大お見合い祭
ワシは、村長にことわって急ぎ熊村のイモハミ婆さんの元に向かった。
「何じゃい。その慌てた顔は?ヒノカワが唐突な事など今に始まった事じゃあるまい?」
急いで走り、日没前に到着したワシにイモハミ婆さんは言った。いや、ワシ、ヒノカワ様とは半年前に一度あっただけなのですが……
「はっきり言って、奴に行動をとやかく言っても無駄だし、言う気がある者もいない。この30年ばかり、全ての大戦で勲功第1位なんじゃ。我儘言う権利は十分過ぎる程ある。
しかし、基本は善人、旨い飯と酒でも与えておけばそれで足りる。無くても無茶は言わん。単に飛んでどっかに行くだけじゃ。
丁度、祭もある。重要人物が集まっても違和感は無い。若い奴らの元気な姿でも見せてから、用件の密談をすれば良い」
そっか、慣れているんだね。
「とはいえ、事前に人を集めて相談するなんて始めてだね。まあ、丁度タツヤがいるから、返信発送は任せるさ。魔力の大規模投入は、乙女の柔肌に悪いんじゃ(^_-) 」
ウインクされても困るがな……まあ言霊の返信は初めてだしやってみるか。
それから、祭までは比較的ノンビリ過ごした。無論、オオカゼ他による武技の修練とアマカゼとの舞踊の練習、イモハミ婆さんらによる呪術士としての詰め込みと回復薬への魔力込はある。
うん?十分忙しい?イヤイヤ、森の中で息を潜めて遊撃戦を1日中続けるよりはかなりマシだ。少なくとも、気分は晴れる。
「あはは、面白い。感覚が完全にマヒしているのね。まあ、半年も休まず闘い続けたから当然ね。本当にお疲れ様。何なら添い寝位はしても良いよ。良い子には、お昼寝も必要だものw」
「冗談言ってないで、男の選別頑張ってね。お昼寝の付き合いは、タツヤを選んだ私の役目よ」
「ワシ、ゆったりと白湯を飲みたいだけなのだが……」
スミレ坂とアマカゼとの3人で寛いだ時間を取るのも久しぶりだな。
「ところで、タツヤが急いで熊村に走った理由は何なの? 襲撃でもあったのかと、心配したわよ」
「ああ、ヒノカワ様という、この島最強の男が来賓として来る事になったから、その相談だよ。幾ら丁寧にしても可笑しくない相手だからね」
「???最強って?タツヤより強いの? そんなの信じれないよ?」
アマカゼとの問答にふと困った。う〜ん怖がらせてはいけないな。
「僕が30年育った感じの人だよ。同じ僕でも大人と子供じゃ、違うでしょ」
「……そういえば、スミレ坂さんの夫選びはどうなったの?」
しまった。つい癖が出た。アマカゼに余計な気を使わせてしまった。
「おや? 聞いてないか? シオハミの双子の兄のウオサシだよ。生まれは熊村だから、他の者よりは熊村の若衆も受け入れ易いだろう。
まあ、若い娘共が何か悪ふざけを考えているようだが、私の気持ちは固まっている。ウオサシは十分面白い男じゃ。
それと、さっきタツヤが誤魔化したのは、ヒノカワ様との初対面でビビってしまった事じゃ。強者は強者を知ると言う。タツヤ程になると、余人には見えぬ何かが見えるのだろう。しかし、1人だけビビっていたなどと、婚約者に知られたくは無かろう」
「失礼しちゃう。人の婚約者を臆病者扱いした」
はいはい、好きにネタにしてよ。でも、このほのぼの感は心が安まるな。そっか、ウオサシはスミレ坂を選んだのか。村長の長男で順当なら次のタコ村長なのにな。
大お見合い祭は、初日
・熊村長による歓迎の挨拶
・ワシによる作戦参加者への謝辞
・そして戦死した2名への哀悼の辞
・全員による勇者を讃える歌の奉納
・スミレ坂による大お見合い開始宣言
・熊村戦士長によるスミレ坂争奪戦の結果発表
と続いた。
そして、娘達のおふざけだろう、『私と誓い合った筈よね‼︎』騒動を挟みながら、ウオサシによるスミレ坂への求婚と受諾が行われた。
その後は、成人前後の若者達の男女交流だ。座を盛り上げる為の企画は、盛り沢山用意されている。
ワシは、基本的にアマカゼと一緒に居て、時折力比べ等を受け付けている。とはいえ、魔闘術がL3に到達しており相当なハンデが無いと盛り上がりに欠ける。
ヒノカワ様は、そんな様子を幸せそうに見ながら、娘達に自慢話をして回っている。無論、ヒノカワ様が来る前に娘達や若衆に十分な注意喚起をしている。
娘達には、チヤホヤされるのが大好きな機嫌を損ねてはならない超重要人物だと。若衆には、娘が目を付けられそうになったら、嘘で構わんから、その場でその娘に求愛して標的からそらせと。
基本善人で無理強いするような事は無いが、勘違いする事はままあるので、そういう対応をしていると、各村長夫人からの申し伝えだ。
祭りは、結構盛り上がって3日続いた。驚いた事に、祭り期間中に言い交わしてしまった男女が何組もいる。各村長の仕事が増えそうだ。
さて、次は真剣な密談だ。気が重いな。
次から新章に入る予定です。




