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大規模殲滅戦(前編)

 冬の間は、比較的暖かい海側に移動したい。寒いと身体が硬くなって思わぬ不覚を取るから。

 そんな思いもあり、大鬼(おおおに)釣りを急いだ。しかし、重点を最も北側の繁殖地に移した時、悲劇が起きた。

 トンビ村のヤマソラが小鬼(こおに)に射られてしまった。19歳で身重の妻と幼い子供を残しての戦死だった。

 彼は、成人した若衆4人の第四遊撃隊で活躍していたが、運悪く弓矢を使う小鬼三匹に遭遇した。更に不味い事に先制攻撃を許してしまったのだ。

 先行していたヤマソラが側面30mの距離からの弓矢の斉射を受け、内1本が胴体に命中した。激痛で動く事は出来ず、更なる追撃を受けた。仲間の三人が小鬼を倒し、ヤマソラを抱えてワシに合流したが……合流を果たした時には既に死亡していた。


 小鬼の装備を全て剥ぎ取って、その日は急ぎ狼村に撤収した。


 持ち帰った装備を調べた結果

 ・鏃も石斧の刃も質は悪いが研いである。

 ・鹵獲品では無く、妖魔が作った物である。


 これまでとは比較にならないトンデモ無い脅威だ‼︎ しかも、ヒノカワ様との話と合わせて考えると、大戦(おおいくさ)発生位置に成り得る繁殖地という事だ‼︎


 七村連合の総力を挙げて磨り潰す事は当然として、具体的にどうやって戦死者を最低限にするか……難題だな。


 翌日の軍議において、まずは全村から精鋭を集結させる。連携を阻止する為、他の四つの繁殖地は熊村からの増援到着後直ちに殲滅する事が決まった。


 ついでに、木で簡単なヘルメットと胸甲を作れないか頼んだ。金属性の武器相手だとほぼ無意味だが、矢が人体に食い込む深さを減らす位は……期待出来ると嬉しいな。まあ、何も無いよりは一撃死する可能性は減るだろう。

 海側の村の若者達が、引き受けてくれた。何でも、木をくり抜くのは舟造りで慣れているそうだ。


 ヤマソラ戦死から四日後には、4つの繁殖地の殲滅と敵の戦力分析が終了した。無論ワシが危険を冒して繁殖地全体を鑑定したのだ。敵の兵力は、これまでと比較にならない程充実している。

 ・ボス属性付大鬼1匹

 ・弓持大鬼1匹

 ・大鬼3匹

 ・魔術持ち小鬼1匹(火弾及び治癒術)

 ・弓持小鬼15匹

 ・槍持小鬼10匹

 ・斧持小鬼12匹


 また、あの惨状を経験するのか……


 とはいえ、好材料もある。まず、ワシが魔力操作L2を取得し、魔力弾を飛ばせるようになった。リュウエンさんも魔闘術を取得し、矢を含め武器にも魔力を流せるようになった。更に、シカ村から追加で10名の先鋭が来ると伝令があり、戦士を210名も確保出来ることになった。余りの数に狼村の女子供は一旦疎開する計画だ。


 あと2日で戦力が集中する。それまでは、新しい力の訓練をしよう。と言うかそれしか出来ない。大鬼の腕力での矢を受ければ即死だと、大鬼釣りは却下されているから。


 翌日、どの程度の距離から攻撃可能か試している途中で、ワシはいきなり吐いて気絶した。直ぐに意識を取り戻したが、鬼教官オオカゼに(しご)かれた後のように身体が言う事を聞かない。何が起きたのか不安になっていたら、近くにいたリュウエンさんが呆れた声で(かたり)始めた。


「幼いのに無茶し過ぎだよ。高度な魔術は体力も消耗する。遠距離で二重行使するなんて……時々大馬鹿者になるって噂は本当だったんだ」


 そんな話を魔術士になった時の教育で聞いたな。でも……


「そんなに遠距離じゃないよ。魔力矢の有効射程と同じ程度だよ (T_T)」


「そう言えばそうだね。うーむ。暫く休んでいれば回復するから、試して欲しい事がある。じゃあ。僕は魔力矢の練習に戻るから」


 リュウエンさんも頑張っているが……基礎となる弓矢の扱いが……初心者以下なんだよな〜。


 回復した後でリュウエンさんと色々試した結果、どうやらワシの場合、魔力弾より魔力矢の方が格段に疲れない事が分かった。リュウエンさんの仮説をワシなりに整理すると、矢が慣性で飛んでいる間は、魔術の二重行使の負担が軽減する。更に、扱い慣れている物の方が疲労が少ない。


 それならと、矢自体を遠距離から加速させる方式を練習する事にした。その方が、有効射程は伸びそうだ。


 一方、リュウエンさんは、護衛に火矢を打たせそれに魔力を込める技を試している。何でも、火炎操作の応用だそうだ。


 実は、皆ホッとしている。リュウエンさんの腕だと友軍に誤射する可能性が……正直になろう、必ず誤射が起きる。


「そう言えば、火弾ってどんな魔術なんだ?」


 訓練の合間にリュウエンさんが聞いできた。


「えーと、分かりません。鑑定で火弾って見えただけで詳細は判らないんだ」


「火系統の魔術にそんな名称の物はないよ。何かと勘違いしているんじゃない? 名前が見えるという状態がどんなか判らないけど……君が知らない魔術なら名称を間違えても普通だし」


 ???確かに謎だ。どうやって名称を特定したんだ? 完全記憶で思い返してみよう。


「イメージとしては、力を持った火玉が飛んで行く感じだね。それをワシなりに火弾と解したようだ。

 そう言えば、リュウエンさんが練習している技に似ているのかもしれない? ただ、火矢よりは遅い感じがするな」


「鑑定て便利だね。何日も経ってから再鑑定出来るんだ。そうすると、僕も持っている可能性があるのか……一度、僕を鑑定して観て、何か判るかも知れない」


「ジー と、いや。同じ魔術は持っていな……い。

 ただ、修行中状態に観えるから、今研究している技と関係あるんだろうね」


 実は、鑑定は集中すると薄っすらとレベル0と観える事がある。リュウエンさんは、高揚と弓矢と火弾がその状態だ。


 鑑定もレベル上げた方が良いのかなぁ〜


ーーーーーーー

リュウエン


槍L2/周辺警戒L1

魔力操作L1

治癒術L1

魔闘術L1

発火L1/火炎操作L2/鎮火L1

水作成L1/水流操作L1

風操作L1

土操作L1

次は後編です。

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