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神託の扱い方

 実は、タコ村に到着してから、大規模な部隊の組み替えが始まっている。

 これまでの、熊村、トンビ村、タコ村の3村中核から、トンビ村、タコ村、クジラ村、クラゲ村の4村中核への変更だ。タコ村に詰める治癒術士は、カニハミさんとスミレ坂に変わる。スミレ坂は既に到着し、カニハミさんは、要再生者の対応が終わり次第タコ村に戻ってくる。


 熊村戦士団とカワハミさんは、朝一に帰還の旅を始めた。また、クジラ村とクラゲ村の戦士達は、舟で移動しており全員が揃うのは明日以降の予定だ。


「実戦前に、高揚の魔術を一度試してみた方が良いよね」


 魔術の議論があると、シオハミさんに外して貰ってからスミレ坂が提案した。


 この魔術は、術者を中心に音と映像を見せる魔術だ。しかも、大人数に対して其々の心理状況に応じたものを見せる。慰めの静かな音色が聞こえる者、勇壮な音色が聞こえる者、家族や恋人の幻影が見える者、色々だ。

 更に、心の底から術者と共に戦う事を誓ったものには、当人の魔力を消費した弱い魔闘術の効果が1日程度継続する。

 欠点は、魔術士で無いものに連日使えば魔力涸渇で行動不能になる事だ。


「それはそうだが、どうやって説明すべきだろう」


 ワシとしては、クエストに理解が得られるか心配だ。


「???どうもこうも、そのまま言えば良いでしょ?『祖霊と神々が、闘い振りを慶賀(けいが)して新しい力を授けてくれたようだ』と、そんな話を聞いたら皆々凄く感激するよね?

 若しかしたら、神々から強く口止めを指命されているの?」


 ワシは、暫く考え込んでしまった。


「全く問題ないようだ。ワシはつまらぬ事を悩んでいたようだな」


 それから、幹部達を集めて相談したところ、スミレ坂の予想通り感激で大騒ぎになった。明後日、朝一に参加予定者全員を集めて演習を行う事が即決された。


 夕食後、シオハミさんに舞踊の師匠の紹介を頼んだ。趣味で心を遊ばせる事も重要だ。もう、落ち込んで皆に心配を掛けたくはない。ちなみに、シオハミさんとスミレ坂も練習に強制参加になった。ワシに見劣りするような事は万一にも許されんらしい。


 さて、ワシは明日からまた大鬼釣りだ。


 演習の朝、会場は熱気で溢れ返っていた。簡単に事情を説明し、全員を対象に高揚を掛けて数秒、凄まじい歓声が響き渡った。ワシの魔力は三分の一程度消費されていた。この程度なら、休まずとも大鬼釣りは可能だな。


 対象者に対する正確な聞き取りと効果の評価をスミレ坂と幹部に任せ、ワシは偵察隊らと大鬼釣りに出発した。情報封鎖を考えると、忍び足に悪影響がないか実地確認する必要がある。何ら問題ないなら2日置いて明々後日に一回殲滅戦を行う。

 前世の暦だとそろそろ6月中旬、梅雨に入る。今後の作戦の進捗は天気次第だ。


 演習も殲滅戦も何ら問題無く終わり、高揚の有効性は強く印象付けられた。不利な戦局を想定して、演説とかも勉強した方が良さそうだな。


 雨の日が増えた影響でタコ村付近の残り二つの繁殖地の殲滅に10日以上掛かった。その、タコ村周辺での作戦中に再生、解毒、鎮静の魔術を取得し、ワシは治癒術士としてほぼ満足のいく力量に到達した。そして、偵察隊と遊撃隊のみ熊村に向かい、その他は、一度解散する事になった。

 やはり、男手が長く不在になるのは辛いため、作戦の流れを見直す事になった為だ。


 まず、偵察隊と遊撃隊で残る4つの繁殖地の大鬼を全て倒す。その後、1日に二つの繁殖地を殲滅する。高揚の待ち2日の間に、戦場整理をし、次の日に残り二つの繁殖地を殲滅する。

 ここまで理想的にいくとは思えないが、大人数を動員する期間は減るだろう。休みが無くて辛い者も出るだろうが、士気が高いので、何とか乗り切れる……と期待したい。


 途中でトンビ村に寄った時、クサハミ婆さんから呼び出しを受けた。二人だけで話したいそうだ。


「高揚の話が伝わってきた時、道具造りのカシイワが少し落ち込んでいた。何も言わないが、私には解る。タツヤに信頼されていないと感じたんじゃよ。

 カシイワに不思議なものを作るよう頼んだよね。言われなくても神託だと気付くさ。何か言えない強い理由があると推測してたが、実は信じられてないかも知れないと、感じたんじゃよ。

 もし、神々に禁止されているんじゃ無ければ、一言神託じゃと言っておやり」


 ああ、ワシの秘密主義がカシイワ師匠を傷付けたのか……でも、深い機密を何処まで広げるべきか……


「わかった。村長とカシイワさんだけ呼んで。話したい事がある。ただし、厳秘だから、命掛ける覚悟がいると伝えて。変に漏れると、人の血の雨が降る」


 クサハミ婆さん、村長、カシイワさんが集まり、ワシは語り始めた。


「これは、長い長い作戦になる。実は、神託があったのは、鉄造りなんだ。上手く進めば、ワシらも鉄を量産できるようになる。だけど、武器一つで奴隷10人の価値があるんだ。村一つ皆殺しにしてでも欲しがる奴が出て来る可能性がある。

 だから、慎重にボカした事しか言えなかった。辛い思いをさせてごめんなさい」


 そして、重要なポイント、南の方に原材料があること、凄い高温が必要なこと、炭が多量に要ること、窯造りはそのほんの第一歩に過ぎない事を伝えた。


 三人ともあまりの話に絶句したが、厳秘を誓ってくれた。慎重に仲間を増やして必ず達成してみせる。


次で燃える縁談大作戦は区切りを迎えます。

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