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大鬼対策

 2日前の大鬼戦については、ワシ抜きで徹底的な反省会が開かれたそうだ。戦士長と大怪我をしたナガオノの二人が、それぞれワシに告げた。


「最も落ち度が大きいのはワシだ。あれだけ何度も痛めつけたんだ、大鬼が出てくる可能性は考えるべきだった。

 予想していれば、事前に手を打ったはずじゃ」


「私も油断が有りました。不覚を取ったせいでタツヤ様に負担を掛けてしまい申し訳ありません」


「その上で戦士長としてタツヤに言うことがある」


 戦士長から、大物との闘いの注意点、戦局の見方、回復薬の準備等、様々な話があった。あの時も実は、慌てる必要などない戦局であり、客観的に見ればワシ一人が勝手に恐慌に陥ったに過ぎない。その上で村としての決断の話があった。


「田植時期後、直ぐ連合作戦を開始したい。その根回しのため、ワシは暫く留守になる。悪いがタツヤには全作戦に参加して貰う。作戦終結まで、辛い日々を過ごす事になるが我慢して欲しい。

 此れからの数日、タツヤは大鬼を一撃で倒した技を磨いて欲しい。言っとくが、あそこまで馬鹿げた威力はいらん。頭が潰れれば、大鬼でも即死だし、手足の一本でも決定打になる。

 タツヤと各村から選抜する先鋭7人で遊撃隊を作る事を考えている。基本5人いれば、大鬼を打ち倒せる。加えてタツヤの護衛が2名だ。偵察隊で周囲を警戒した上で、大鬼を一匹ずつ釣って倒す。

 繁殖地を襲撃する際に最も危険な大鬼の数を先に減らす事が出来れば、犠牲者が出る確率は大きく減少する」


 は⁉︎ ワシ無茶重要な役割じゃないか? 治癒術士として同行するだけじゃなかったのか?


 ワシから、不満の気配を感じたのか、戦士長は続けた。


「タツヤから見ると、無茶振りにしか見えん事は分かっている。だが、ワシらから見ると、人生で初めて見出した巨大なチャンスなんじゃ。上手く行けば……妖魔らに怯えるこの生活を決定的に変えれるかも知れん。

 この数年でワシの娘らも次々家庭を持つだろう。この作戦を成功させれば、あの子らの人生は更に幸深いものになるだろう。タツヤお願いじゃ協力してくれ」


「嫌な訳じゃないよ。突然大きく話が変わったので驚いただけ。集団見合の話は、ワシが運んで来たようなもの、微力かも知れんが全力を尽くすさ。ただ、身体が小さくて持久力が少なめだから、余り無理は利かないかも知れない」


 ワシは、安心させようと協力を誓った。


 その後の10日程度は、村の周りで矢に込める魔力量の調整と訓練を続けた。魔力量の制限から回数が制限されるため、他に武器の基礎練もしているものの、若干時間に余裕が出来た。


 余った時間に道具のカシイワさんの所に行って、窯作りの計画を練ることにした。カシイワさんと話をした限りでは、土器も炭も露天で作るのが普通で窯は無いようだ。


 いずれ鉄を作るときの為に、窯作りの技術を少しでも進めておきたい。自分でやる時間が取れない以上信頼出来る人に頼むしかない。


 納得した感じはなかったが、ワシの頼みなので、田植え以降に色々試してくれることになった。ありがたい話じゃ。村で一番器用なカシイワさんなら、少ない情報から何か工夫してくれるだろう。

 幾つかの考古学上の知識を、さも自分が考えたアイデアかのように説明し、カシイワさんに詳細を考えて貰う事にした。


 訓練も順調で、矢に込める魔力の調整が出来るようになってから、近場で小鬼相手に試してみた。きちんと、隠れた位置から一挙動で正確に魔力矢を放つ事が出来た。小鬼は、頭が吹き飛ばされ即死した。


 一応、技として完成したか。


 その後は、各種状況を想定した応用動作の練習をして過ごした。連射で小鬼を制圧し大鬼へ魔力矢を叩き込む流れは正確に出来ねばならない。ついでに、槍や斧に魔力を流す事も出来たが、ワシの技量が低すぎる。実戦では意味が無いだろう。


 そんなある日、二カ月ぶりに熊村に向かった。


 スミレ坂やハヤドリは元気だろうか、話す時間は取れるだろうか?


 イモハミ婆さんらの出迎えを受けた後、直ぐに戦士小屋に向かった。実は、へばっていたが、恥ずかしい姿を見せる訳にはいかない。

 熊村長(むらおさ)、イモハミ婆さん、スミレ坂、熊村戦士長他3人の戦士、トンビ村戦士長他3人の戦士

 戦士小屋には上の見知った者以外に4人の戦士が居た。まずは、お互いの紹介を行った。狼村と山猫村の戦士長ら先鋭の戦士だった。


 無論、連合作戦の話だが、途中で狼村の戦士が口を挟んだ。


「話が本当なら、命を賭ける事に躊躇(ちゅうちょ)は無い。しかし、こんな幼子が言う程に練達とは、疑うようで悪いが信じられん。幾つか確認させて貰う」


 此処が勝負所だろう。ワシは挑発する事にした。


「無論のこと。日没までには時間がある。今から早速狩りに出よう。実戦で確認するのが最も早い」


「まて、タツヤは朝から歩き続けて来た筈だ。昼飯すらまだ、試すのは明日で良いだろう」トンビ村戦士長が待ったを掛けた。


「ワシの持久力を心配してくれるのは嬉しい。だが、だからこそ、今から出よう。これから、一日中闘い続けるような事もあるだろう。その時に騙されたと言われては、目も当てられぬ。

 何、大鬼に簡単に出会えるものでは無いし、熊村から別途、偵察隊を出して貰えば不覚をとる事は無かろう。ついでに、此れだけ槍や斧の名手が揃っているんだ。大鬼相手でも余裕で戦える」


「干し芋と偵察隊は直ぐに用意する。30数える迄に門に集合だ」


 熊村戦士長が話を切り上げた。皆、一瞬ぽかーんとした表情を浮かべたが、流石は歴戦の戦士、遅れるような者は居なかった。


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