツヤさんが難しい顔をするのは、ごく普通……というか、『考え事していて気が回ってないだけ』って事を知りません。

 今日、フクロウ村が慌てて残敵掃討したのは、タツヤさんの不機嫌な顔が怖くて、少しでも機嫌を直して欲しかったからです。

 今日、フクロウ村の人は、熊と同居している気分だった筈です。

 宴会しても、機嫌が直らないなら……次は村長の娘辺りを差し出しかねません」


 確かに‼︎ ヒノカワ様みたいに天災扱いされても不思議じゃ無い。


「オオカゼさんは、何か目論見があるんでしょうが…私は、フクロウ村の人が可哀想です。戻って下さい。そして、楽しそうにして下さい」


「でも、ここで戻ってもバレバレなんじゃ…」


「『珍しい踊りの準備があるようだ』と私から聞いた事にすれば良いでしょう。実際、裏で準備しているし。

 タツヤさんが、スケベ顔で要求すれば、フクロウ村人は、逆に安心しますよ」


 慌てて戻って、村長に話掛けた。


「疲れていて失礼しました。僕の大好きな踊りを準備しているんですって? 段取りを乱してすいませんが、早く観たいな。僕、早く寝なきゃいけない子供なので、お願いします」


 周りで、ワシの護衛達が笑いを堪えている。演技って難しい(^^;;


「おお、そうですな。今日は大変お疲れのご様子。タツヤ様は、どんな踊りが良いですか」


「手拍子とか掛け声で参加した気分になれる踊りが良いな」


 騒がしい方が演技にボロが出にくいだろう。


「それなら、フクロウ狩りの舞ですな。凄く盛り上がりますよ」


 何人もの男女が出てきて、ゲラゲラ笑いたくなるような可笑しな踊りを始めた。笑いながら、気配を探ってみると……確かに、さっきに比べると空気が軽い。ワシの顔色で結構な影響があったんだな。


「そういえば、タツヤさん。フクロウ村に帰って来てから何を悩んでいるんです? 眉間に皺が出て、怖い顔でしたよ」


 タビスケさんが、声を掛けて来た。誤解を解く機会を作ってくれているんだな。


「ワシの矢は、体格に合わせてカシイワ師匠が作ってくれている特別製なんだ。今日の調子で消耗すると、途中で無くなるかも知れない。

 どうやって節約するか、どう効率的に闘うか……良いアイデアが無くて困っているんだよ」


「……はぁ。言って下されば、悩む必要なかったのに。

 些事だと思って報告しなかった私も悪いんですが、途中で補給出来るよう、注文してあります。

 ついでに言うと、無くなったら二三日滞在して作って貰えば済みます。その為に貝貨は余分に持って来ています」


「……ワシ、バカみたい……イヤイヤ、正直になろう。(まさ)(ただ)しくバカだ」


 周りでフクロウ村の者も笑っている。良かった。上手く演じれたようだ。本当は、タビスケさんキチンと報告しているんだ。


「幾ら効率の戦鬼とはいえ、そんな些事まで効率を求め無くて良い。機嫌の悪い顔をしていると、戦士が集めにくくなって、タツヤが一番重視する効率に反する事になる」


 横からオオカゼさんの注意が入った。全くだ。ワシはすでに連合のナンバー2、指導者の一員だ。笑顔重要だな。


 そんな話をしていると、村長が勇気を振り絞って話し掛けてきた。


「差し支えなければ、タツヤ様が一番重視している事を教えて貰えないでしょうか?」


 はて? 一番と言われると……躊躇しているとオオカゼさんが説明し始めた。


「戦死者数を減らす事だ。戦死者が出る度に、全く落ち度が無くてもクヨクヨしている。また、戦闘を有利にする為、何時も難しい顔で考え事している。

 戦死者を減らす為には、どんな悪評も気にしない。本当に『引くほど効率重視』だ。戦鬼と呼ばれるのは、まだ未成年の若い娘を死屍累々の戦場に突入させたからだ。慶賀に来た使者の方は知っておられるだろう。スミレ坂殿だ。

 確かに……戦死者は激減したが、あんな美少女になんて事をと皆が感じた。

 戦死者を減らす為には鬼になる。だから、戦鬼だ」


 ちょっと! フクロウ村人が怖がるよ‼︎


「そ、それは、何というか大変な……」


「この子は、怖い顔している戦鬼だが、根っこは優しいんだよ。人が死ぬのが嫌、疲弊するのも嫌。だから、妖魔を狩る。これまでに、繁殖地を41殲滅した。その間の戦死者は4人だ。信じ難い高成績だ。

 それでもタツヤが求める『効率』には、まだ程遠いんだろう。皆さんも、私らが奇妙な格好で来たのを見たでしょう。自分で言うのも何だか、滅茶苦茶恥ずかしい。

 だけど、戦闘跡を調べた人には判るように、闘いにおいては有利だ。これもタツヤの発案だ。奇想天外を地で行っている。


 つまりだ。タツヤは、次の大戦で戦死者を0にする事を本気で目指している。その為に、『500とは大ボラ吹くものだ』と疑ったりせず、一人でも多くの戦士を派遣して欲しい」


 オオカゼさんの目論見は、恐怖のどん底に突き落としてでも、援軍を確実にする事だったのか……ワシの人の悪さが移ってないか?


旅は、まだ続きます。

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