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スミレ坂の婿探し

 その日の夕刻、呪術士達だけでなく、熊村の役付きも参加してささやかにお祝いの宴を開いてくれた。酒もあったが、流石にワシや10歳のサザナミにはくれんかったし、成人前のスミレ坂とハヤドリも最初の一口だけだった。

 しかし、宴もたけなわの頃、何故かスミレ坂がワシに絡んできた。


「私の最少年記録をあっさりと破られて、今日はこの胸が痛い。タツヤは私に何か言うべきことがあるんじゃない?」


 去年のアカユリ姉の狂乱を思い出して、ワシは固まってしまった。


「ごめんなさい(T . T)。僕、どうやって償えば良いの?アカユリ姉ちゃんみたいに嫌われたくないの」


 スミレ坂は、少しだけ考えて言った。


「そういえば、そんな話もしていたわね。でも私はタツヤの兄弟じゃないから、家族同士の仲直りは出来ないよね?

 そうだ、家族になれば良いのよ。タツヤ、私の所に婿入りしなさい。タツヤと私が夫婦になれば、凄い優秀な子供を沢山授かるよ。きっと!」


 そう言いながら、明るい笑顔をワシに近づけてきた。

 よく見ると、スミレ坂は案外美人で笑顔が可愛い。ワシは想像してしまい不覚にも真っ赤になってしまった。


「スミレ坂さんは嫌いじゃないけど、えーと、そういうことは、大人になってから……作法に則って……慎重に……」


 ワシは、何を口走っておるんじゃ⁇ドキマギしている内に、ハナハミが尻馬に乗って言った。


「スミレ坂さん、もう一歩よ!タツヤを悩殺して婿入りを誓わせてしまえば、熊村はもっと豊かになるわ。8歳差は大きいけど、特例でタツヤの成人を早める手もある」


 ワシは混乱してあたふた挙動不審になった。そして、誰かが「プ」っと吹きだすのをキッカケに、皆が大笑いを始めた。


 ワシはようやく、揶揄(からか)われた事に気が付いた。


 笑いをかみ殺しながらスミレ坂が謝ってきた。


「ごめんね。タツヤの幼い面が可愛いくて、つい調子に乗ってしまった。あんまり怒らないでね。

 個人的には、タツヤは優良株でつばを付けるのは有りなんだけど、開眼した者を他の村に出す事はあり得ない。だから、始めから考慮外の組み合わせなのよ。

 それと、胸が痛いというのも嘘だから。タツヤが来てから2ヶ月間、私には心の整理をする時間が十分あった。今は、タツヤの才能を純粋に祝福しているよ」


「スミレ坂は、歳下の男が好みなのかい」


 機織り小屋のリーダーが、不意に声を掛けた。


「それなら、遠慮せずに選り取り好きなように選んで良いんだよ」


 今度は、スミレ坂の番なのか?


「うーん。来年成人でそろそろ目星付けなきゃとは思うんだけど、村の男は知り過ぎて……イマイチ魅力を感じないのよ。

 燃えるような恋をしたいというのは、贅沢過ぎるとは分かっているし、私は自分で決めなきゃいけない立場だから、まごまごしてると行き遅れる事も分かっている。

 だけど、踏ん切りがつかない。

 いっそ、村長(むらおさ)さんが指名してくれないかな?何ならくじ引きでも?」


 いや?案外真面目な話のようだ。


 村長のブナカゼさんが渋い声で、応えた。


「この村の今一番の重大事は、スミレ坂が真に心許せる婿を迎える事だ。くじ引きなどとんでもない。魅力を感じない者を無理にあてがう事もあり得ない。

 同世代の村の男が頼りなく見えるのは判るし、スミレ坂はダメ男は好きじゃないのも分かっている。

 他の村から良い男を探したいなら、ワシらが全力で応援してやる」


 激しく真剣な話のようだ!


「それこそ非現実的な話、遠い村の見たことない男を噂一つで夫に選ぶなんて出来ない。それに、どの村だって簡単に男を婿に出せるはずはない。治癒小屋に来る何倍もの男が闘いで喪われている。戦士の確保に比べれば、私の色恋なんて、チリのような話だ」


 何故か、村長の矛先がワシに向かった。


「タツヤ、トンビ村では良い男は居ないのか?」


 は?良い男?どんな基準?というか声が怖い。何か応えなきゃ。


「えーと、25歳以上だと大戦(おおいくさ)の影響で男は少な目です。でも、嫁が複数いるのは村長含め5人で、35から25歳の間で未婚の女は2人だけど、亡夫との間の子供がいるので再婚する気はないと思う。

 24から20の間だと、未婚者は居ない。19から13の間なら、男9人女11人だけど……はっきりした相手が居ないのは、男2人と女2人で同数、ただあの組み合わせは無いから、下の世代から選ぶか他村と嫁のやりとりするんじゃないかな?

 ウチの兄貴も13歳だけど、好いた娘がいるから、17歳になったら結婚すると思う。

 むしろ、ウチの村の問題は、人口増加だと思う。田畑を拡げる為に防衛線をどうするか?村長らが悩んでいるのを良くみる。このまま、10年無策だと不作一つで大きなダメージが出るような状況になる」


 そんな回答は期待していなかったのか、村長は苦笑しながら続けた。


「良くスラスラ言えるもんだ。その歳で村人全員分(そら)んじているのか?まあ、それでスミレ坂の婿を募集したら、何人名乗りを上げる?」


「嫌な話しだけど、13歳まででも5人はいるね。相手が決まっていない2人に加え、条件に飛びつくスケベェが直ぐに3人は思い浮かぶ。でも?スミレ坂の好みの男が居るかな?熊村に比べ男の質はそれ程違い無いよ」


 スミレ坂は、恥ずかしそうに俯いた。ヤバイ!チョット調子に乗り過ぎた?


 しかし、村長は止まらない。


「一度、トンビ村に集団見合いでも提案してみるか?スミレ坂の事が無くても、血の交わりを深める事は重要だな」


「もうやめて〜」


 居たたまれなくなったのか、真っ赤になったスミレ坂が飛び出して行った。


「生意気言っても、年頃の娘じゃな」


 イモハミ婆さんの総括に場は大いに盛り上がった。

 ゲゲ、ワシ明日なんて言って謝れば良いんだよ。


ハーレム要素を上手く描く自信が無いので、スミレ坂さんは、長年の良いお友達というか『同士』にしかならない予定です。


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