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フレイの森のお医者さん  作者: 夢育美
二章 世界樹
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八話 渡りネズミの鉛刀一割

 サランディアさんが指示を出して、討伐隊の結成は瞬く間に終わった。彼のイケメンは冬の神殿で警備隊長を務めていて、今回の作戦は彼の指示で行われる事になった。

 ちょうど王都から戻ったアルフェルと、ボクたちも後方支援役で加わる。実戦では役に立てないと思うけど、ボクとプリムラには移動手段、アルフェルにはユールさまという空からの“目”がある。


「ホーッホウ、久しぶりの出番じゃと思えば、ずいぶんと物々しいのぉ」

 この頃ユールさまを見かけてないなーと思ったら、アルフェルと一緒に王都の渡りネズミを調べていたそうだ。さすがフクロウ、ネズミの事には詳しいらしい。


「二人の話を聞く限り、その魔物は渡りネズミに『魔』が憑いたものみたいね~」

 溝鼠の親分みたいなイメージでいたけど、渡りネズミってあんなに大きかったのか。あれが群れで食料襲うとか、ちょっと洒落にならないんでは?

「タヌーちゃん、こんにちは~。ふさふさした尻尾が可愛いね~」

 背中を撫でられて喉を鳴らす様子は、まるっきり人に飼われている犬にしか見えない。それでも犬より丸い耳と口元に覗く鋭い牙が、野生の獣を感じさせる。


「今回は来ちゃダメだよ? タヌーはまだ怪我が治りきってないんだから、大人しくお留守番すること。エフィル、と一緒にいるんだよ」

 ちょっと寂しそうな様子に後ろ髪引かれながら、利口だから分かってくれるとエフィルさんに後をお願いした。基本可愛い物好きなエフィルさんは、タヌーを抱き上げてさっそくモフっている。


 追討に出るのはボク、プリムラとアルフェルを含めて総勢で十五名。本来群れをなすネズミが魔物化した事で、ボクたちが見かけた五匹以外にもいると予想された。ある程度の人数で同時に山狩りしないと、知能のある魔物は散ってしまう。

 悪い事にボクたちが戦って時間が経っているので、移動するか分散するか、どちらにしろ元の草原地帯から離れている可能性があった。


「ごめんなさい。ボクの報告が遅かったから……」

「いや、気にしないで下さい、リーグラスさま。群れになる獣が魔物となった場合、多くは移動しながら他の生物を襲います。山狩りとなるのは想定の範囲ですよ」

「大丈夫よリィ、わたしとユールさまで必ず見付けるから。二人はけが人が出た時に備えて、前に出すぎないでね」

 承知しましたぜイケメンに姉御。


 全員が集まった所でサランディアさんから、現地に着いてからの行動を指示される。作戦前指示というやつかな。何か以前にも、こんな場面に出くわした事があるような、無いような……

 すぐにトゥイリンへ向かう事になってボクたちの出番が来た。こんな大人数は初めてだけど、ドライアードの技能に人数制限は無かったはず。プリムラと3mくらい距離を取って、同時に森に向かって右手を向ける。

 呪文のようなものは無い。派手な動作も無い。息を合わせてトゥイリンへ向かう街道の、森とそれ以外を隔てる最も外側の樹へ向けて、心の中で声を掛ける。


 道を空けてちょうだいと。

 それだけでズズッと低い音を立てながら、森の木々が左右に分かれて目の前に真っ直ぐな道が現れた。アルフェルは何度か見た事があるはずだけど、他の騎士さまたち同様驚いていた


「初めてじゃないんだけど、目の前で森が割れるのはびっくりだね~。ナリーも見るたびに驚くっていってたよ」

「……これが噂に聞いていた、ドライアードの固有技能ですか。初めて見ますが予想以上にすごいものですね」

 二人きりの時でなければ、緊急の要件以外に『森の小道』は使わない。これはエフィルさん、セレヴィアンさんと一緒に決めたルールだった。


「それでは皆さん、ボクたちが先に行きますので、後を付いてきて下さい」

 プリムラと二人で道の両端を歩いて向かう。左右に並んだ壁のような樹の幹が、視界を完全にふさぐ程密集している。理屈はさっぱりだけど、樹と樹が互いの空間を押し潰すように近付いていた。

 物理的な距離は1kmくらいと思う。けっこう早足で10分ほど黙々と進むと、森の終わりが見えた。森から出た所はもう街道脇の草原地帯だ。全員が通り過ぎるまで待ってから、今度は左手を向けて心の中で、道を閉じてと念じる。

 目の前で森の中の道が閉じて、元通りの樹が生い茂る東部の森林に戻った。


「この辺りは見覚えがありますね。馬車でなら何度か通った事がありますが、いやはや、本当に馬車で半日の距離を……すごいな」

 口々に驚く騎士さまは、一様にボクとプリムラを見ていた。同じ顔をした緑の髪の少女でしかない、一見するともの珍しい以外に特徴の無い存在。

 それが間違いであると、常識をねじ曲げる存在だと知った戸惑い。皆の顔に浮かぶのはそんな感情に見える。何人かはその結果が引き起こした、過去の悲劇を思い出したのだろう、悲痛な表情も浮かんでいた。


「はーい、みんな呆けてないでしゃっきりする!」

 プリムラがパンパンと手を叩いて、本来の目的を促した。

「みなさーん、ボクたちのことは内緒ですよ~。ばらした人は、森から出られないようにしちゃいますからね?」

 ちょっとおどけた感じで言うと、軽く笑い声が起こった。すぐにサランディアさんから指示が出て、三人一組で周囲に散開する。


「ユールさま、お願いね」

 ふぁさり、重さを感じさせない静かな羽ばたきで、フクロウの姿が空に舞う。ただのフクロウならまだ眠っている時間。召喚精霊とはいってもユールさまも多少は影響を受けるらしい。


『わしだけならモスの刻に探す方が、冴えるんじゃがのぉ~。鼠どもも夜の方が活発に動き回るし、音も追いやすいわい』

「ユールさまなら探せるでしょう? アルヴヘイムで一番の目と知恵に期待してるよ~」

『やれやれ、精霊使いの荒いお嬢ちゃんじゃの』

 言葉の割に楽しそうな雰囲気のアルフェルたち。召喚師として順調に絆も深まっているように思う。お祖父ちゃんと孫娘って感じで、こっちもほのぼのした。



 ユールさまには上空から探して貰いつつ、ボクたちが最初に戦った小川に向かう。騎士さまたちは全体としては広がっているけど、視界から消えない範囲にとどまって周囲を探索している。

 あまり効率が良いとは思えない探し方には理由があった。


「魔物は魔物に引き寄せられるのです」

 ボクたちは殺したネズミを埋めてしまった。魔物を殺した時の正しい処置は、死体を焼いてしまう事。二人ともそれを知らなかったので、他の場合と同じように埋葬してしまった。まずはこの間違いを正すため、一度埋めた死体を掘り出して燃やさないと。

 それに死体を目当てに魔物がやってくる可能性があった。


「魔物は死んだ魔物を食べようとします。積極的に食べたがると言ってもいいでしょう。理由は分かりませんが、他の魔物の肉を食べる事で、自身の能力が上がるようなのです」

 アルフェルもその事実は知らなかったらしく、驚きを隠せないでいた。もちろんボクもプリムラも知るはずも無い。


「我々神殿騎士は魔物を相手にする機会も多いですからね。事実は報告していますが、それを上でどう扱うかまでは分かりません。神官の皆さんには教えない理由があるのかもしれません」

 どんな理由か分からないけど、なんとなく嫌な感じがする。魔物に関しては知らなければいけない、重大な秘密がある? そんな事を考えているうち、ネズミを埋めたはずの場所に来た。

 辺りには荒れて所々草の千切られた、掘り返されて穴だけになった地面があった。


「あ、遅かったんだ……」

 取り返しの付かない失敗をしたと悟る。このタイミングで空からユールさまも戻ってきた。

『ホホゥ、何やらまずい状況じゃぞ、ここから南の方角に大岩があるじゃろ? その先の林に沼があるんじゃが、そこに犬のような魔物がおったぞ』

 ふわっとアルフェルの頭の上へ。それが当たり前であるかのようにユールさまが留まる。重さはほとんど無いからいいけど、これはうざいよなぁ。すっかり諦めて文句も言わないのは立派だ。と思ったら、プリムラが怒った。


「ユールあんたねぇ、いいかげん乙女のつむじを踏みつけるのやめなさいよ」

『ホーウ? 何を言うんじゃ、ここは心を落ち着け、心身を美しくするツボがあるんじゃぞ? むしろ感謝してほしいわい』

「そういうこといってんじゃ無いわよ、見た目が悪いでしょ! とにかく退かないなら蹴るわよ!」


 いやいやプリムラ、怒ってるのは分かるけど乙女が人前で、見えちゃいけない物が間違いなく見える格好で蹴るのはダメでしょ。

 ついでにユールさまの『ツボ』にも突っ込むべきか悩むな。言葉としてはありなんだろうけど、治療院で一度もそういう話が出なかったし、神経節やリンパ腺の事を知識として持っていなかった人たちがツボを知ってるのかな?


「プリムラさんも落ち着いて。アル、その精霊が何か見付けたのだろう? 急いで案内してくれないか」

「あ、はい、お兄さま。あの大岩の向こうだそうです。犬のような魔物だそうです」

 ノームの時もそうだったけど、プリムラはお爺ちゃんキャラ? なのか偉そうな精霊、なのかに妙に噛み付く癖があるなぁ。

 犬のような魔物か。ボクたちが戦ったのはネズミだった。大きかったけどあれはネズミで間違いない。犬? まさか風狸が魔物になったのか? ネズミよりは危険そうだけど、子供二人が相手じゃないし大丈夫かな。


 騎士さまの組は弧を描くように一定間隔に、ボクたちは先頭のサランディアさんの後を走って追いかける。もちろん案内役で先を飛ぶのはユールさまだ。

 大岩を過ぎて林の手前に着いた時に、一種異様な気配を感じた。なんだろう、山の中で見付けた倒壊寸前の廃屋を見た時のような、あるべきでない物がそこにある異質な気配。この感じは、前にも一度だけ出会っている。


「これ、あの時のクレイゴーレムみたいな気配だよね? まさかまた?」

「それは……無いんじゃないかしら。ユールが犬の魔物っていってたわよね?」

 あ、そうだった。クレイゴーレムなら犬とは言わないか。プリムラって意外と冷静だな。


「リーグラスさま、プリムラさんとアルもここでお待ち下さい。私たちが先に行きます。我々だけで対処出来ない相手の場合は、すぐに指示しますから逃げて下さい」

 涼しい表情は崩れていなかったけど、サランディアさんの声には明らかな焦りと緊張がある。これは、予想以上にまずいやつがいるみたいだな。このまま行かせて平気なのか? アルフェルの身内だし『お兄さま』だし、正直悩む。

 役に立ちそうな魔法は……ダメだ、何も思い付かない。身体強化の魔法は全て神聖魔法の領域。今のボクには使うことはおろか、唱える事すら出来ない。


「各自抜刀して周囲を警戒! クルボルンとリンサーは俺に続け!」

「了解!」「分かりました!」

 リンサーさんが盾をかざして、何かの呪文を唱えた。三人の正面に大きな魔法円が出現して、それを通り抜けて先へ進む。緑の蛍光色で描かれた魔法円が、身体にまとわりつくように次々と三人の身体に吸い込まれて消えた。

 サランディアさんたちは辺りを警戒しながら、林の中に向かって慎重に進んでいった。さっきのが身体強化の神聖魔法なのか。発動に必要な紋章はいったいどこに……


「盾の裏に描いてあるんだって」

 同じ疑問を感じた事があったのか、アルフェルが説明してくれた。今までにも何度か神殿騎士と行動を共にして、こう言う場面も見ているらしい。

「心配しないで、リィ。お兄さまも他の騎士さまも、びっくりするくらい強いから。滅多なことでもない限り、何も危ないなんて……」

 言い終わるかどうかの、最後の一言が別な声にかき消された。

『な、なんだこいつはぁ!?』『うわぁぁぁ!!』『二人とも下がれぇ!』


 え? と驚くアルフェルの瞳には、ボクの見ている光景と同じものが見えているのだろう。林の中に入った三人が、文字通り飛び出してきた。いや、飛び出したのでは無くて、“飛ばされて”来たようだ。

 後を追うように黒い鞭のような何かが、三人を追って伸びてきた。それを盾と剣で防いで、切り付けて弾いて、また別の物が伸びてきて切り付ける。

 触手と表現するのが妥当なそれは、見た目に反して軟体ではなく、鋼鉄の刃を軽くあしらう強度があった。


「全員下がって! こいつは普通の魔物じゃないっ!!」

 言われた通りに距離を取ると、三人もボクたちを守るように目の前まで戻ってきた。さっと見た所、服の破れが何カ所かあるだけで、怪我をした様子は無かった。ホッとしたのも束の間、林の中から異様なものが姿を見せた。


「うわぁ、遊物Xだコレ!」

 その姿は、宇宙から飛来した謎の異種生命体に寄生された犬のようだった。特殊メイクとグロさで話題となった、SFホラー映画の一幕を見ているような気分。

 肉色でない分マシかもしれないけど、身体のあちこちから細く伸びた触手が、ウネウネとのたうち地面を叩いている。それは身体から自由に出入りして、伸びたり縮んだりするようだった。

 黒い触手犬、一言で表すならそんな化け物が目の前にいた。


「いやぁぁぁぁ!」

 プリムラが絶叫してしゃがみ込む。てっきりキモい、何あいつ? くらいの毒舌を聞けるかと思ったのに、怯えてボクにしがみついてしまう。がたがたと震える程に動揺して、掴まれた足が痛い程だ。


「ど、どうしたの!? 落ち着いて!」

 落ち着けないのは分かっているけど、こう言う以外に言葉を知らない。トラウマスイッチを押したのは、間違いなくアイツだろう。

 勝ち気で、生意気ばかり言って、遠慮も知らなくて。でもいつだって優しくて、こっそりボクを気にしてくれる。


 そんな大切なプリムラを、こんなに怯えさせたやつは、お前かこの化け物ぉ!


 頭の隅がチカチカする感じ。この感じは前にも一度あった。激情に任せちゃダメだ、クールになれリーグラス、正面から戦って勝てる相手じゃない、好機を掴め。

 もはや無意識になった『写真』を発動する。モニターのコマンドに、新たな項目が出現していた。

 それは「分析」。アイコンは虫眼鏡のマークなので、一見すると検索機能に思える。でもHelp表示で分析となっていた。これはいったい……「Info」とは違う機能なのか?

 試してみようと思った所に動きがあった。しばらくこちらを睥睨していた魔物が、プリムラの声に反応したのかこちらに突っ込んできたのだ。


「巫女さまたちを守れ!」

 聖人、と言わない所に好感が持てる。さすがイケメン、女性は平等に守る対象となる。

 盾を構えた騎士さまが次々に集まって、ボクたちの前に密集形態の盾を作った。魔物も気付いて次々と触手を飛ばして来るも、盾と剣で上手く弾いている。これなら余裕があるかも……

 急いで「分析」を実行すると、今までと違う砂時計のアイコンが表示された。


『分析対象をターゲットエリアに指定して、もう一度ボタンを押して下さい』


 言われた通りにモニターの中央、5分の1程の大きさに表示された、緑の枠線に収まるように位置を合わせて、もう一度「分析」アイコンをクリックする。


『分析を開始します……


 ……対象を認定。第二種危険魔類、「オルトロス」と特定。直ちに排除して下さい。

 

 ・背中に不可視の自由に曲がる棘を持ちます。接近戦は避けてください。

 ・背後に弱点はありません。触手の可動域のため注意して下さい。

 ・触手は硬質で伸縮自在、最大12m伸びます。切断には風属性が必須です。

 ・右目の後ろに魔核を持ちます。風属性が有効です。

 ・無限に近い再生能力があります。首を切断すれば頭部以外の再生は停止します。

 ・レアドロップアイテム:黒いたてがみ



 ナンデスカ、コノバケモノハ。

 それよりも、なんですかこの機能は。究極攻略本かよ!!

 でも便利だしこの際ありがたいよ! ついでにボクはまだ、使える風魔法無いよ!


「アルお姉ちゃん! 風属性の魔法使える?」

「え? わたしはまだ……ユールさま、風魔法で攻撃出来る?」

『ホーホゥ、あやつには風が効くのか。ならわしの出番じゃのぉ』

 ユールさまはなぜ? とか、どうやって知った? なんてよけいな事は聞かない。何もかも分かっている表情で、地を這うように低く滑空して近付く。


「背中の上には見えないトゲがあるの! 上はダメだよ!」

『ホーゥホッ! 了解じゃぞ~。<野分き>連発じゃぁ』

 直前まで急接近して、なだらかな左右のロールで触手をかわす。かわす度に風切り羽を大きく広げて、跳ね上げるように空中を打つ。

 見えないはずの何かが撃ち出されて、それが黒い触手を次々と切断していった。


「おぉ、あの硬い触手が荒縄のように!」

「風の精霊魔法か! 我々も続くぞ!」

 騎士さまたちも次々と剣にフェア(精)を纏って、それを風の性質に変換する。鋭い勢いで振り抜いて、魔物に太刀風を飛ばす攻撃で触手を切り捨てながら、一気に詰め寄った。

「右目が弱点です! 首を落とすか右目を狙って下さい!」


 一方的にやられ始めた不利を感じたのか、人数を脅威にみたのか、攻撃の手を止めた魔物が逃げに転じる。この為に集めた人数もあるけど、元が犬のような小型の魔物、非常に動きが速くて包囲をかいくぐりながら逃げていく。

 このままだと林の中に逃げ込まれるかもしれない。ユールさまにゴーレムに使ってもらった、風の障壁を生む魔法で止めてもらおうとした時だった。

 林の中から湧き上がるように、何百頭という渡りネズミが飛び出してきた。


「うわっ、まずいなあれって援軍?」

「……いいえ、大丈夫よリィ、あの子たちは、わたしたちの身方だわ!」

 流れる泥の様な茶色の集団は、林に逃げ込もうとした魔物を一気に飲み込んで、手と言わず足と言わず所構わず噛みついた。リアル地走り見ちゃった。


「今です! 動きが止まっている今なら、右目を狙って!」

 長槍を構えたサランディアさんが、穂先に緑の光を纏わせた。今はもうそれが風の属性を持ったフェアだと分かる。

 次の瞬間ボクは、あり得ないものを見たような気がした。サランディアさんの姿が消えて、瞬間移動したように見えたのだ。

 突き出された槍は見事に魔物の右目をとらえて、首の後ろから突き出ていた。呻くような声が辺りに響いて、渡りネズミたちが魔物から離れていった。赤く光っていた魔物の目から、光が失われる。


「わたしは元々、槍を得意としているんですよ?」

 魔物から抜いた槍を肩に担いで、イケメンがものすごいいい笑顔でウィンクしていた。


ファームウェアのVer.アップで、機能追加は嬉しいですよね。

「鉛刀一割」は、「平凡な人でも時には力を発揮する」という意味です。

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