003 治療しましょう、記憶を見ましょう
今回は短いです
ーー医療部隊長side
外衛騎士の下っ端の子が連れてきた5人の子供達
樹海にいたって話で、やせ細った体は痛々しい
質問をすると『さあ』しか言わないからちょっと脅したら今度は『解らない』
記憶喪失かもしれない
外衛部隊長のアームボルトと話してるとドサッていう音が五つ連続で聞こえた
慌てて振り返ると子供達は糸が切れた人形みたいに眠っていた
「あらあら・・・疲れたのかしら、医療室に連れて行くわ、記憶を見るのはそこでしましょう」
「ああ」
私の言葉に今まで喋らずに子供を観察していた隊長達も立ち上がった
私は青い男の子を抱き上げる、その重さはびっくりするくらい軽くて・・・
もしこの子達になんの思惑も無いとしたら・・・!
「これはちょっとまずいわね・・・」
「だな、軽すぎる」
「おいおい、この赤髪の男の子怪我だらけだぞ」
「治療と栄養の点滴と・・・」
やらないといけない事がこれから沢山あるわ!
○○○
「とりあえず全員ベッドに寝かしといて?用意してくる、記憶の方もお願い」
「分かった、呼んでくる」
魔法部隊隊長のルンドタイトが部屋を出て行った
彼が呼びに行ったのは魔法部隊副隊長のシーナちゃん
彼女が開発した魔術、それは他人の記憶を全て見る事が出来る危険な物で
普段は厳重に封印されていて、取り出せるのは隊長、副隊長格、魔王様のみ
やっぱり開発者だからかシーナちゃんが一番上手いのよ
「とりあえず治療をするから服を脱がせましょう」
部下数人と一緒に子供達の服を脱がす
よほど疲れていたのか全く起きる気配は無い、子供曰く召喚獣達が凄い威圧感でこっちを見てるけど、
危害を加える気が無いのが分かってるのか見るだけ
つまり『怪しい事したら潰すぞごらぁ!』って所かしら
そんな事を考えてる間も手は青い子の服をそっと脱がせてたのだけど・・・
「これは・・・」
酷い以外言う事が無い位酷い
体中はアザだらけ、切り傷も無数にあるし、首には手形
頭には包帯が巻かれていたけど、包帯に止血の魔法でもかかってたのか取った途端に血が流れ始める
アザからして肋骨も何本か折れてるんじゃないかしら
部下達も顔をしかめている
首に着いた手形から、やったのは大人であるのは一目瞭然
「どうだ、リーン」
「酷いの一言よ、それしか言えないわ、アザ・切り傷・絞め跡・頭も割れてる、肋骨も折れてるわ
普通の子供なら痛みで発狂するレベルよ」
「だな、これは流石に酷い」
「誰かが簡単な手当はしてたみたい、ただかなり乱雑なのは確かね
平然としてたのはたぶん痛覚がほとんど麻痺してるからだわ
とりあえず、入院よ!完治にはどれくらいかかるかは詳しく検査しないと・・・」
この酷さだと、むやみに治癒魔法をかける訳にもいかないのよね
体の中に異物があるとそのまま残っちゃうし・・・
とりあえずは、少しずつ体の回復力を増長させていくのよ
「連れてきた」
「はいはーい!シーナちゃんですよ!記憶を見たいのはどの子?」
「そうね・・・私の所は終わったからこの青い子をお願い」
「はーい!よっしゃやるよ♪」
シーナちゃんがランセ君っていう青い子の額に手を当てて目を閉じる
それに合わせて私達の頭に映像が流れる
「酷い・・・」
「こりゃあ記憶喪失にもなるだろ」
「大人でも発狂するかもなぁ」
それは子供にはあまりにも残酷で、ただお互いだけが信頼出来る対象だった記憶
酷いの一言で済ませて良いのかも解らない
「う・・・え?」
「あら、起きたのね」
「・・・お姉しゃんどうして泣いてるの?」
「そうね、あまりにも酷い事を見てしまったからかな」
「・・・僕等の記憶を見たんだ」
「っ!?どうして」
「だって、たぶん怪我を治しゅ所?にいるのに酷い事でなくなんて普通無い
僕は知らないけど、消えるランセが記憶は封印したって」
「そう・・・」
新しく人格を作ったのね、今まで辛い思いをしていたランセ君はもういないのか
どうやら他の子供達も起きたみたい
ガラッ「お前等~」
「え?!魔王様!?」
「どうしてこちらに・・・」
「兵士から子供を五人拾ったと聞いたんだ、見に来た」
「呼んでくだされば」
「いる場所が医務室という事は怪我をしてるんだろ?ならこっちから来た方が良い」
「それはそうですが・・・」
魔王様、レイエンダ・サタナス・ミソロギア様
漆黒の髪に金色の瞳が輝くお方
私達の主
「ふむ・・・えっと右から順番に敬語とか無しで自分の口調で自己紹介してみろ」
「ルブルだ」
「ランセだよ」
「リユセです」
「ローザや」
「ノーチェだよ~」
「俺はレイエンダ・サタナス・ミソロギア、この城の主だ、魔王様とでも呼んでくれ」
「「「「「魔王しゃま」」」」」
「・・・何だこの可愛い生物!」
あらやだ、魔王様が壊れちゃったわ~、確かにここ最近書類処理ばかりで疲れてるみたいだけど
実は可愛い物好き?
まぁ?確かに子供達は揃いも揃って可愛いけども!
「お前等、この子達をこの城で保護すんぞ?」
「へっ!?でも、何故・・・」
「俺の癒しが足りん!」
はぁ・・・
「お前等、ここに住むか?」
「良いの?」
「ああ」
「「「「「よろしくお願いしましゅ!」」」」」
こうして、記憶喪失の子供五人が魔王城に住む事になった
魔王様、兄貴気質のイケメンさん