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釉薬の開発開始

 翌朝、日課の朝練と警報張りの後でカシイワ師匠の元に向かった。


 新機軸の焼物を作る為だ。乾燥の工程を行う余裕はない為、窯の空きに加え、造形済の物の流用可否を確認する必要がある。


 今回の休暇で考えている事は三つある。

 一つ目は釉薬の実験

 二つ目は素焼と本焼き

 三つ目は火魔法による窯の温度調節だ


 あと、ふいごの作成に向けた議論だ。


 え、休暇とはとても思えんって?繰り返しになるけど、森の中で息を潜め……


「何か、新しい考えを持って来て貰えるかもと期待して、窯は空けてある。造形済の物と野焼きした物もある程度ある。

 それと、灰? か、若い奴らにも手伝わせて直ぐに集めるさ。藁の灰と薪の灰は混ぜない方が良いんだな? 両方とも、大量に出たから余りをまとめていたはずだ」


 流石は、カシイワ師匠、話が早くて助かります。因みに、機織小屋のソメアサ師匠も隣で真剣な目をして聞いている。何でも、焼物に女を飾る新しい可能性を感じているそうだ。この人が好きなのは布と言うよりは『美』だったよな。


「それと、石材の粉砕作業を行うから、大きめの木のお椀か板が無いかな? 粉になるまで処理するつもりだから、後でまとめ易いよう下に敷く物が欲しい」


「???石を粉にする? 磨く時に少し出るが……量を集めようとすると大変だぞ? 一体全体どうやって?」


「ああ、魔法を使った打撃ですり潰すつもりだよ」


「……因みに凄い音が出ないか?」


「きちんと、耳栓用の小さい布を用意したから大丈夫だよw」


「村長に断って村人に周知してくるわ。『タツヤの新しい秘儀の研究で大きな音が出るけど危険は無いから我慢して』って。これも、タツヤの側にいる私の役目ね」


 側にいたアマカゼがそう言って立ち去った。あちゃー、気付かんかったよ。


 そして、石を粉砕しての長石粉の採集を行った。布で何重にも包んで行った事もあり、大きいは大きいが、酷い音にはならなかった。

 ここから、長石のみ分離するのは……今は無理だな。まあ、組成分析など出来んのだから、分離する意味も無いか。


「灰と粉を混ぜて水に溶かして釉薬にする。それを野焼き済の焼物に掛けて十分馴染ませてから、窯で焼く。上手くいけば、焼いた後で表面が美しく変化して、水が染み込み難くなる。

 基本は、灰で良いと思うけど、溶かす物によって、変化が違う。それと重要な事だけど窯の温度に応じた物にする必要がある。

 そうだ、焼くと粉になる石も手に入れた方が良いかな?」


「石灰か? あれは、色々利用出来るから、ハヤブサ村との経路が確保されて直ぐに手に入れているぞ、どうやらツバメ村で取れるそうだ」


「それなら、何パターンか釉薬を作って試してみよう。それぞれの粉には特徴があって試行錯誤して良い配合を決める必要がある。具体的には……」


「難しいな。どの配合でどう変化したか、全て覚えねばならぬのか……」


「あんた。あたしも、手伝うから安心しな。難しい事も夫婦二人で乗り越えて来たじゃないか^_^ 」


 ワシとカシイワ師匠の話にソメアサ師匠も参加してきた。この夫婦、似た者同士で仲良いんだよな。


 他に、ふいごのアイデアを説明し、その日は素焼に施釉する所で終わった。そして、用事が有るので後で来て欲しいと、アマカゼがソメアサ師匠に頼んでから辞去した。


 夕食後、約束通りソメアサ師匠が一人でワシの家に来てくれた。


「殺風景だね〜。確かに此れは問題だわw

 私に任せておきな、恥ずかしくない調度品を揃えるよ。予算は十分だから、課題は期間かね」


「実はそれは口実で、秘密で新年の儀までに急ぎ揃えて欲しい物があるの」


「口は固い方だから安心おし、何が必要なんだい」


「実は、スミレ坂さんの結婚祝いを」


「事情は分かった。義理の兄も命を救われたけど、一人前の男でも悪夢にうなされる酷い現場だったそうだからね。

 元凶のタツヤは、十分な事をすべきだよ。私も感謝しているから、最大限の事をして貰いたいよ。

 う〜ん。オオカゼも居るから、アマカゼさんは、タツヤに付いて行く方が自然だねぇ。本人が居ない方が誤魔化し易いし。護衛の実戦経験者2名は……私の夫は使えないし…ああ、サトニナも居るのかw 後は貝貨の準備だけだね〜」


「旅費用の貝貨ならここに十分あるわ。ソメアサさんも、『タツヤの家族全員で買い付けに行くべき』と思うでしょ。公式お財布のアカユリさんも居るし。それで、ソメアサさんに目利きとして一緒に行って貰いたいの。」


「それで、決まりだね。

 後、タツヤ!アマカゼさんに衣装を一式贈ってやりな。アカユリちゃんにもだよ。他村の目に触れる二人の衣装がみすぼらしいのは、機織小屋を預かる私の恥にも繋がるんだよ。忙しいなんて言い訳など、叔母の私が許さないからね」


 ワシを含め家族が皆唖然としている間に、段取りが定まってしまった。ソメアサ師匠は、仕事はシッカリしてるけど、暴走する事もあるから、皆付いて行けるか心配だなぁ。


焼き物の話が続きます。

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