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道具開発の現状把握

 熊村の分村は、本村からほんの数百メートルしか離れていない。前世でもこの世界でも独立した村と扱うには近すぎる。


 ワシを含め連合の幹部何人かは、分村に移動した。密議で提案した開発案件の確認をするためだ。今の所、連合外には秘密にする事としている。やはり、一番早いのは担架だ、何度か試行を済ませ、ほぼ原案が固まりつつある。


「槍と共用出来れば良いのだが、長さが微妙での〜。握りの問題もあるし専用にした。縛って安定させられる分早く運べると思う。後は、戦場までの運び方が課題での、場合によっては横木を無くすか、専用の背負子(しょいこ)が必要かも知れない」


 そっか、金具とか無いから、組み立て方一つでも色々制約が有るんだな。でも形にはなっている。


「ありがとうございます。こんなに早く形になるなんて感激です。山猫村一のクロイワさんに取り組んで頂いて大変助かります。これからも、宜しくお願いします。

 それと、布部分を作って貰っている奥さんのベニヌノさんにも感謝の念をお伝え下さい」


 次は、狼村が名乗りを上げた革鎧だ。何でも、クニ時代にはそれらしき物があったと言う古老もいて、村全体で盛り上がっているそうだ。狼村長(むらおさ)が状況を説明してくれた。


「革作りの工程は多く、試作品が出来るのは早くても来年の夏だ。ただ、革を硬くする方法は分かっているので、加工中の品を転用して、何が一番良さそうかの検討は進んでいる。多分、妖魔の革が最も良い。特に、大鬼(おおおに)からは、相当頑丈な物が出来そうだ。

 それで、海側の村で取れる魚型魔獣を今度観に行こうと思う。

 ただな、魔物の皮もだが、鞣し剤とか色々必要な物が多くて、数多く作れるかはかなり疑問だ。素材の調達では、他の村の協力も絶対に必要だ」


「ありがとうございます。検討がこんなに早く進んでいるのは、狼村が革の技術を大事にしてくれていたお陰ですね。棍棒の一撃を耐えれるようになれば、闘いでは圧倒的に有利になる。大変な事を頼んでしまい恐縮ですが宜しくお願いします。それと、係わっている村の人にも感謝の念をお伝え下さい」


 う〜ん? 6歳児の姿で上から目線の言葉は不味いか? しかし、何も言わないのは勿論、分かっていないフリをするのも逆効果だろ?


 テントは、布に防水剤を塗っても元の布自体が小さく、繋ぎ目から水がだだ漏れになるためまだ目処が立たないようだ。


 そして、カシイワ師匠の順番だ。トンビ村長の判断で鉄の事は抜きで窯の成果をこの機会に一緒に説明する事にしたのだ。目撃者はそれなりにいるので勘ぐられる前に紹介した方が秘密保持上有利だ。


 窯を作ると木炭も壺もこれまでと違う物になる事と、土を焼いたレンガが紹介された。


「田の作業をした後、更に地面を掘っていると聞いて不思議だったが、まことタツヤ殿への神託は数が多い。対応する名工の身体を労わる事も必要だな」


 納得したのか、誰かがそんな声を上げた。


 その後、各村の名人の話などが盛り上がり、案外有意義な時間を過ごした。


 さて、本日最後の密談だ。


 先程の打ち合後、分村の外れの小屋にワシ、熊村のブナカゼ村長、トンビ村のクマオリ村長、カシイワ師匠の4人で移動した。そこには、すでにイモハミ婆さんとクサハミ婆さんが待っていた。


「何じゃい? 最高機密ってのは、乙女の細腰は機密じゃが、探ったからといって()ったりしないよ(^_-)」


 誤解していた。イモハミ婆さんは、最高に緊張した時に、笑えない冗談とウインクを出すんだ‼︎


「時間も惜しいから重要な点から言うよ。鉄造りを考えている。その為には、残念だけど武力の裏付けがいる。そして、恐らく村一つ乗っ取るだけの覚悟も必要だ。

 だけど、僕には強い制限があって強引な手段は、考える事すら出来ない。

 具体的には、南のムササビ村をどうにか手に入れたい。出来れば2年以内に」


「村の乗っ取りも神託なのかい?」


 イモハミ婆さんが掠れた声を上げた。


 神託を便利使いしたら、暴走しかねないな。


「神託と言えるのは、鉄造りまでだよ。神々にしてみれば、一度成功した後で七村連合から奪われても、関心の外だろうね。

 だけど、ワシにはこの連合が重要だ。鉄を造ってそれを七村連合で維持したい。その為には、原料に一番近いムササビ村の確保が必要なんだ」


「一番早くて確実なのは、戦士を送って明け渡しを要求する事だが、そんなやり方は嫌………無理なのか⁉︎」


 ワシは、突然の激痛に脂汗を流しながらブナカゼさんに応えた。まあ、2歳の時のアレよりはかなりマシだ。


「抵抗されて、流血の惨事になったら、神罰があると思う」


「大丈夫じゃ。ムササビ村は修行者を派遣する予算もない程どん詰まりの村だ。幾らでも交渉手段はある。

 乙女の魅惑の微笑み一つで村長らが知恵を絞ってくれるよ (^_-)」


「「「ウインクされても困るがな」」」


 その後、少しだけ話をし、ムササビ村の調査と交渉方策の検討が済むまでは、連合内でも厳秘とする事に合意した。

 これで、実効的な拒否権を持つ者を巻き込む事に成功した。

次は、アマカゼのお仕事です。



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