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アマカゼとの海岸散策

 海側三村の安全圏成立には、計10個の繁殖地を殲滅する必要がある。クラゲ村側で5つ、クジラ村側で5つだ。


 村々の位置関係を整理すると、トンビ村から川沿い河口付近に、カニハミさん夫婦のタコ村、その海岸沿い北北東約9kmにクラゲ村、海岸沿い西約9kmにクジラ村がある。

 そして、クラゲ村から南東約7kmにタヌキ村、北東約6kmの海岸沿いにサバ村があり、クジラ村から南西約9kmにリュウエンさんのシカ村がある。


 交渉の結果、クラゲ村側での作戦に、タヌキ村から計15名、サバ村から計25名の援軍が得られる事になっている。なお、サバ村には、イモハミ婆さんの弟子のハルカゼさんが治癒術士としている。

 クジラ村側は、シカ村がリュウエンさんの隊以外に50名もの援軍を用意するそうだ。


 ワシは、遊撃戦開始までの2日を使ってクジラ村からクラゲ村に至る海岸線を目に収める事にした。『疲れるだけだから同行する必要はない。』と言ったのだが、アマカゼはオオカゼさんと共に同行した。


「はぁはぁ、何をしようとしているの。はぁはぁ」


 少し休憩を入れた方が良いか。


「あっちは砂浜、向こうは岩場、一口に海岸と言っても色々な地形がある。塩田を作るのに適した地形が何か考える材料を集めているんだ。

 ああ、塩田と言うのは、塩を大規模に作る為の設備で、田と同じように広くて平いんだ」


「はぁはぁ、また新たな神託なのね、はぁはぁ」


「そうだね。少し座って、説明するよ。僕自身、余り理解出来ていないからね、頭の整理に付き合ってね」


 前世で見た専売公社時代からの『たばこと塩の資料館』の資料があるから、理解出来ていないってのは嘘だが、許される嘘だろう。違う視点が得られるかも知れない。


 説明した後でアマカゼが呟いた。


「そうすると、地形以外にも粘土とか砂とか細い枝とか超巨大なお椀とか、沢山の物が必要になるのね。タツヤは、そこまで塩辛いのが好きなの? 全然気付かなくてゴメンね」


「イヤイヤ、アマカゼの作るご飯は十分美味しいよ。実は、塩の用途は沢山出てくる筈なんだ。身近な物としては、保存食がある」


「そうなんだ。息も整ったから進んで良いよ。無理言って付いてきてゴメンね」


「気にしないで、二人で話しながら歩くのは楽しいよw」


 まあ、オオカゼさんに大層怒られて、次の日は別行動になったが、これも何時かは良い思い出話になるんだろう。


 海岸の散策を終えて、策源地のクラゲ村で作戦会議が開かれた。そこで、遊撃戦のやり方に三箇所変更が加わった。


 一つ目は、前回の戦訓から、全ての繁殖地の鑑定を先に行う事である。これが出来ていればトンビ村のヤマソラは、戦死しなかっただろう。


 二つ目は、シカ村からの要求でリュウエンさんの隊にも大鬼を狙って貰う事


 三つ目は、時々休日をいれる事である。寒くて身体が固くなる事を理由にしたが、本音は塩田造りの下交渉を進める為だ。


 懸念した危険な繁殖地も無く、遊撃戦開始から14日目までに18匹の大鬼(おおおに)を倒し、殲滅戦の準備が整った。安全の為、タヌキ村隊が大回りして集結する事もあり、殲滅戦開始は明々後日の予定だ。


 リュウエンさんは待望の高揚を取得し、弓矢の練習も精力的に続けている。ワシは、言霊と水流操作を取得した。四大のクエスト達成を視野に入れての事だ。


 翌日、前世で見た製塩設備の内、原理的には作成可能な、流下盤(りゅうかばん)枝条架(しじょうか)、土釜の建造について相談する為、海岸三村から集まって貰った。何故か、女性も多く人数は10人以上になった。


「最初の試行は、三村の内、何れかで引き受けて欲しいという事だったな?」


 打ち合わせの音頭取りをしてくれた、タコ村のキバヤリ村長(むらおさ)が切り出した。


「そうだ、見た限りどの村にも塩田を造れそうな場所があった。

 最初の小規模の試行では、特に優劣が出ないと思う。重い試行錯誤が必要になる、大変な役回りになるけど引き受けて欲しい」


「連合への貢献を考えると、クラゲ村で引き受けるのが筋と思うが? クジラ村には来年の大戦(おおいくさ)での避難民受け入れがあるし、タコ村は既に十分貢献している」


「しかし、大船が持ってくる塩と同じ物が出来ると考えるとな、女共がいち早くと、欲しがるはずだ」


 クラゲ村のウオウミ村長の有難い申し出に、何故かクジラ村のシオフキ村長が、後ろを気にしながら発言した。あれ? 希望が複数あるケースは考えていなかったな。どうしようか……


「それは、取らぬ狸の皮算用じゃろw 難しい施設を三つも作る苦労や男手に釣り合う訳はないw 無論、作った塩はタコ村、クジラ村にもいち早く供給する」


「美味しいお塩を海岸三村だけで独占するつもり? 使った事がない陸側4村にも必要よ。陸の食材の方が合うかも知れないわ」


 何故か? アマカゼが訳の分からない主張を始めた。


「だから、説明したように、何年か前一度使っただけで、海側でも滅多に使う事がないんだ」


 シオハミさんだ。そう言えば、灰塩ばかりなのが疑問で直煮製塩の白い塩がないか聞いた時アマカゼもいたな。ワシ自身は、マキの確保の問題だろうと納得したが、引っ張っていたのか……


 女性も混じってのグチャグチャな激論を何とかキバヤリさんがまとめ、クラゲ村が担当する事になったが……ワシは次の日、火魔法と水魔法を駆使して白い塩を作る羽目になった。


 水分が97%もある物を乾燥させるのは凄い時間が必要だ……丸1日潰れてしまったよ(T ^ T)




次は、クニが滅びた理由です。少し、設定の説明の色が強い話です。

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