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新年の夜空に潜む真実

 トンビ村に戻りほぼ一月ぶりに家族にあった。祝いの品の準備も完璧で、ほっと胸を撫で下ろした。


 今年最後の数日、ワシは新年の儀の準備のため、クサハミ婆さんにこき使われていた。無論、トリハミさんとハテソラ師匠も一緒だ。呪術士たる者、『儀式を正しく執り行なえる事は当たり前』、それは正論でありワシも真剣に学んでいる。

 まぁ、完全記憶がある分楽だけどねw


 そして、戦死したヤマソラを含む哀悼の辞のみワシが担当し、儀式を執り行った。その後は、宴会だ。アマカゼとの舞を披露したあとで、ワシは気付かれないように村隣の丘に移動した。


 今日は新月、此処からだと暗い星雲までよく見える。

 この時間、東の空に大マゼラン雲が、西の空ではアンドロメダ銀河が見える。天の川は、何時もと同じ高さで薄っすらと見えている。


 変なんだよ‼︎ 中途半端に似過ぎている‼︎


 星座と月の顔が違う事から此処が地球で無いのは直ぐに分かった。異世界と言う位だから、どんな違いがあっても不思議じゃない。

 でも、月の大きさは、ほぼ同じに見える。にもかかわらず、明らかに異なる天体だ。地球の月に似せて作ったと言われれば納得するが……全知全能の神様なら完全複製も可能なはずだ。

 クエストの情報を信じれば、大陸配置も同じ事が言える。


 夜空に、地球で見たのと形だけ(・・)が似ている天の川と近傍銀河がある。世界を創造できる存在なら、前世に似せて銀河を作ったとしても不思議じゃない。

 でも、銀河を作れる者なら、この星の自転と公転を調整するぐらい楽勝だろ? にもかかわらず、銀河面に対する自転の角度は明らかに違う。一年見てきたが、天の川は形を変えながら夜通し同じ位置に見える。多分だが、自転軸は銀河面に対しほぼ垂直だ。


 一つ仮説が立てられる。ここは、地球からそう遠くない別の星系だと。超文明が、実験のため、惑星の表面だけ作り直したのだと。月?適当な大きさの天体の表面を数百km削ってから運んで来たと考えれば良い。

 その仮説が正しいとしても、相手は自然法則自体を変更できる存在だ。神と呼んでも間違いではないだろうが……前世の宗教上のGODや神々、仏陀とは対応出来ない。


 そんな解決不可能な疑問に顔を顰めて居たら、アマカゼが一人で近づいてきた。


「こんな所で難しい顔して星を観るなんて、何をしているの?」


 正直に答える訳には行かないな。


「今年がどんな年になるか考えていた。星空には天意に繋がる秘密があるんじゃ無いかと、僕の単なる空想だけどねw」


 アマカゼが一瞬だけ目を大きく見開いた。そして、俯き、暫く経ってから、掠れた声を出した。


「……ここには、私しかいない。秘密は必ず守るわ。だから、本当の事を教えて……」


 あちゃー、この癖早く治さないと……。人を避けて神意を測っていたワシが、咄嗟に嘘を付く。アマカゼにしてみれば、どんな凶事が待つのか、恐怖だよな。


「心配する必要ないよ。アマカゼに見える夜空と同じ物が見えるだけ。不吉の星とかの剣呑な物がある訳でもない。

 う〜ん。説明しても良いけど、アマカゼだけの心の奥底の秘密にしてくれるかな? 一生、誰にも、ワシにすら二度と言わない秘密に」


「……心配する必要は無いけど、秘密自体はあるのね。

 良いわ。信頼する。何も聞かない。この一年でとても優しい、良い人だって理解出来たから。誰にも、秘密の一つや二つある。

 でも、こんな所にいると寒くて風邪を引くから戻りましょう」


 翌朝、朝の日課を終えて、アマカゼと一緒に、クサハミ婆さんの家を訪問した。用向きは、年末帰村した時に伝えている。


「義祖母のユウナギ様が魔術の種だと大切にしていた木切れの束だよ。それにしては、魔力が籠っていない事を不思議に感じたが……この細かい模様自体に秘密があったんだね」


 クサハミ婆さんが、棚から木簡の束を大事そうに持って来た。周りには、トリハミさんとハテソラ師匠も居る。


「結構あるね〜。しかも、それ程痛んでいない。大切にしていたんだね〜」


「ここに有るのは、一部さ。他にも、丘の何ヶ所かに有る筈だよ。量が多くて、先代が分散させていた」


「目的の物が早く見つかると良いなw」


 ワシは、木簡から目的の物を探した。


「あった。これだね\(^o^)/

 これを基点に解読できる。フブキ様が書き残した『中つクニ』の歴史だ。神託で得た知識は、やはりこれを読んだ物だ。あっと、でも語順が違うね。やはり漢文かw

 ああ、漢文ってのは、神託で得た知識で海の向こうの言葉用の文字だよ。語順も発音も何もかも違うから、ここの言葉を記すには使い難いんだw 」


 ワシは、姿勢を正し、アマカゼに向かって言った。


「これで、昔のクニは、自分達の文字を開発しなかった事がハッキリした。開発していれば、クニ1番の知識人だったフブキ様が、残さない訳はない。

 改めて、お願いするよ。アマカゼ様。子々孫々、此れからここで生まれ育つ全ての人の為に、ここの言葉に使える文字を開発して下さい」


「はい。神聖なお役目、引き受けました。

 は〜、でも最初の文例があれって、恥ずかしいのか嬉しいのか……」


「 (^_-) 未来永劫、語り継ぐ真実さw そうする為に選んだのさw 」


「バカ‼︎ 」


 ワシが最初に『アマカゼは島一番の美人だ』と彫った事を聞いているので、周り全員呆れた顔で見ている。







 ふう〜誤魔化せた。


 この世界は作られてから、まだ数百年しか経っていない。奴らは、中国の周時代の文化・文明を何らかの手段でコピーしたんだ。


 そうでなければ、前世の考古学の知識が有効になる筈はない。一生懸命勉強した周代の金石文と同じ文字が目の前に大量に存在している。


 若しかしたら、どこかの年代を基準に全世界に対して同じ事をしたんじゃないだろうか?


次は暦を話題にします。


 銀河の見え方は、趣味に突っ走りました^^;


 銀河座標上(銀河面≒天の川を銀緯0、銀河中心を銀経0とした座標系)の各銀河の位置は次の通りです。


アンドロメダ銀河、銀経121.2度、銀緯ー21.6度

小マゼラン銀河、銀経302.8、銀緯ー44.3

大マゼラン銀河、銀経280.5、銀緯ー32.9


 タツヤの居る星が、次の条件なら、本文のように見えると考えています。


自転の北極が銀河南極の近傍にある。


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