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お財布はアマカゼ自体?

 まだ、狼村に残っていた熊村のブナカゼ村長(むらおさ)に、直ぐに会いに行った。


「ウオサシとスミレ坂の結婚については判った。実は、キバヤリ村長が急いで帰ったのは、その件だ。息子のウオサシに相談されたそうだ。

 二人の希望が最速なら、丁度良いから連合としての新年の儀に合わせて盛大にすれば良い。家は成人に合わせてスミレ坂に贈る小屋の用意が進んでいる。だから、一月あれば十分間に合うだろう。二人にはワシから話そう。

 タツヤは、自分自身の贈り物だけ悩めば良い。と言っても、アマカゼがいるのか。あの娘と良く相談すれば問題ないだろう。

 ただ、結婚はギリギリになって延びるとか微妙な話が多いから、暫く広めないでくれ。」


 まだまだワシは人生経験が足りんな。ブナカゼさんの段取と堂々とした態度を模範としなきゃな。


「悪いが、スミレ坂の戦士待遇については、タツヤが動いて欲しい。タツヤの口から『既に神々も御認めになった事』と説明して廻った方が圧倒的に通りが良い。

 それと、クラゲ村のウオウミ村長がタツヤを探していた。何でも、人のやり繰りが大変で遊撃戦開始を少なくとも5日待って欲しいそうだ」


 突然の全兵力動員で何処も混乱しているだろうな。それなら、その期間を利用してやりたい事がある。少し離れた場所に良さげな岩場があったはずだ。


 ワシは、急ぎ様々な処理をした。特に重要な処理は、大規模殲滅戦でのワシの勲功の半分をスミレ坂に付け替える事だ。戦士でない場合、勲功が評価されない事に気付いてなかった。結婚を控え物入りな時にそれを知れば不満は大きかっただろう。


 処理を終え、翌日の夕方にトンビ村に戻った。5日程度はゆっくり出来そうだ。


 ワシが寄り道をしていた事もあり、家に帰った時にはアマカゼが母親に監督されながら一生懸命料理をしていた。家の玄関まで鋭い指導の声が聞こえる。あの夫婦、両方スパルタなのか?

 家に入るとアカユリ姉も涙目になっていた。付き合わされたんだな、可哀想に。


 何でも、久しぶりの帰宅なので、村長夫婦含めアマカゼの家族とワシの家族で内輪の食事会をする予定だそうだ。


 食事会の途中、村長が厳秘と前置きしてウオサシとスミレ坂の結婚の話を始めた。


「村とは別に仲の良いタツヤとアマカゼの連名で贈り物を用意する必要があるが、何か考えはあるか?

 秘密に準備しなきゃならんのが面倒だが、この家と二人の威儀を整える為と言えば大抵は誤魔化せるだろう」


「カシイワ師匠に手伝って貰って、新機軸の壺と皿を作る事を考えているけど、期間が短過ぎて間に合わないかもしれない。

 普通の贈り物を用意すべきだけど……アマカ…もとい、アカユリ姉さん元手は十分かな?」


「マルちゃん許して(T_T) 」


 不味い。アカユリ姉さんを泣かせてしまった。


「大丈夫よ。アカユリさんに頼まれて(・・・・)私も整理を手伝っているから。出しゃばるようで恐縮だけど、意見を言っても良いなら、豪勢に使った方が皆んな幸せになるわ」


 アマカゼがそう言うなら、そうしょう。


「此処は身内しか居ないんだから形式ばらんで良い。第一、タツヤの財布はアマカゼだとバレバレじゃ」


 村長が笑いながら言った。確かに一々、姉さんを泣かせたくないな。


 この世界で取引に使う物は、有形の物が二つ、無形の物も二つある。


 有形の物は、物々交換と貝貨だ。ここらではタコ村が貝貨を流通させている。


 無形の物は、労力と貸借(かしか)りだ。労力は働いた対価としてその場で有形の物を貰うので扱いは楽だ。


 今ワシは、莫大な個人的勲功を積み上げており、本来褒賞も用意する必要がある。しかし、勲功が巨大過ぎて褒賞が準備出来ない。一般の戦士よりは低い基準だがそれでも大き過ぎる。


 まあ、真面目な話、欲張る気は無いので、無くても良いのだが、それでは筋が通らない。そこで、【ある時払い】の貝貨相当枚数という形で、各村の借りという形にしている。

 しかし、紙幣どころか文字すらない世界、直接交渉・確認した者の記憶に頼るしかない。ワシの場合、その責任者は公称アカユリ姉さん、実質アマカゼである。

 アマカゼが記憶している貸しが財産の大部分と言う意味で、『タツヤの財布はアマカゼ』になる。無論、ワシが完全記憶でバックアップを取っているが、健気に頑張っているアマカゼの仕事を奪う気は無い。


 なお、貝貨自体を貯めるという方策は、『タコ村自体が腐りかねんので止めてくれ』と丸暗記見え見えの訳の分からないセリフを吐いたカニハミさんの頼みにより却下した。


 さて、食事後は、数日ぶりに、アマカゼ、アカユリ姉さんと三人でアラビア数字の勉強をするか。お財布に便利かも? とアマカゼが凄く興味を持っていた。

 文字についても信じ難い速度で研究を進めており、クニ時代の文字の探索は、実は不要じゃない? と思いはじめている。


次は、普通に転生者の知識を活かしたチートものを頑張ってみます。

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