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布作り道具作り

 冬の間の布作りは、才能があると見られたのか、後半になると機織小屋のリーダーでもあるソメアサ叔母さんに、色々な技法を教えられた。

 軽い作業中でも呼吸法を維持出来るようになったので魔力操作の修行時間は何とか確保出来ている。


 ある日アカユリ姉が、膨れっ面で話しかけてきた。


「マルは、女に産まれれば良かったんだよ。そうすれば、名前をゆずってあげれた。

 布の名人の名を継いだのに、弟に抜かれるなんて、私の立場はどうなるの‼︎」


「僕は小さいから、皆んな可愛がってくれるだけだよ。アカユリ姉は、きちんと機織り組見習いとして、機織り小屋に通っているじゃないか」


「そういうことじゃない!マルは全然理解してない‼︎」


 叫びながら、アカユリ姉が平手打ちをした。どう対応した方が良いのか、暫くオロオロしていると、さらにアカユリ姉が


「その余裕な態度に何時も腹が立つの‼︎」今度は、グーで殴り掛かってきた。

 流石に避けたが、反撃する訳にいかず、数歩後退(あとずさ)っているうちにアカユリ姉は更にヒートアップし、腕を振り回し始めた。


 結局、近くにいたサトニナ兄他の年長の子に取り押えられるまでアカユリ姉は暴れ続けた。


「マルなんか弟でもなんでもない」


 アカユリ姉の狂乱が酷く、マズイと感じたワシは泣いて誤魔化すことにした。


「うえええええん。僕お父さんお母さんのお手伝いしたかったの(T ^ T)だから、頑張って、褒められたから一緒懸命したのに、酷い。僕頑張ったのに、うえええん」


 アカユリ姉とワシは引き離され、その日ワシは機織りをしながら傷ついたフリを続けた。父母に色々聞かれたあと、アカユリ姉と仲直りさせられて、その日は終った。

 翌朝、父はワシにおもむろに、言った。


「マルは男なのだから、男の仕事も覚えなさい。でも、まだ力が足りないから、やれる事を探す必要がある。父さんが、石器作りのカシイワさんに頼んでおいたから、今日から行っておいで」


「布作りと採取は、もうしなくて良いの?」


「そうじゃない。採取は、男も女も出来なきゃいけないから、一通り出来るまでは続けるんだよ。布作りは、編みと織りの両方のやり方を覚えたんだから、母さんが忙しい時には手伝いなさい。

 でも、それだけじゃ男として一人前にはなれない。

 とはいえ、いきなり一人前の男の闘いや狩り、農作業を試そうとしても身体が小さ過ぎて無理だ。だから、身体の大きさより器用さが重要な仕事から始めるんだよ」


 どうやら更に忙しくなるみたいだ……絶対子供の扱いじゃないよね。


 カシイワさんのところには、年長の男の子が何人かいた。一言で石器作りと言っても色々な工程があり、皆やっている事はばらばらだ。

 ワシを一瞥してカシイワさんが話始めた。


「話は聞いている。確かに来年命名の儀と言われても違和感はないか。あいつが言った半分でも器用さがあれば、教え込めるかも知れんな」


 実は、カシイワさんとソメアサ叔母さんは夫婦で、二人で村の物作りを主導している。


「一度、素材集めから一通り見せてやろう。岩場に行くから付いて来なさい」


 一方的に話が進み内心驚いていたが、昨日の今日だ、子供っぽく振舞わなければならない。


「岩場は始めてなの、何か危ないものとかないの?」


「足場が悪いが、それほど危険な動物はいない。寧ろ途中の森の方が危険だ。まあ、人数があれば大丈夫だろう」


 カシイワさんは、そう言いながら、身体が大きい2人に声を掛けてさっさと出発の準備を済ませた。


 村から30分ほど速足で北に進んで岩場に着いた。岩場は、かなりの急斜面で黒曜石がゴロゴロ転がっていた。


「マル、この石は強い力を与えると、綺麗に割れる。石器を作り易いので良く覚えておけ。

 あと、この岩場では自分の足下だけでなく上下にも気をつけろ。上の者が足を滑らせ落石が起きる事もあるし、逆に自分が作った落石に下の者が巻き込まれる事もある。

 4年前の事故で死者を出したヘビ村とは、先日ようやく謝罪の貢ぎ物を納めて和解したところだ」


「本当に不安定だよね。歩くコツとかあるの」


「おいおい覚える。それより、慣れるまでは歩く事だけに集中しろ」


 その日は、カシイワさんの作業を見て過ごした。

 その後、天気の良い日は採取、それ以外は道具作り、家では暗い中での布作りと全く休む間のない日々を過ごした。


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