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日と月の巡り

 七村連合全体の新年の会議がタコ村で予定されている。根回しなどを考えるとそれ程余裕はない。明日には、荷物持ちを含めた大所帯でタコ村に向かう予定だ。


 ワシは、心の中で暖めていたもう一つの大計画を発動する為、ハテソラ師匠に向かいあった。朝の警報張りの際に少しだけ話したが、それで足りる訳はない。


「ハテソラ師匠、一生のお願いがあります。これを完遂出来そうな人は、ハテソラ師匠位しか思い浮かばない。難しいお願いですが、話だけでも聞いて貰えないでしょうか」


「若い男の『一生のお願い』が、本当に一度きりか甚だ疑問だが、話だけなら聞くさ。なんだい?」


「朝、少し話しましたが、暦作成の事業を引き受けて頂きたい」


「毎年恒例の新年宣言だろ? もう何年も前から、実質私の仕事になっているよ。今更、何を言っているんだい?」


 う〜ん、何処から説明すべきか(~_~;)


「一年は、月の12巡りと余りが10日から13日と教わりました。ただ、その年の余りが何日なのかは、新年に近くなるまで解らないとも教わりました。

 更には、村によって新年の日がずれる事があるのも知っています。

 だけど、村々の交流が深まると、それでは色々困る事が有ります。

 今日の時点で来年の新年の日までの日数を数えられ、その間のどの日であろうと、お互いに共通認識を持てるようにならないと、村と村の間で約束事をするのに不便が生じます」


「確かに、そうだが、一年の長さは100をかなり超える。普通の村人では数えられない。例え、100日が二つと63日とか、貝貨の要領を応用しても……どこかで数え間違える。実用性がないな」


「だけど、新月が二つと12日とかであれば、分かり易いでしょ」


「その場合、月の巡りの日数も一定していない事が問題だ…うん? まさか‼︎ それも、『正解に予測せよ』と言うつもりか⁉︎」


 流石は師匠、隣でクルクルパーのブロックサインで遊んでいるアマカゼやクサハミ婆さんと違って噛み合った話ができるや。


「はい。その通りです。一年と一月の長さを、変化を含め正解に特定する。それを元に、年の何番目の月の何日目かで、日付を特定する。そのやり方を村々で共通にする。

 それが、暦です。

 そんな物の開発を頼めそうなのは……周りを見れば判るようにハテソラ師匠しか居ない」


「ふう〜。分かった。引き受けよう。ただ、タツヤ、もう少し常識を勉強した方が良い。『一生のお願い』は、一生に一度の大切なお願いの意味だ。決して、一生掛かる難しいお願いの意ではない。

 どうせ、日と月だけでなく、星の巡りとか季節の移り変わりとか、怪異の予言とか要求は増えるんだろ?

 まあいい。タツヤの事だ何かアイデアはあるのだろ」


「12の月と半端な閏月で一年を表現する事を考えています。まず、新年から5日を閏月とし、6日目の月齢を基準に月の巡りを数える。月の長さは、直近の新月から新月の日数を使って補正する。月が12回巡ったら次の日からまた閏月に入ります。丁度、冬至の日を予測できる時期なので、正解に一年の長さを補正できる。仮に、冬至の判断に誤りがあった場合は、黙って新年側の閏月の日数を調整する。

 何年か、この方式で観測を続け、一年と一月の日数の変化の規則性を見つける。不規則だった場合は……その時考えましょう」


「その方式だと、月が始まる月齢が毎年変わる事になるな」


「月齢を重視する方式も候補になる。日と月の巡りがある程度正確に分かっていれば、村々での受け入れ易さを重視して、方式を選択できる。

 数字を自由自在に扱う算術も必要だけどね。

 一応、数字を記録する方式は、アマカゼと既に開発済みです。ハテソラ師匠なら、同時に算術も開発してくれますよね? 暦の計算には、必要だと…僕思うの…ビェーンごめんなさい。調子に乗り過ぎました。許して」


 ハテソラ師匠の難しい顔は本当に怖いよ。


「ああ、安心しろ。別に算術云々で怒った訳じゃない。確かに、数字を扱う技の高度化も必要だろう。

 難しい顔になったのは、余りに近すぎて日の出位置の区別がつかない場合や天気が悪い場合など天測側にも課題がある事に気付いただけだ。

 そういう、諸々を含め引き受けよう」


 その後、天測方式の改善について少しだけ話をし、家に戻った。


 無論、ゆっくり出来る訳はない。ソメアサ師匠とアマカゼの母上が監督に入った。衣装合わせに、所作の指導、挨拶の切り替えしの叩き込み。

 昼過ぎには、熊村のブナカゼ村長も到着し、村長ら少人数での下打ち合わせもあった。結構疲れて早目に寝た。


 お酒が飲めない歳で、本当に良かった。


 翌朝、揃ってタコ村に向かった。新年閏5日の会議は明後日だ。明日中に、根回しを進める必要がある。


次は、前後編で七村連合最高会議です。



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