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熊村戦士団の到着

 実は、旅は全て順調だった訳ではない。主にワシの練度不足で、何度か危険な目に合った。慌ててしまい魔力矢を全て外したケース、力の入れ方を間違えて戦闘中に弓の弦が切れたケース、重傷者を治癒する魔力が足りず帰還に苦労したケース、色々失敗する度に真剣に反省会が開かれた。


 トンビ村帰還後は、大鬼(おおおに)の間引きを兼ねて連携強化の実戦訓練を重ねる事になった。そうこうしている内に、村長から、5日後にワシの呪術士就任披露、連合成立及び作戦開始の3つを兼ねた祭を行う事が発表された。前世の暦に対応させると、大体5月下旬になる。


 発表の日時点では、トンビ村と熊村間の3つの繁殖地の大鬼残数は、近い方から0、1、2に減ったと評価されていた。そしてワシも治癒術がL2に上がっていた。


 トンビ村起点で合計4つの繁殖地を殲滅する予定であり、その一月か二月の間、村の人口は7割増しになる。全ての共有小屋を使ってもとても足りず、寝場所の確保の為に村人は通常の家族単位の寝起きから、何家族もまとめて寝起きする事になる。無論、男と女は別だ。その為、村人は祭までに引っ越す必要がある。それ以外にも、様々な無理が村人に伸し掛かっており、密かにワシは先行きを懸念している。


 ちなみにワシは、ぎっしり詰まって戦士小屋で精鋭達と寝起きする予定だ。


 発表の翌日、遊撃隊のメンバーと共に、戦士団を迎えに熊村に向かった。熊村からは35名、狼村と山猫村からそれぞれ5人の合わせて45名の戦士がトンビ村に来る事になっている。さらに、3村の村長とその護衛、スミレ坂とカワハミさんも移動して来る。


 スミレ坂は、予定通り追加の治癒要員としてトンビ村に滞在する。カワハミさんは、十分な数の戦士を出す代替としてタコ村に警報の魔法を敷きに行く。


 そう、その為分村を一時的に閉鎖する事を決断している。熊村の本気度を伺わさせる。


 なお、此れ程の人数だと目立つため、繁殖地単位で襲撃して来る事も考えられる。その場合、スミレ坂とカワハミさんは、護衛と一緒にトンビ村に駆け込む予定だ。その時の利便性を考えて、二人共、背負子(しょいこ)に乗せられての移動だ。


「とんでもない羞恥プレイだよw」


 何時もの如く、スミレ坂は、明るい笑顔で軽口を叩いた。彼女は、軽口や冗談を好む性格なんだな〜。


「とはいえ、ワシがお嬢様抱っこをする訳にもいくまい。諦めて、父親に甘えていなさい。来年には、親離れせねばならんのだから」


「お父さ〜ん、タツヤが虐めるよ。助けてよ〜」


「お前ら、人の背中で遊ぶなw もう少し真面目にしなさい」


 流石に、スミレ坂の父親が苦言をした。周りでクスクス笑う声が聞こえる。


 そんな感じで、気持ちをほぐしながら半ばまで来た時、偵察隊から二つ目の繁殖地に動きがあると連絡が入った。


 即座に迎撃態勢に移った。一人前の戦士のうち10人がスミレ坂とカワハミさんを連れてトンビ村に急行、狼村と山猫村の村長が中心になって一人前10人ずつで左右部隊を編成する。残りは、遊撃隊を中核に主力部隊だ。


 実は、主力部隊は、遊撃隊と熊村長(むらおさ)らを除いては、若衆か未成年者だ。その為、一回斉射した後は各々槍と斧で自衛するのみにしろと強く言い聞かせている。乱戦になって味方を射る者が出かねない。


 敵が見えて来た。20匹はいるな。繁殖地の大半だろう。ワシは主任務である大鬼を探した。見つけて70mで狙撃、上手く頭に当たった。目は潰したし、多分首も折れているだろう。実は、魔力矢は放った後でも若干操作が可能な分有効射程が長い。


 大鬼が倒れたのを確認して、左右部隊を含め精鋭達が弓の攻撃を開始、この距離では狙い通り当たらんが流れ矢で傷つく奴はいる。あれ? 指示を忘れて、矢を打つ若者がいる。馬鹿者が! 後で厳しく厳しく指導されるだろうな。


 50m、ようやく有効打で倒れる奴が出始める。しかし、何時も思うが矢を生やした状態で全く怯んだ様子がないのは何故じゃ?


 30m、もう無傷な奴はいないが、まだ10匹以上向かって来ている。若衆らが斉射した。近接戦で三対一程度の数の優勢は稼げそうじゃ。遊撃隊から一歩下がってワシも防御に専念じゃ。守っていれば左右隊が敵の後ろから(とど)めを刺すはずじゃ。


 そして、接敵から30数える間に、動く敵はほぼ居なくなった。同時に、逃亡した敵に向けて少数が掃討に移った。偵察隊による待ち伏せもある。逃げ切れるものでは無い。


 味方の若衆や未成年者に5人重傷者がいる。回復薬も使えそうに無い2名について治癒術で対応した。


 酷く苦しそうだが、矢も残り少ない。別の繁殖地からの再襲撃を想定すると魔力は温存する必要がある。また、これ以上の戦力低下も許容出来ない。緊急搬送も……可哀想だが諦めて貰おう。なに、死なせはせぬ。


 それから、懸念した再襲撃はなく、日没前には、トンビ村に到着した。


次は、祭前日です。

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