指導監督は義父だと!
トンビ村に帰り着くと、各村の村長らが厳しい顔で待ち構えていた。クサハミ婆さんに最低限の治癒をして貰い。査問会が始まった。
何をどう考えたのか、誰に相談したのか、何処が甘かったのか、根掘り葉堀り詰問を受ける辛い時間が延々と続いた。
それだけ深刻な問題だと、やってしまった後なら分かる。ワシは、何て愚かだったのだろう。
いや、本来ワシはここに居る誰よりも精神年齢が高い。感情に流されず、本当に必要な事に意識を向けよう。自己嫌悪で落ち込む事でも、ましてや不貞腐れる事でも無い。無論、心配をかけ傷付けた人の感情の捌け口に成る事も必要だ。だが、より重要なのは何故何を誤ったのか明らかにし心に刻む事だ。
「若さ、いや幼さ故の過ちだが、同じような過ちをされると……」
「タツヤの身近にいる遊撃隊の大人がフォローすべき……いや、立場的に無理だ」
「とすると、誰か別の者にフォローさせるのか? それが出来る者は誰だ?」
査問は、ワシをどう監督すべきか? と言う方向に進んだ。確かに、ワシの人生経験は長いが、脳味噌自体は6歳だ。年齢による思考バイアスで無謀になったり悪戯気味にもなるはずだな。前世で若者の無謀さを生物学的視点から研究した事例を読んだ覚えがあるな……
「オオカゼをタツヤの監督にするのはどうだ? 次期村長に相応しい武技と知恵があるし、いずれ義父になるから、タツヤも頭が上がらんだろう」
考え込んでいたクサハミ婆さんが、そう提案した。
「しかし、そろそろ代替わりではないか? タツヤに付ける余裕があるのか?」
「問題ない。あと数年私が頑張れば良い話だ。オオカゼにも良い経験になる」
戦士長とトンビ村長が言葉を交わして、話しは終わった。
えーと、四六時中、義父に監督されるのですか……それは流石に、斜め上にお腹一杯だな。する気は無いけど、浮気とか出来なくなるじゃないか(T ^ T)。
「流石に今回は不味すぎるが、この戦法は上手く改良すれば可能性が広がるのではないか? 結果として、たった11人で繁殖地を壊滅させた事になる」
「後詰めを予め控えさせるとかか……ただ気付かれ易くなるから、逆効果では無いか?」
「より見つかり難い手は無いか、イヤイヤ失敗がある前提で考えねばならん。その方向の思考は同じ誤りを生むだけか」
「何にせよ、試す場合は、圧倒的優位な条件を揃えんとの」
各村戦士長らの戦術的議論も盛り上がったが『現状では戦力不足』と締め括られた。
「野営は、極力避けねばならない。翌朝には、体力が落ちて戦力が実質半分になっている。それと、夜活発になる獣が……」
「馬鹿野郎! 速度が落ちている! 気合いを入れろ腕を振れ、退却時は疲労困憊しているのが普通だ! 疲れているから走れないってのは食べて下さいと言うのと同義だ!」
その後の5日間、オオカゼが教官になって村長や戦士長が知っておくべき、戦訓等の詰め込み教育が行われた。ついでに、懲罰的意味を込めた長時間の持久走も行われた。やはり、一人前の戦士に比べるとワシの持久力は見劣りしている。
そうそう、トンビ村周辺の安全圏作りの使命がワシに課された。無論、時間は十分掛けて無理はしないのが条件だ。
狩りながら普通に日帰り出来る範囲ーワシの脳内地図だと半径10kmーの安全圏確立が目標だ。維持する為の巡邏を考えるとその程度が限界だ。
その範囲では、西側に2つ東側に3つ繁殖地が残っている。そして、その外側では東側にいくつかの村がある。
一方、西側はかなり広い範囲で村がない。実は、大戦で村が一つ一つ滅んでいった地域だ。次の大戦もここで発生するのではと危惧されている。
そこで、まずは西側の大鬼釣りを優先する事になった。東側は、兵力提供の交渉の余地があるためだ。
それから約一カ月、トンビ村にいる戦力だけ使って西側の繁殖地2つを滅ぼしたワシは、村長と一緒に東側で一番近いハヤブサ村との交渉に向かっていた。
弓矢を使う妖魔がいたりして緊張したが、単純に時間を掛けて遭遇戦を繰り返せば繁殖地の妖魔は減る。そして、少ない戦力でも殲滅出来るのか……本当にワシは何を慌ていたのだろうか。
ハヤブサ村は近くのスズメ、カラスの3村で緩い連合を形成している。20年前に、多大な犠牲を払って3村で囲まれる土地内の繁殖地を滅ぼした縁だ。
ただし、3村内での序列は歴然としている。当時から治癒術士がいたカラス村が最も強く、ハヤブサ村とスズメ村は従属的立場で比較的貧しい。
ちなみに、3村ともイモハミ婆さんの弟子がいる。と言うか、カラス村出身の一番弟子が治癒術を習得したのを契機に成立した連合だ。
話しが通じる相手だと良いな。
次は、ホシカミ婆さんと三村連合です。




