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山犬村の従属の儀

 1月15日の昼過ぎ、ワシは山犬村に着いた。


 山犬村の従属の儀式は、七村連合の代表3人(ワシ、ブナカゼ村長、ヤクモ村長)が、村人と他村からの見届け人に語りかける形で進んだ。最初は、ブナカゼさんだ。


「我々は、山犬村の願いにより、疲弊した山犬村を立て直す事に決めた。その為に、貴重な人材を村長として派遣する。

 皆々は、新しい村長と一致団結して、山犬村を発展させて欲しい。そして、何れの日か、侮られぬ一人前の村として、我々七村の兄弟の輪に加わって欲しい。

 それまでの間、我々に従属する事に異議のある者は、この場で名乗り出よ。


 居ないようだな。これで約定は成立した。皆々の一致団結した努力を期待する。私からは以上だ」


 その後、ヤクモさんから、従属についての諸条件と新しい村長の紹介があった。新村長に従い、狼村から3家族移住するそうだ。


 従属の貢物は、名目上は無い。新村長と移住する三家族の生活を整えるだけで、結構な負担になる為だ。山犬村に作らせる予定の各種素材も対価は支払われる。儲けは、最後加工を行う狼村の物だが。


 そんな条件だが、特に不満の色が見えない。寧ろ、防衛戦力が大幅に増える事を喜んでいる。後で聞いた所、村長の座を奪われた事すら、『狼村からの救援部隊派遣が確実になる』と好意的だ。


 お人好しなのか、そこまで深刻だったのか……


 従属解消の条件は二種類ある。


 一つ目は、他村の危機に戦士15名以上と治癒術士を派遣出来る事。この場合は、一人前の村として連合の正規メンバーに昇格する。

 二つ目は、貝貨100枚に相当する貢物を100納める事。この場合は、独立した村として、従属状態から解放される。


 扱った事がない者にはピンとこないだろう。貝貨1枚は、旅人5人の1泊分の費用に相当する。翌日の弁当や消耗品込みだ。


 クニが滅びた後で、貝貨を発行する9村で協定したとマコさんの話にあった。もちろん、多少の変動はある。例えば、七村連合の周りでは、今正に価値が高くなっている。貝貨で支払うなら、多少オマケしてくれるそうだ。


 そう、二つ目の条件の貝貨一万枚は、大きめの村を一年養えるだけの大金だ。山犬村の誰も本気にしていないだろう。そして、一つ目の条件を満たす為には、村長夫人である呪術士見習いの成長がカギとなる。


 ヤクモさんは、新村長の地位を確実にしたいんだよなぁ。案外、情の厚い良い人なのかな?


 恒例の宴会で親睦を深め、翌朝スナメリ村に出発した。大戦での協調を呼び掛ける長い旅の始まりだ。予定では、山犬村を出てから、スナメリ村、フクロウ村、ヒヨドリ村、キジ村、テン村、大イカ村と廻る旅程だ。最後の大イカ村は、海沿いの村でシカ村から西南西に28km位の位置にある。


 順調なら一月掛からない筈だが……まあ、三月に入るまでに帰って、山猫村の安全圏作戦を開始したい。

 旅の同行者も多い。道案内のタビスケさん一行に、シカ村の決断を説明するためアカツノさん一行も同行する。全員で12名だ。


 この人数だと、繁殖地を刺激して大規模な襲撃を誘発する可能性がある。それに対する方針は、迎撃だ。だから、護衛は、全てベテランを揃えている。


 12名と大人数での移動を危険視する意見は結構あった。それをワシが迎撃出来ると押し切った。クジラ村作戦で直感という魔術を身に付けた事も理由の一つだ。

 この魔術は、常時魔力を消費するが、限界を超えて警戒能力を高める効果がある。ヒノカワ様によると、妖魔の群れなら、千歩も先に気づくそうだ。


 早く気付けばワシの遠距離攻撃で数を減らせる。


 そして、木で作った簡単な兜、籠手、胸甲も全員が装備している。毛皮を貼り付けてクッション性能も高めた。何より、敵の武器は棍棒が普通だ、木でも意味がある。


 う〜ん、何故今まで防具無しで闘っていたのか謎だ。『臆病に見えて男として恥だ』とか言われたが、生還率を高める事とは比較にならんだろ?


 革鎧には、『カッコイイ性能』も必要だと、ヤクモさんが強調していたが……真面目な話なのか?


 スナメリ村は、山犬村から南西に約12km、見届け人として来ていた男性と一緒に進んだ。途中で隠居した前山犬村長の話題が出た。


「親子とも決断力が低くて下手を打ったからな、引退出来て案外ホットしているかもしれない。」


 何でも、数年前に近過ぎる繁殖地を排除しようとして失敗したらしい。損害に怯えて途中で断念した。そんなことすれば……妖魔は直ぐに数を回復するから、殺りきらねばならぬのに……


「援軍を出したこっちもいい迷惑だよ。フクロウ村と共にワシらスナメリ村も縁を切った。父や夫の犠牲が無駄になったと何人もの若く綺麗な女が逃げ出した。

 少なくとも二人は、ヤクモ村長の女になった筈だよ」


 何でこんな重要な事を教えてくれないの? と、思ったら。そういう事か……ワシが潔癖症に見えて話辛かったんだなぁ。


「ヤクモの親爺さんは、女に威張るのが好きだからね。でも、あの人の『男はカッコウ良く、手柄を挙げるのが一番だ‼︎』って方針で、狼村は力を延ばしているんだよな」


 狼村からの護衛の戦士が、ヤクモさんを評した。


 よく分かった。革鎧の『カッコイイ性能』はヤクモさんにとって真面目な話なんだ。

次は遭遇殲滅戦、戦闘シーンがあります。


H29.8.1 シカ村から大イカ村の方位を修正

修正前:東

修正後:西南西



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