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七村連合最高会議(前編)

 タコ村に着いた時は、結構な人が集まっており、寝床を確保するのも難しい状況だった。


 よく考えたら、こんな会議を開くノウハウが用意されている筈はない。何か考えなければならない。


 荷物持ちの者などは一度トンビ村に帰って貰う事になった。他は、兎に角屋根がある場所に潜り込めれば良しとしよう。作戦時の経験から、贅沢言わなければ何とかなる事は分かっているw


 ふと、周りを見ると、リュウエンさんが見覚えの無い人と一緒にいるのが見えた。良い機会だ、挨拶し、少し話をしよう。


「リュウエンさん。あけましておめでとうございます。お祝いに来てくれたんだね。ありがとう」


「やあ、タツヤか。あけましておめでとうございます。僕も君に会えて嬉しいよ。少し時間を貰って良いかな?

 ああ、此方はシカ村長の次男でアカツノさん。七村連合への慶賀の使者として来た。

 立ち話も、何だから宿に確保した船屋にでもどう」


「お邪魔させて貰うよ。オオカゼさんと……クマオリ村長が一緒でも良い?」


「もちろんさ。一緒に闘った仲じゃないかw」


 リュウエンさんは、クジラ村作戦時に火弾を取得した。シカ村の戦力を考えると、独自に繁殖地の殲滅を行える。次の大戦の対策を検討する為には、今後のシカ村の作戦について探る必要がある。

 噂話などしながら座を温め話題が火弾の使い勝手に移ったタイミングでアカツノさんが本題を切り出した。


「私達が、慶賀の使者として来たのは、シカ村の決断を説明し、理解と出来るだけの協力をお願いするためだ。

 最初にはっきり断言するが、シカ村に誘引して殲滅する方針は変わりない。新年の儀で村人に決断を説明した時には、感激(・・)の余り泣き崩れる者が多数おった。

 なぜ感激するか、背景となるシカ村の事情から説明しよう」


 説明によると、シカ村には過去の大戦で滅ぼされた村の生き残りが多数いる。彼らは、死ぬ迄に一矢報いる事を夢見て生きている。


 その為、新年にシカ村の決断を聴き、それが夢物語でないと判った瞬間に感激の余り泣き崩れた。

 そのシカ村の決断、それは大戦に勝利して、妖魔が一時的に不在となった土地に村を再建する事である。


 妖魔王が生まれると、周りの妖魔を吸引し妖魔の軍勢が出来る。仮に、その軍勢が短期間に殲滅されれば?吸引された妖魔の繁殖地は、ほぼ戦力無なので、脅威にならない。

 その状況を利用すれば、シカ村から離れた位置での何日も続く野営作戦が現実的になる。ボロでもなんでも、一つでも小屋が出来れば、どんどんと作業が楽になり、いずれ村と言える規模になる。


 そして、その新村の周りを人の領域に奪還する。


 話を聞いてワシも大人気なく胸が熱くなってしまった。


「直ぐ気付くと思うが、大戦での被害が少なければ少ないほど、この作戦は成功し易くなる。その為には、援軍と避難先に加え、勝利後の治癒術士の確保も重要だ。どうか、協力して欲しい。

 それと、少しでも有利にする為に、独自の掃討を進めるが、大戦の発生位置になりそうな場所は、あえて残すつもりだ。この方針についても理解して欲しい」


 クマオリ村長が、「連合の全ての方針は会議で決めるが、ワシ個人としては、覚悟の程を理解したつもりだ」と引き取って辞去した。




 さて、イモハミ婆さんの所に向かわねば。


 イモハミ婆さんの所に行くと、熊村長のブナカゼさんとタコ村長夫人のカニハミさんに加え、狼村長のヤクモさんも居た。


「クマオリ村長とタツヤか、丁度良い。同席してくれ。イモハミ婆さんが、ようやく連合会議議長を引き受けてくれた」


「おお。流石わ、イモハミ婆さんだ。重い役目を引き受けてくれたか。これで、会議の席次が確定したな」


「それでと、今度はタツヤに話がある。話辛い事かも知れんが、禁制に触れん範囲で話して欲しい」


 ブナカゼ村長とクマオリ村長の話から、突然ワシに話が振られた。


「何なの? ワシに答えられる事だといいな」


「タツヤは連合を拡大していく事を望んでいるのか? それとも、七村のままが良いのか? 仮に、神々が何か意思を明らかにしているなら、逆らう訳には行かんだろう?」


 え! そんな重要な事に意見言っても良いの⁉︎


「神々の真意は分からない。けど、ワシに託された神託の本質なら説明出来る。一言にまとめると『世界を救う』と何とも曖昧な神託だ。イモハミ婆さんは、ヒノカワの死後この島を守る者になる事と解したそうだ。

 しかし、ワシが得たイメージは少し違う。ヒノカワやワシのような、強力な魔術士が居なくても、大戦に完勝し続けられるような体制を構築するイメージだ。

 余りにも、巨大な壁でどうやれば良いのか……僕には皆目見当がつかない」


 ヤクモさん以外には、方策はあるけど、まだ話せないって事情が上手く伝わったようだ。


「ワシにとっては、最初に機会を与えてくれたこの七村が重要だ。だけど、神託の達成を考えると協力してくれる村が多い方が有利なのは否定出来ない事実だ」



次は後編です。

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