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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編闇鍋

恋をしたゴブリン

作者: トカゲ

すごい がんばって かいたよ

 とあるゴブリンが1人の少女に恋をしました。


 だけど、ゴブリンはモンスターです。逆立ちしたってモンスターであるゴブリンは人間に受け入れてもらえるはずありません。


 それはゴブリンが1番良く分っていました。


 「人語を話す事も、理解する事もできないお前が人間に恋をするなど、夢を語るのもいい加減にしろ。」


 仲間のゴブリン達はそう言って彼を笑います。

 でも、仕方が無かったのです。だって、もう好きになってしまったんですから。

 彼にとってゴブリンとか、人間とかは関係ありませんでした。


 ゴブリンは次の日から、人の言語を理解しようと勉強を始めました。

 友好関係にあるホビット族の集落に向かい、ホビット族の手伝いをする代わりに人語を教えてくれないかと、そう彼はホビット達に頼み込みます。

 最初は断っていたホビット達も、彼が余りに熱心に頼むものですから、狩りの手伝いをする条件で、人語を教えてくれる事を約束してくれました。


 ゴブリンという種族は頭が悪く、不器用な種族です。だけど、素早く動くことは出来ました。素早く動けるゴブリンは狩りで大きく活躍しました。

 ホビット達は彼の狩りの上手さに驚き、沢山の収穫に喜びの声を上げています。


 ゴブリンは誰かに喜ばれるという経験がなかったので、それがとても新鮮でした。喜ぶホビット達を見ていると、自分まで嬉しくなってきます。それはゴブリンにとって、初めての経験でした。


 1年が過ぎ、ゴブリンが人語を何とか理解できるようになってくると、彼の体に変化が訪れました。なんと体が2周り程大きくなったのです。


 ホビット達はその変化に驚き、彼を鏡の前に連れて行きます。

 そこでゴブリンも自分の変化にようやく気付きました。よく見ると、凶悪そうなゴブリンの顔が幾分か知性のある感じになっているように見えなくもありません。


 「まさか、進化するとは思っていなかったよ。」


 ホビット達はそう言って「おめでとう」と拍手をしてくれました。

 そう、彼はホブゴブリンへと進化していたのです。


 ホブゴブリンはホビット達にお礼を言って自分の住んでいた集落に戻りました。

 だけど、いくら探しても集落が見つかりません。


 困っている彼を見かねて森の妖精が教えてくれます。


 「あなたがいた集落は、ダイアウルフに襲われて、無くなっちゃったわよ。」


 それを聞いてホブゴブリンは頭が真っ白になりました。

 自分が1年間、ホビット達にお世話になっている間に仲間はダイアウルフに殺されていたのです。


 「あなたは運よく生き残ったのね。でも、ダイアウルフに見つからない内に早く逃げた方が良いわ。」


 妖精はそう言って何処かに行ってしまいました。

 ダイアウルフは強いモンスターです。ホブゴブリンに進化した自分でも勝てない事を彼は知っていました。


 ホビット族は人語以外にも彼に様々な知識を与えてくれました。

 だから、ダイアウルフがどれだけ恐ろしいモンスターなのかも彼は知っていたのです。


 「でも、このままだったら彼女達も襲われちゃうよ。」


 ホブゴブリンはダイアウルフが人間を好んで食べる事を知っていました。

 ダイアウルフは凶暴ですが聡明です。人間の集落を直接襲うような危険な真似はしないとは思いますが、外に出た人間には容赦なく襲い掛かるでしょう。


 ホブゴブリンは覚悟を決めました。


 「強くなろう。僕が彼女を守るんだ。」


 ホブゴブリンは次の日から特訓を始めました。

 進化して、力も強くなっていたので大きな丸太を武器に素振りの練習です。

 だけど、武道の心得なんて彼にはありませんから、どうしたら強くなるのかもイマイチ分りませんでした。


 途方に暮れていると1人の冒険者がやってきます。

 冒険者はホブゴブリンを見て、剣を抜き戦闘態勢に入りました。


 「待ってくれ。僕は人間と戦う気はない。」

 「ホブゴブリンが喋っただと!?」


 ホブゴブリンは冒険者をみて、彼に剣術を習おうと考えました。

 だけど、ホブゴブリンがいくら必死にお願いしても冒険者は難しそうな顔をするだけで、剣術を教えてくれようとはしません。


 「何でお前はそんなに剣術を学びたいんだ?」

 「守りたい人がいるんだ。だけど、今のままじゃ守れない。」


 それを聞いた冒険者は少し考えて、「基礎だけだぞ」と言いました。

 冒険者が教えてくれたのは剣の振り方だけでしたが、それだけでもホブゴブリンには未知の技術です。ホブゴブリンは必死に覚えようと頑張りました、


 最期に冒険者はホブゴブリンにこん棒をくれました。


 「剣は流石にやれないけど、代わりにこれをやるよ。誰を守るのかは知らないけど、これでしっかり守ってやんな。」


 そう言って冒険者は帰っていきました。

 ホブゴブリンは冒険者が教えてくれた剣術の基礎を毎日のように行い、強くなる努力を惜しみませんでした。


 それから数ヶ月が過ぎた頃、ホブゴブリンが眠りから覚めて立ち上がってみると、視界がいつもより高くなっていました。

 不思議に思ったホブゴブリンは近くの泉に向かいます。


 水面に映った自分の姿はまるで人間のように変わっていました。

 そう、ホブゴブリンはまたしても進化していたのです。


 オーガへと進化した彼の容姿は人とほとんど変わりませんでした。身長は170㎝程度まで伸びて、筋力も上がっているようです。


 人間と違う所と言えば、その緑の肌と、額の角くらいでしょうか?

 オーガは自分から溢れ出る力を感じ、これなら彼女を守る事が出来ると思いました。


 その日の夜、彼女がいる集落の方から大きな音が聞こえてきました。

 外に出て見てみると、集落が燃えているのが見えます。


 オーガは急いで集落へ向かいました。

 そこには地獄のような光景が広がっていました。


 集落にいたのは沢山のダイアウルフの群れです。ダイアウルフ達が人間を襲っています。

 オーガは集落の人達を助けようとしますが、集落の人達は彼が現れた事によって更に混乱してしまいました。


 オーガという種族は基本的に凶暴で、血と肉を好むとされている種族だったのです。

 そんな存在が現れたらこうなるのも仕方がありません。

 オーガはそれでも必死に人間を助けようとします。


 何とかダイアウルフの群れを追い払い、ホッと一息を吐いた時です。

 黒いダイアウルフが現れました。ダイアウルフの群れの長なのでしょう。

 強力な力を感じさせる黒いダイアウルフはオーガを無視して人間を襲い掛かりました。


 オーガはそんな中、自分が好きになった少女が倒れている所を見つけます。

 どうやら少女は足を挫いていて、歩けないみたいです。

 黒いダイアウルフが少女に喰らい付こうと大きな口を開けました。


 グシャ


 嫌な音がしました。黒いダイアウルフはニタリと笑います。だけど何か変です。 柔らかい少女に噛みついたはずなのに何故か噛み切れない。

 

 それもそのはずです。黒いダイアウルフは少女を助ようとしたオーガの腕に噛みついていたのですから。

 黒いダイアウルフは獲物を横取りされたと思ったのでしょう。怒って力任せにオーガの右腕を喰いちぎりました。

だけど、その時オーガの左手が唸り、黒いダイアウルフを殴り飛ばします。


 ゴシャッ、という何かがつぶれる音を出しながら黒いダイアウルフは地面に転がり、動かなくなりました。


 黒いダイアウルフが動かなくなったのを見て安心したオーガは少女が無事なのか心配になりました。

 少女は多少の擦り傷はあるものの、大丈夫そうです。

 オーガはホッとしました。


 少女がオーガの方を見ています。

 オーガは少女が自分を見て恐怖で体が震わせているのが分りました。


 「ごめんね。もう大丈夫だよ。」


 オーガは少女にそう言って集落から出ていきました。


・・・


 10年後


 「伝説ではこの辺りには人を助けてくれるオーガが出るんだって。」

 「何バカな事を言ってるんだ。さっさと行くぞ。」


 あれから集落は大きな街になり、魔物避けの壁も出来てモンスターの被害は減りました。

 集落を救ったオーガの話は吟遊詩人によって物語になり、長く語り継がれて行く事になります。


 この事を彼が知った時、どんな顔をするでしょうか。

 願わくば笑顔であってほしい物です。




最初はゴブリンと少女の恋愛を書こうと思ったのに。

恋愛カテゴリに殴りこむはずだったのにな。


自分の力不足を痛感しました。

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