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タコ村にて

 その日、タコ村の総力を挙げたヒノカワ様歓迎の(うたげ)があった。新鮮な海産物に色々な酒、村の若い娘の唄と舞、更にはチヤホヤ酌をされて、ヒノカワ様はだらしなくメロメロになっていた。


 翌日、ヒノカワ様は昼過ぎまで起きて来なかった。仕方ないので、ワシは海を見ながら過ごした。ここは比較大きな湾になっており、浜に出ると同じ湾内のクジラ村とクラゲ村の見張り櫓が遠望出来る。


 海産物は、基本前世と同じだ。ただし、魚類型の魔物もいる。船を見ると向かってくる分、狩りやすく肉も美味いが、さすがに、女性が海に出るのは忌避されている。


「とはいえ、私が移り住む迄は、かなりの女が海を渡った。奴隷として売り飛ばされたんだよ」


 ワシにつきあっているカニハミさんがポツリと言った。


 数年に一度、遠くから大型の船が金属製の武器などを持ってやって来る。大体、鉄剣一本で奴隷10人分だ。他に売れるような物も乏しく、タコ村は、奴隷貿易で稼いでいたらしい。


「母さんが、奴隷として売られる者がどんな目にあうか心を痛めていてね。移り住むと同時に()めたんだよ」


 奴隷貿易の利をより西の村に奪われたが、それで良いと思っているそうだ。


「何時かは特産品を開発して馬を沢山手に入れたいね」


 家畜が乏しい事に気付いていたワシが、そう呟いた。


「変わった事を考える奴だな〜。馬など魔物に喰われるだけだぞ。

 さて、人払して話を始めるか」


 起き上がってきたヒノカワ様がそう声をかけてきた。結構スッキリした顔をしているが、解毒でもしたんだろうか?


「実は、用件の一つは君の実力を確認する事だ。しかし、それは昨日終わった。鑑定は、その点では凄く便利だ。タツヤくんは、此れから命を惜しみながら積極的に闘いなさい。そうすれば、いつか私の域まで辿り着くだろう。

 闘えば闘う程強くなる事に気付いているだろ?」


 首肯したワシに、ヒノカワ様は説明を続けた。

 ヒノカワ様が魔術に目覚めたのは、猪村が大規模な襲撃を受けた闘いの中であり、その後も闘うたびに強くなっている。そこで弟子を取って同じ習得方法を試したが上手くいかない。下手を打ってあっさり死ぬか、逆に戦士として大成し魔術に見向きしなくなる。


「結局、諦めるまでの15年間に23人もの若者を犠牲にしてしまった。それに比べると30人以上の魔術士を育てたイモハミ婆さんには……頭が上がらんな。

 そう、そのイモハミ婆さんから聞いているとは思うが、魔物は湧いてくる。用件のもう一つは、それに関係する。

 君らは、早ければ来年にも大戦(おおいくさ)を経験するだろう」


「そんな……また多くの者が死んでいくのか」


 意外な話にカニハミさんは悲嘆した。


 ヒノカワ様によると、この島では平均して一年に一回位、大規模な魔物の襲撃が発生する。これまで幾つかの手を試したが、発生そのものは経験上防げない。モグラ叩きのように、北を抑えれば南で東を抑えれば西でと際限が無い。

 そして、地域情報把握で得ている情報から、ヒノカワ様は次に何処で起きそうか、予測が出来る。


「結論のみ言うと、今回の大規模討伐の反動で、この周りで大戦が起きる時期が早まるんだ。言っておくが討伐を止めろと言う気はない。寧ろ、討伐するメリットのほうが高い。

 言いたいのは、安心せず戦力強化に努めろ、という事だ。中核となる妖魔王は、これまで通り私が狩る。それ以外の中位と下位の妖魔による被害を軽減する為に、戦士の数と質を出来るだけ高めて欲しい。それと、いざ事が始まった際に大連立が成立するのが早ければ早いほど被害は軽減するだろう。

 ああ、途中で寄ったからイモハミ婆さんには、話してある。

 さて、用事は終わった。タツヤ君は、1度私の術を見ておくかい? 帰りの飛行の魔力が要るから大規模なのは見せれんがね。魔力の流れと呪文だけでも見れば、何時か習得するキッカケになり得るよ」


「是非ともお願いします」


 滅多に無い機会だ甘えさせて貰おう。

 観たことの無い魔術を一通り披露してから、ヒノカワ様は文字通り飛んで帰って行った。


 その日は、そのまま泊まって、翌日から、クジラ村、クラゲ村に寄って、トンビ村に戻った。その頃には、代掻(しろか)きも終わりに近づいており、作戦開始日を何日後にするか、具体的議論が始まっておった。


次は、戦士の集結です。

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