再びの大苦戦
トンビ村に帰って数日あった為、カシイワ師匠の作業の進捗を確認した。試作の小さい窯でまずは木炭の増産効果を確認していた。進歩は驚く程早いが、その分無理をしているのだろう。助手を含め体の節々が痛いようだった。
謝意と身体を労って欲しい旨伝えて、ワシは次の課題に向き合った。自分自身の戦力強化だ。
人が急に増える筈もなく、大戦で中核となる7村連合の戦士数は急には増えない。一方、全素質の影響だろうが、ワシ自身の能力は戦闘経験で急激に延びている。
ここから、大戦までにワシを強化するのが効果的とは解るが、計120名も動員が必要な繁殖地の殲滅戦を増やす事は簡単ではない。その為、どうやって効率的に戦闘経験を増やすか考える必要がある。
地道に大鬼釣りをするしか無いが、偵察隊がいないと捕捉が難しくて、小鬼ばかり釣れるんだよな。魔闘術も上がったし、より遠距離でより高い命中精度の魔力矢を模索するか。
なお、メンバーの入れ替えはあったが、遊撃隊として引き続き7名をワシに付けてくれている。それに加え狩った妖魔の肉を出来るだけトンビ村に運ぶ為、プラス3名付けてくれている。現状の人手不足を考えると、感謝が必要な数だ。贅沢を望むのはよそう。
兄弟の儀の日まで、村の西側直近の繁殖地を標的に大鬼釣りをした。9回の遭遇戦を行ない戦果は大鬼3匹に小鬼28匹だった。そして、忍び足がL3に上がった。薄々感じてはいたがSPは、魔術以外にも効果があるんだ。
この狩りによる技量向上──クエスト情報によるとSPポイントと言うらしい──は、どうやら本人が伸ばしたいと強く欲している技量が優先らしい。自分をどう強化したいか自省が重要じゃな。
そうそう、クエストと言えば現在二つ進行している。一つは四大【火水風土】の魔術の取得でありもう一つは鉄の製造だ。丁寧なことに鉄の製造は、カシイワ師匠らに告げた翌朝にクエストとなっていた。どちらも、達成の目処が無いため無視している。
兄弟の儀は、厳かに行われた。そして、連合としての最初の大事業として、トンビ村の田の拡大が決定された。とはいえ、今年はどの村も人手のやりくりが厳しいため、クジラ、クラゲ、狼、山猫の4村から、3名ずつ出すのみだ。なお、食料はトンビ村持ちだ。
和議の為の再生については、イモハミ婆さんとカニハミさんが対応する。ワシには、それより一匹でも多く妖魔を狩って欲しいそうだ。さらに、和議の嫁入りについても労力提供に変わらないか打診する事になった。まあ、でも『飲むまい』嫌な話しだが娘が余っているのが通例だ。
順調で慢心していたのだろう。ワシは、その翌日酷い失敗を犯してしまった。
その時までに魔力矢の制御も上達し、山なりの弾道で150m先から大鬼を即死させられるだけの狙撃が出来るようになっていた。この弾道だとほぼ真上から突き刺さる形になり、狙撃点の特定が難しいはずだ。しかも、大鬼を即死させられるだけの威力だと鏃も粉砕され、再利用される可能性もない。そこまで考えたワシは安易に直近の繁殖地内の大鬼の直接狙撃を試してみる事にした。
命中し、一匹の大鬼が倒れるまでは順調だった。確実に死んでいるだろう。しかし、次の瞬間、ワシを指差して何か叫ぶ小鬼がいた。あれ、完全に気付かれている?
群れごと向かってくる事を感じたワシは、急ぎ残り二匹の大鬼の狙撃をした。大鬼が残っていれば仲間を犠牲にしたとしても逃げ切れない。
それからは、逃げながら矢で足止めする、危険な退却戦になった。追いつかれれば、治癒する余裕は無いと判断したワシは、弱い魔力矢で小鬼の数を減らす事を優先した。
8匹はそれで無力化し、さらに他の者が5匹を接敵前に倒した。しかし、そこで追いつかれ13匹対11人の酷い近接戦になってしまった。皆の技量からギリギリ勝てると判断したワシも槍を振るって参加した。
3撃棍棒を受けたが、魔闘術で何とか耐え切って、逆に力任せに4匹倒した。途中で、魔力の掛け方を間違えて槍が折れてしまった。最後の一匹など、身長が低い事を利用して、汚い下腹部を握り潰して倒す有様だった。
小鬼が全て倒れた時、立っていられた者は、4人だった。
一番マシな者をトンビ村への救援要請に走らせた。残る3人で負傷者への対応と生きている敵の止めだ。
幸いな事に遊撃隊には、1人一掴みの回復薬が配布されている。それで救命困難な者は居なかったが、酷い惨状だ。ワシは悔し涙を流しながら敵に止めを刺すため走り回った。
ワシは、余りにも愚かだった。死んだら取り返しつかない以上、欲張った冒険など論外だ。
暫くして到着した救援隊に守られて、涙を流した暗い顔でトンビ村に戻った。
失敗したタツヤはシゴキを受けます。
H30.3.30 クエストの記載の見直し
鋼の製造->鉄の製造
一足飛びに、鋼は……無茶だ(^^;;




