クニが滅びた理由
スミレ坂と親衛隊まで参加しての殲滅戦は2日で終わった。
ヤマカゼさんの天測によると新年まであと12か13日だそうだ。
恐ろしい事に一年の正確な日数を知る人にまだ出会えていない。呪術士達ですら、『月の満ち欠け12巡りと余りが10から13日』、『日の出の位置の確認が優先』、『宣言した後で間違いに気づいたら、堂々と嘘を突き通すw』というアバウトさだ(o_o)
この世界の一年は前世より長く、376から378日ぐらいだろうと推測しているが、ワシも経験不足で確定出来ない。
そう、年末が迫っている。作戦継続可否が軍議の議題になった。だが、クジラ村のシオフキ村長の『できるなら、正月は新たな気持ちで迎えたい』との発言と、タヌキ村とサバ村の好意により、新年の3日前まではクジラ村周りで作戦を継続する事になった。
思わず、スミレ坂とウオサシの方を見たら
「あはは、面白い。タツヤが他人の結婚式の準備を心配しているw 式自体は、カニハミお母様が差配してくれているし、新年から5日もあるから大丈夫よw
あ!でも作戦に忙しくて贈り物用意出来ないなんてオチは止めてね。他の人は、遅れても仕方ないけど、タツヤには早めに連絡したよね〜」
そう爆弾発言をして、周りが騒めいた。
座が落ち着いた所で、『穴が無いか真剣に考えて欲しい』と前置きして、遊撃戦を省略する作戦案を提案した。
ワシの遠距離攻撃で大鬼を仕留めきれなくても、リュウエンさんと合わせた、魔力矢で倒せる。倒しきれなくてもこれだけの戦士がいれば勝利は出来るし、緊急救命対応するスミレ坂も控えている。だから、今なら提案しても良いだろう。
提案は、真剣な議論の上、次の注意を払う事を条件に承認された。
・事前の鑑定結果によっては非採用
・1回目は、全員に高揚を掛ける。
そして、軍議から9日後にクジラ村作戦が終わった。丁度、期限の新年3日前だった。そのまま、トンビ村に帰りたかったが、先に済ませたい用事がある。
ワシは、タコ村でイモハミ婆さん、カニハミさん、スミレ坂とクエスト報酬の情報を何にするか相談する事にした。無論、秘儀の話と言って人払した上でだ。
事情説明時に、一度カニハミさんが気絶したが、相談は有意義に進んだ。特に、イモハミ婆さんが積極的だった。
「気象や地形は、村毎に詳しい者が、必ずいる。今、島の外の事を知っても役には立たぬ」
「異存がないようだから『魔法論入門』と『地方史』を選択するよ」
「どうじゃ、何が分かった?」
え〜と、急されても困るな。
「咀嚼するのに時間が掛かるよ。知りたい事を言ってくれた方が助かる」
「何故、クニ時代には強力な魔術士が何人も居たのか? それなのに何故滅びたのか? ずっと昔からそれが知りたかった。いや、知らねばならぬ」
よし、思い出す要領で集中しよう。
「今から、108年前、この世に魔術がもたらされた時、およそ100人に一人の割合で開眼した。各クニに数名は、最初から複数の魔術を使える天才が居た。
これが、魔術士が沢山いた理由だと思う。
そして、魔術の才能は、大まかに、並(才無)、小、中、大の四段階に分かれていて、段階が上がる毎に50分の1程度の人数になる。
え⁉︎ これは……」
「何か重要な事が分かったのかい」
「酷い話だけどね。
魔術の才能は子には遺伝しない。基本的には偶然によって決定される。う〜ん、大体カニハミさんが『小』、スミレ坂が『中』の才能なのかな。僕やイモハミ婆さんは神託があるから分からないや」
「残念な話だが、判れば手の打ちようがある。スミレ坂を見いだした熊村方式を連合内に広めよう」
「クニが、滅びた理由の方は……『軟弱で怠惰、さらには強欲な唾棄すべき王族が弓矢も持たず、贅沢と色欲の限りを尽くした結果滅亡に至った』……えらく主観的ってか、怨念を感じるな〜」
「何か、特に凶悪な魔物が出たんじゃないのか? 」
「いや……あ! 分かった‼︎ 直接の原因は、この人が見限ったからだ‼︎ このクニの歴史をまとめた人が、村々の不服従の鎮圧を拒否した。それから、三月程度で王族が全員惨殺されている‼︎ つまり、さっきの理由は或る意味『正しい』。この人に見限られるような態度が、滅びの原因という意味で。
その後も、この人が居る間は、大戦に勝ち続けているから、妖魔側の要因では無い」
「因みに、いつ頃の何という人だい? 」
「え〜と、114年前に生まれたフブキって人。うん?この人の家はトンビ村???」
「やはり、フブキ様か。40年程前にフブキ様が亡くなる迄は、まだかなりマシじゃった。ああ、フブキ様は、トンビ村の先代呪術士のユウナギさんの爺さんさ。私も、挨拶した事がある」
「他のクニも似たような話だね。最強クラスの魔術士に見捨てられて滅びているや。あ?ああ?不味すぎる。この組み合わせだと必然的に王位は不安定になる。
王政自体を超克する実力者が、王族外に必ず発生する。血統重視の王政と相性が最悪だ‼︎」
「あはは、面白い(-_^) タツヤが、また何か迂闊な事を喋っているwwww」
スミレ坂の爆笑でワシは我に返った。
「そうだなぁ〜。タツヤには、キチンと整理してから、話して貰った方が良いな。年末で時間も無い事だし。」
そう、イモハミ婆さんが宣言した。その後少しだけ魔術関連の話をして散会した。
不味い。不味い。不味すぎる(T ^ T)
次も設定の説明です。




