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閑話 クサハミ婆さんの告白

 警報の魔術を観れるのは久しぶりだね。母さんに頼めば観せて貰う事は出来るけど、簡単に村を出て良い立場じゃない。

 でも、此れからは違うのかな? 気楽に行き合えるようになるのかな? 出来たら会いたい人は沢山いる。娘時代の思い出話に花を咲かせたい。

 隣にいる可愛い娘達が私の歳になる時、何を思うのだろうか? 幸せな思い出一杯だったら良いな。

 そして、タツヤは既に独り立ちと言って良いのかな? もう指導し得る何も残っていないけど?


 明るい気持ちでそんなこと考えながら歩いていると、トリハミが私に語りかけてきた。


「母さんが次に身に付けたい魔術は、警報だよね。タツヤさんの出張が続くと、影響があるのかな?」


「心配しなくて良いよ。来年にはきっと習得出来るさ。祝詞(のりと)自体は、下手すると婆さんより早く覚えたんだよ。それに、この10年は魔術のみに集中できるよう趣味の機織りも最小限に我慢している。

 ああ、でも思い出すね。おまえ達のイモハミ婆さんは、偉大だよ。警報は、祝詞だけを材料に魔術の再現に成功したんだからね。」


「ふふ、その話何度も聞いたわ。母さんは本当に婆さんが好きねw

 でも、母さんの場合、開眼時の事故の影響とか心配。修行の先取りは大変な重荷になるかも知れないんだよね」


 そういえば、治癒術の突然の取得を誤魔化す為、そんな作り話しをしたよね。タツヤが、神託について話せるようになったんだ。本当の事情を話しても良いよね。


「お〜い、タツヤ、ハテソラ、話があるよ〜こっちおいで〜」


 ハテソラと二人で警報を置く最適位置を議論しているタツヤに声を掛けた。


「トリハミとハテソラには、私の開眼時に事故が起きたと言っていたけど、嘘

 本当は、婆さんに起きたのと同じ神託による治癒術の下賜が起きた」


「そんな慶ばしいことを何故誤魔化す必要があったの??」


「マル……いやタツヤに関係あるんだね」


 娘二人が同時に声を上げた。ハテソラには、色々手伝って貰ったから、気付くだろうね。


「そう、もうタツヤに知られても大丈夫だろう。それで慢心するような子じゃないし、歳は足りないが独り立ちに近いだろう。

 私は、タツヤを陰ながら導いて、人々の中で独り立ちできるまで厳しく鍛えよと神託を受けた。神々がタツヤに何をさせたいのかは、曖昧過ぎてよく分からなかった。婆さんは、ヒノカワを継げる様にする事と推測していたが……詮索は止めよう」


「だからって、あれは無茶苦茶だ!」


「ようやく分かった。優遇され過ぎ、都合良すぎと訝しんでいたが、クサハミ婆さんが手配してくれてたんだ」


 ハテソラとタツヤがほぼ同時に声を上げた。


 そして、幾つか表情を変えてから、ハテソラが迫力のある怒声を出した。


「母さん‼︎ 常識という重要な事を教え忘れている‼︎

 このままじゃ、タツヤの子供は一人も育たない‼︎

 この子の基準は、狂い過ぎているから、繰り返し繰り返し意識させないと、必ず大きな悲劇を引き起こす‼︎ 」


 娘に叱られてしまった(T_T)

 母親失格なの? でも、教える事が残っているのは……認めざるえない。


「……御免なさい。母さん。怒鳴ったりしてしまって、タツヤが子育てをするのは随分先。だから、今考える必要はない。

 でも、これで私も胸の支えが一つ取れた。ある日急に、母さんが趣味の教育採取班に好意的になった。嬉しかったけど、ついに母さんに見捨てられたかと思うと辛かった。

 本当は、私を信頼して神託の手伝いという至高に尊い仕事をさせてくれたのね。信頼してくれてありがとう。そして、誤解していて御免なさい」


 良かった。母親失格ではないよう。


「あたしこそ、何も説明出来なくてごめんね。考えてみると、あんたには酷い犠牲を強いた事になるね。トリハミに比べて魔術士としての進捗は随分遅れてしまっている。

 自分自身の経験で痛感していた筈なのに……」


 そう、他の技量を高めれば、その分魔術士に成るのは遅れてしまうんだ。だから、母さんとホシカミ婆さんが呪術士が覚える内容をどう()く整理したものにするか腐心していた。


「母さん、選んだのは私自身だよ。女系の孫娘らの中で唯一、婆さんにちなんだ名前にしなかったのは私。これは、子供心に魔術以外への興味が強いのが分かってたから。

 魔術も諦める気は無いから、いつか取得出来るだろうし、トンビ村には、トリハミ姉さんもタツヤもいるから、母さんみたいな苦しい思いはしないだろう。

 だから、心配しないで^_^ 」


 優しい娘だね。癒されるよ。


「ハテソラ師匠の場合、巡邏隊に参加する方が、近道じゃないかな?

 単独の魔物なら、楽勝だろうし、近接戦が出来る人と組めば、遅れをとる要素は無くなるはずだよ」


 ???タツヤが何を言ってるのか分からない。ハテソラを魔物と闘わせるなんて???私の可愛い娘に野蛮な事を勧めないで。


「あら。それなら、私も姉として、協力するわよ。夫婦二人で巡邏する間、子供の面倒を見ていてあげる。

 予想外に、今年も豊作だったから、お乳が余り気味なのよ」


 トリハミまで何を言うんだい⁉︎ ハテソラをどうするつもりなの!


「か弱いハテソラを闘わせるなんて無茶苦茶だよ‼︎ 」


「え? ハテソラ師匠は、か弱くないよ。男性だったら確実に偵察隊に入る程の腕前だよ」


 私の叫ぶような声に、タツヤが冷静な声で応えた。


「タツヤ、構わないから、私を鑑定しな」


 ……子供は気が付かない間に随分成長するんだね。これで、魔術もそれなりに進捗させている。

 実は、ハテソラは天才だったのかも? それが、魔術に向かって無いってだけで……だとしたら、魔術の修行を強要する事の方が、酷い犠牲なのかも知れない。


 でも、それは譲れない。ハテソラ許しておくれ。


ーーーーーーーーーー

ハテソラ

呪術士技能L2

動植物知識L3/道具知識L2/気象知識L2

故事知識L1/地形知識L1/天文知識L1

弓矢L3/投石L2/忍び足L3/周辺警戒L3


次は、大お見合い祭です。

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