表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/89

トンビ村での休暇

 話が一段落して、皆少し考えをまとめている時に、不意にイモハミ婆さんが発言した。


「トリハミが少し気になる。タツヤ、何か判り易い魔術を使ってくれないか? 火炎にありえない動きをさせるとか」


「……ああ! そうだね。火炎よ渦を巻いて炎の蛇を顕せ。

 どう? トリハミさん、何か見えない? よく注意してみて」


「え? え? 何? えええ‼︎ 若しかしたら此れが魔力なの⁉︎」


「トリハミおめでとう。開眼したようだね。クサハミも良く覚えておくんだよ。開眼に近くなると無意識のうちに目で魔力を追う事があるからね。そうなったら、色々試して開眼を促す必要があるんだよ。

 さてと、予定を変える事になるが、2、3日スミレ坂とトンビ村に滞在して、魔術士の初期教育をするよ」


 目出度い事を祝いあって、その日は散会した。


 1月15日が山犬村の従属の儀なので、数日はトンビ村でゆっくりした休暇が取れる。時間があればやりたい事は沢山ある。一つ一つ片付けていこう。


 と、思っておったが、翌日はトリハミさんへの講師を命じられた。ワシの場合、初期教育を見る機会が少ないのだから、貴重なチャンスは活かさねばならんそうだ。

 完全記憶があるから楽勝と思っていたら、後ろから応用問題を次々と指摘されて酷く困ってしまった。

 しかも、聞いているトリハミさんの方が明らかに詳しい!


 まあ、当たり前か……講義を受けた回数が違い過ぎる。


 カシイワ師匠に頼まれた長石粉作成に付き合って貰う事で、トリハミさんに魔力切れを体験して貰った。若い者に道具を試作させているが、長石粉の需要を満たすには程遠いそうだ。

 やってみてわかったが、魔力切れを体験させるには、かなりの魔力差が必要だ。そうでないと、教師の方が先に魔力切れを起こす。


 ふう〜、何とか其れ程重くない症状で魔力切れを経験させる事が出来た。結構、気を使うんだな。


 その後は、スミレ坂に引き継いで、ワシはハテソラ師匠やアマカゼと、フブキ様の残した木簡に取り組む事にした。

 ワシが判る箇所を読む。

 アマカゼは、文字の開発作業と兼ねて、金石文字と此方の言葉の対応の作成を進める。ハテソラ師匠は自ら読み下す為の研究をする。


 ハテソラ師匠の担当は、あり得ない難易度の作業だ。他の言語で作られた文書を、僅な手掛かりだけで解読していく。江戸時代の『解体新書』並だな〜。しかも、使える道具が圧倒的に足りない。


 ワシが居ないと取っ掛かりすら得られないので、ハテソラ師匠は鬼のような形相で取り組んでいる。


 実は、考古学者の魂が、ハテソラ師匠を妬ましく感じているが……今のワシが力を入れる仕事じゃない。前世は前世と断ち切るべきだ……ろ?


 何時間も探索した結果、今のワシが力を入れるべき文書を発見した。呪文書だ。


 ここの魔術と言葉の関係は比較的薄い。呪文など適当だし、省略する事も簡単だ。しかし、逆に新しい魔術を習得する事は難しい。SPというものが関係するが、新しい魔術は突然に発現する。


 イモハミ婆さんの経験でも裏付けが取れたが、どんな練習方法も習得を早める効果はない。魔術の実施に付き合わさせたり、呪文を暗唱させたりしても……次に発現する魔術をコントロールする効果があるだけだ。

 中つ国の歴史を得た席で判明し、魔術士の間でも極秘とする事とした。


『ただな、本当に呪文の暗唱だけで、取得出来るかは疑問だな。再生のように別の条件がある魔術の例もある』その時のイモハミ婆さんの所感だ。


 とはいえ、使える魔術の種類を増やすのに呪文書は重要だ。此れの解読を最優先すべきだ。まあ、ワシの場合、写像記憶してゆっくり解読すれば良い。実物の方は、ハテソラ師匠に預けよう。


「ハテソラ師匠。熱中しているところ悪いが、呪文書が見付かった。後で、イモハミ婆さんにも相談するが、此れが最優先なのは揺るがないだろう」


 その晩、トリハミさんの開眼を祝う宴の席で、呪文書の事も紹介し、座は大いに盛り上がった。



    ◇ 



 熊村の衆も去り、有意義な時間を過ごしていたが、1月11日に、巡邏に出ていたハテソラ師匠が凶報を携えて飛び込んで来た。


「タツヤ! 戦闘準備して。小鬼が17匹と大鬼が1匹で、新しい繁殖地を作ろうとしている。村長には伝えたから、直ぐに広場に集まって」


 奴らは、蜜蜂みたいに巣分けとかするのか!兎に角、急ごう。幸運な事に魔力は満タンに近い。


 広場に集まって、簡単に作戦会議をして殲滅に向かった。



 幸いな事にあっさり殲滅出来たが……安全圏の維持に課題が追加された事になる。各村の村長・戦士長と相談が必要だな。


 その課題に頭を悩ませている時、カシイワ師匠が声を掛けて来た。


「タツヤ。前に、欲しいと言っていた大きな小屋じゃが、クジラ村に造る事になった。まずは、村々から人を集めて検討会をする事になった」


 えーと、具体的な建築技法は流石に良いアイデアがないや。


「あ、タツヤ誤解するな。アイデアが欲しい訳じゃない。タツヤの手の及ばん所は、誰かしら対応するので、気にしなくて良い。

 そう言いたかっただけだ。妖魔の巣分けへの対応など、戦士長が考える事だし、実際何人も使って対策を練っている。

 それより、此れから長旅だろ? 準備は出来ているのか?」


 無論、出来ているが、そういう話じゃないな。考え過ぎって事だよなぁ。頭を冷やして、より優先度が高い事に集中しよう。


「カシイワ師匠、ありがとう。視野が狭くなっていた。冷静になる為に今日は早めに寝る事にするよ。

 は〜、そういう場合、中途半端な歳なんだよなぁ。身体に悪くて酔って寝る訳にいかないし。赤ちゃんみたいに、オッパイ飲んでネンネする訳にもいかないしねw」


「……タツヤ、冗談のセンスを磨いた方が良い。それでは、ウオサシと同類項だ」


 _| ̄|○


次から、タツヤは西方への長い旅に出ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ