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フレイの森のお医者さん  作者: 夢育美
一章 黄金の林檎
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三話 王都インガロストへ

 夕食の後、エフィルさんの部屋に招待された。

 ベッドの用意が明日になるので、今夜はここで一緒に寝るらしい。少しドキドキする。

 凝った造りの大きな机、天井まで届く本棚と、三人が楽に横になれる大きなベッド。

 家具や並んだ本を見ていると、大きなたらいを持ったエフィルさんが現れた。


 着替えを脇に置いて、嬉々としたエフィルさんに服を脱がされる。

 綺麗にしましょうね~と、全身をお湯でくまなく洗われる。

 何かもういろいろ、恥ずかしいやら気持ちいいやら、無抵抗になすがままされた。

 プリムラ、ボクもうお嫁に行けない……


『すっかり女の子モードですね』

 そこは突っ込んで欲しかった。

 先に寝ていてと言われ、大人しくベッドに寝転がる。プリムラも羽を休めて、枕の端にちょこんと腰掛けた。

 プリムラ、寝ないの?


『はーい、精霊は寝ませんよー』

 人と同じ意味での睡眠は取らないけど、横になって休んだりはするらしい。

 それで脳が休まるのかな? 精霊には脳が無い……ちょっ、痛っ、冗談だから。


 本当に長い一日だった。

 人生初の転生をして、ファンタジー世界に来てしまった。

 この世界の事を知りたい気持ちはある。前と大きく変わらないし、境遇も悪くない。


『なにが不安なんです?』

 直球ですなー、不満でなくて不安と見抜かれてるか。

『それはまぁ、リーグラスさんの考え、分かっちゃいますしね』

 一番の不安は、転生の本当の理由だ。


『本当の理由もなにも……お話しした通りですよ?』

 子供の頃から本は日常の一部だった。

 色々な種類を読んだし、中にはラノベの異世界転生もあった。神さまに会って勇者になって、魔王を倒してね。

 いわゆる“テンプレ”ってやつだ。


『うんうん、男の娘なら萌える展開ですよね』

 いやそこ、『こ』の文字違ってるし。『子』だからね? それに『燃える』だから。

 プリムラのこういう受け答えも、不安要素の一つではあるけど……


『神さまにも会ってないし、頼まれごともないから不安だと』

 そんな感じかなぁ。エフィルさんっていう女神さまには出会えたけど。

『主人は、金髪美人がお好みだったか』

 いきなり、あるじ、とか言うな。さっきから話題を逸らそうとしてませんかね?


『……』

 もう一つ大きな疑問がある。本人は触れて欲しくなさそうな、プリムラの存在。

 この世界には精霊召喚という技能がある。プリムラの存在自体は問題じゃない。

 ではプリムラはどこから来た? 彼女は元の世界の精霊じゃないのか?


『……やっぱり、そこ、気付いちゃいますか』

 ユキワリソウの精霊だと言っていたし。

 この世界にユキワリソウが有るか分からないけど、少なくとも森の神霊樹? のそばには無かった。

 記憶に関しての不安もある。何しろ自分の名前を覚えていない。

 名前を忘れるのは普通じゃないとプリムラは言った。


『わたしもすごく気になってるんです、自分のせいかなぁって』

 自分のせい、か。プリムラが一緒にいる事と、一部の記憶が無い事に関係ある?

『……たぶん』


 青白い光に満たされたお花畑で、プリムラは「わたしたちの魔法で」と言った。

 魔法があった事も驚きだけど、転生させるなんて簡単な魔法じゃ無いだろう。

 もしかして、大きな代償が必要なんじゃないのか?

 まさかと思うけど、自分の魂を犠牲に魔法を行使したのか!?


『いやぁ、まぁ、あははは……そ、そんなワケナイジャナイデスカ』

 人と話す時は、ちゃんと目を見て話しなさいって、教えられなかった?


『わたしの寿命は尽きかけていたんです。あなたに助けてもらった時には、半日もつかどうかでした』

 最後の力でボクを救おうとした時、仲間が手を貸してくれた、プリムラはそう言った。

 百株近いユキワリソウが咲いていた。さぞや大きな力に……


『いったでしょう? 人間以外の魂は、小さくて弱いんです。わたしたちが集まっても、小さな魔法を一度使うのがやっと。わたしも消えるはずだったんです、あっ……』


 気が付いたら、苦しそうに話すプリムラを抱きしめていた。

 ボクの小さな手のひらで、背中を覆ってしまえるほどに小さな身体。どれほどの想いで魔法を使ってくれたのだろう。

 この世界でプリムラと共に在るのは、きっと、神さまが想いに応えてくれたから。それは小さくても、奇跡と呼んでいいはずだ。


『ぐすっ、すっごーくキザですね。爆発して下さい……』

 そこ突っ込む所じゃないし、リア充でもないから。


「あらあら、まぁまぁ、仲がいいのね~」

 書類を片付けたエフィルさんが、抱き合って眠る姿に母性を刺激されたらしい。

 ボクたちを起こさないように、そっとベッドに潜り込んできた。


 えーとですね、このベッドはエフィルさんのだし、文句も異論も無いんですが。

 エルフさんと思えない豊満なお胸で、プリムラもろとも抱きしめるのはやめて下さい。

 まだ寝付いていないわけで。見た目は幼女だけど、心は若い男なわけで。

 背中に当たる柔らかくて張りのある感触に、意識が引っ張られてしまうわけで。

 今夜は寝不足になりそうです……



 翌朝、エフィルさんの続き部屋に、ボク用のベッドを置いてもらった。

 本来はお世話係の部屋で、扉を一枚隔てた六畳程の寝室だ。


 ベッドの設置で一悶着あって、エフィルさんは自分のベッドの隣に置くと、譲らなくて大変だった。

 結局六畳にベッドを三つ置く羽目になって、さすがに申し訳なく思う。


 同室のお世話係は、7歳と9歳の女の子が二人。

 年上の子がアルフェルという、腰まで伸びたウェーブ・ブロンドの、おっとりした性格のお姉さんタイプ。

 もう一人のナウラミアは、勝ち気でベリーショートの元気な子だった。

 上から目線の話し方がちょっと気になるけど、よくしゃべるしよく動く女の子だ。


 二人とも『森の養い子』に興味津々で、何かと世話を焼いてくれる。

 エルフさんは基本的に親切で、他人に優しい種族だと思う。

 顔合わせを兼ねた朝食を四人で取って、その後はお務めのある二人と別れた。


 エフィルさんに連れられて、神殿の中を見て回る。

 初めて神殿の外から来た人を見た。ここにはいろいろな種族の人が訪れる。

 目的は礼拝であったり、治療院で診療してもらったり様々だ。子供からお年寄りまで、もちろん男の人もいた。


 エルフさん以外の妖精族は初めてで、思った以上に興奮した。

 ドワーフ、レプラホーン、ノッカーと言った、ファンタジー要素満載の妖精に会う事が出来た。もちろんエルフさんが一番多い。


『なーんか、一部のエルフの人たちに、睨まれますねぇ』

 やっぱり勘違いじゃないのかと、プリムラの言葉で確信する。

 ドワーフやノッカーの人たちは、エフィルさんと一緒のボクに驚くけど、笑顔で挨拶してくれる。


 方やエルフさん、特に男の人は、ボクを見るとあからさまに顔を顰める。

 微笑んで挨拶してくれる人もいるけど、目が笑っていなかった。

 何か悪い事したのかなぁ。子供のくせに精霊を連れてるのが生意気だとか。


『そういうのとは、違うんじゃないですかねー』

 彼女は何かに気付いていそうだけど、それ以上話は続かなかった。


 お昼前だというのに治療院は忙しそうだ。

 治療師のエルフさんに頼まれて、薬草の袋詰めを手伝う事になった。

 乾燥した薬草を量って、小分けにして紐で束ねる。一定量ずつ布袋に入れて、口を閉じると完成だ。

 バネ秤かと思ったら、二枚の板で出来た魔法具の秤だった。


「女の子は手先が器用ねー」

 なんて褒められてニコッと笑顔を返す。

 それをまた可愛いと言われて、悪い気はしない。でも……


『適応反応ですね。精神は肉体の影響を受けるんです。違和感、ちょっとずつ感じなくなってるでしょ』

 まずい、このままだと女の子ならぬ、男の娘で違和感が無くなりそうだ。

 この世界で実質二日しか経っていないのに。男の娘の境遇に馴染みすぎてないか。


『まさかの素質あり?』

 やめて、マジ勘弁して……


 お手伝いの後に、バナナのような果物と堅焼きのパンを頂いた。

 種無しパンというやつだと思う。生地にもっちり感があるから、デンプン質の多い粉を使っている。それともイモ系のデンプンかな?


 昼を過ぎて孤児院に向かった。神殿と別棟でけっこう離れている。

 乳飲み子から六歳くらいまでの、主にエルフさんの孤児が生活している。

 長命種のリョース・アールヴは出生率が低く、その上に幼年期の死亡率も低くない。

 リョース・アールヴだけが罹る、風土病のようなものまであると聞いた。


「七歳までしか罹らない病気だけど、『森の呪い』と呼ばれる恐い病気なの」

 院長のエルフさん、目がマジだった。

 呪いか……神聖魔法とか、サクッと解決出来るお気楽対処法がありそうな。


『小さい子供だけ、種族限定、魔法に詳しそうなエルフが怖い、ってあたりがヤバそうですねー』

 精霊の自分は心配ないからって……あ、ボクもなのか。


 でも、呪いと言われる病気だ。

 自分がリョース・アールヴでは無いと言い切れない。何しろ転生した存在だし、病気なら感染の心配もある。

 どんな病気か調べないと危ないと思う。年齢的にもビンゴっぽいし。

 子供をあまり見かけないのは、神殿という場所柄と思っていた。元々多くないとは、何処ぞの少子化に苦しむ国を思い出す。


 『森の養い子』は特別な存在で、エルフさん以外の種族は、あまり例が無いと教えられた。

 発見者が引き取るのが慣例で、養子として育てる。

 孤児院に入れても良さそうなのに、何か理由があるのかな。


 リョース・アールヴの国は、イル・ド・リヴリンと言って王制を敷いている。

 王都はインガロストで、エルフさんの多くはそこに住む。

 王都を始めとした、街の中には孤児院が無く、全て神殿の元で運営されていた。

 運営資金は神殿への寄付や、王国の助成金でまかなう。

 目にする限り待遇は良く、実は裏でこんな事が……な王道展開は無さそう。


『なんという不埒なこと考えてますか。エロですか、エロですねっ!』

 ちげーから。幼児が関わる陰謀=エロ目的の大人事情じゃ無いからっ!!

 まったく、プリムラはそっち方面へ行く思考をどうにかしろ。


 孤児院で同じくらいの歳の子と遊んだり、絵本を見せてもらって楽しく過ごした。

 エロい事はもちろん、いっさい、これっぽっちも、金輪際無かった。

 実に健全に元気に戯れる、子犬や子猫を愛でる気分だった。

 その中の一頭が自分という事実は、この際触れないでいようと思う。


 絵本の中の一冊が、特に目を惹いた。

 一本の林檎の樹をめぐるお伽噺で、エフィルさんにおねだりして読んでもらった。

 ボクにはこの世界の文字は読めない。

 読み上げる声が妙に弾んでいたのは、気のせいと思う事にしよう。


 重い病に伏せる母親を助ける為に、女の子が『黄金の林檎』と呼ばれる、万病を癒やす果実を探す旅の話だった。

 苦労の末に、女神さまから林檎を譲り受ける。母親も元気になってめでたしめでたし。


 よくあるお伽噺の一つで、エルフさんだけじゃなく、この世界に広く知られたお話らしい。言ってみれば伝説のアイテムだ。

 『森の呪い』もこれがあれば、平気なんじゃなかろうかと思う。ま、本当にあればの話だけど。


 文字が読めない事を話したら、不思議そうな顔をされた。

 プリムラは何故か読めたので、必要な場合は読んでもらう事にする。文字を覚えなくてはと思った。


「やっぱり、養い子だからかしら。最初の魔法で文字も習得できるのだけど……」

 疑問はプリムラも感じていて、ボクに対する魔法の効果が、ちょっと変と言っていた。


 その後は夜まで孤児院で過ごして、翌日ようやく神官長に会える事になった。



『あーさーですよー、あっさー!』

 頬をペチペチ叩かれて目が覚めると、ボクの顔を覗き込む可愛い笑顔があった。

『可愛いだなんて、いやん!』


 お世話係の仕事は、エフィルさんの部屋の掃除、身の回りの準備に湯浴みのお供など。

 職務中お茶を入れたり、来客の取り次ぎ対応もある。

 外出時には一緒に出掛ける事も多く、神官見習いとしての側面が強い。

 二人は他にも、治療院や孤児院の仕事もあった。今日も早朝から治療院の手伝い。


 神殿に務める人は揃いの制服を着ている。

 白を基調に紺のラインで縁取られた、貫頭衣風の服だ。下着の上に直接着て、幅の広い帯で腰の辺りを結ぶ。

 帯にも紺のラインが入り、ラインの色と本数で役職と階級を表すらしい。


『作務衣に似た服ですよね。脇の部分が広く開いてるし、動きやすそう』

 冬は寒くないのか尋ねると、この辺りはそれ程寒くならないと言われた。

 かえって冬が寒いと知っているのを不思議がられた。

 ドライアードの住む、森の南端は周年温かいそうだ。常夏の環境らしい。


 王都のインガロストは、フレイの森の北端を抜けた先にある。今日はそこに居る神官長に会いに行く日だった。

 枕元に置かれた浅葱色の服を着て、少し濃い色の帯を締める。

 ボクの服に縁取りが無いのは、来客用の服の為だ。本来は来客者が着替えを持ってくるので、使われる事はあまり無いらしい。


 食堂で朝のお務めが終わるのを待っていると、程なくエフィルさんがやって来た。

 エフィルさんの服は、白に近い薄いベージュの生地に鎖状の紺の縁取り、その内側に細い二本線という装飾がされている。十二という階位を表しているらしい。


「もう、起こしに行こうと思ったのに。おはよう、よく眠れたのかしら?」

 途中で給仕役に何か頼んで、隣の席に座る。

「おはようです、エフィル」


 さん、を付けると威圧する笑顔で言い直させられるから、呼び捨てにする。

 けどやっぱり慣れない。見上げるボクを抱き寄せて、当たり前のように膝に乗せた。

 エルフさんとしてはボリューミーなお胸の持ち主なので、頭の後ろがふよふよして気持ちいい。

 いけない、意識を朝食に集中するんだ。


「食事が終わったら、すぐに出掛けるから。王都には少しおめかしして行きましょう」

 今朝のメニューは、ミルク粥に茹でた野菜。

 この世界にも山羊がいて、山羊のミルクからチーズやヨーグルトを作っている。

 ただ、クセの強い味と匂いなので、牛乳のようにそのまま飲む事はしないみたい。


『わたしは山羊のミルク好き~。コクがあって美味しい~』

 薄味よりはっきりした味が好みなのかな。

 じかに物を食べられるか聞くと、味見程度なら出来るらしい。エキスというか、成分を味わうので見た目が減る事は無い。


 前の世界でそんな話を聞いた気もする。ウイスキー樽の天使の取り分とは……あれは違ったかな。

 どうでもいい事を考えながら、エフィルさんのふよんを楽しみつつ朝食を終えた。

 手を合わせて、ごちそうさま。


「……リィ、前にも思ったけど、それはなあに?」

 あ! つい習慣でやってしまった。

 この世界にも、食事の前に感謝の祈りを捧げる習慣はある。

 アルフェルもナウラミアも、一人でつぶやいていた気がする。全員で揃って唱和する人は見掛けない。

 祈りに対する考え方の違いだろう。神さまと個人の対話であると、聞いた気もする。


『良い習慣だと思いますけどね。ここでは目立つかも』

 気付いていたなら、それとなく注意してくれればいいのに。

 ここは可愛らしさをアピールする事で、お茶を濁す作戦に出た。


「かみさまへ、ごほうこく?」

 手を合わせたまま振り向いて、見上げるように小首を傾げて見せた。


「ん~、可愛いっ!」

 いきなりがばっと抱きしめられたので、作戦成功のようだ。

 ただし、食堂にいた全エルフさんが、唖然とした顔で見ているのは想定外だった。


 エルフさんと雑談して、分かった事がある。

 エフィルさんはどちらかというと、人見知りで近寄りがたい人と思われていた。

 でもこの状態を見ると、そんな雰囲気は微塵もないわけで。


 暴走状態をなだめるのに時間が掛かって、インガロストへ向かうのは予定より少し遅れる事になった。

 ちなみにそのせいで、予定していたおめかしの時間はほとんど取れなかった。

 着せ替え人形にされなかったから、ボクとしては助かった気持ちだ。よそ行きにあつらえた、ハーフコートを着て神殿の裏手に向かった。



「『うわぁぁ……』」

 プリムラと二人同時に、同じ声を上げる。それ位に幻想的な光景が目の前にあった。


 タリル・リングと呼ばれるそれは、地面に広がる、淡く黄色に輝く光の輪だった。

 床に模様が描いてあるわけでなく、起動術式なんてものも無い。

 常にそこに存在していて、対になるもう一方と、物理的な距離を無視して繋がっているそうだ。なんともファンタジーな存在だと思う。


 記憶に間違いが無ければ、タリル・リングの見た目は「妖精のフェアリーリング」と言われているものだ。

 菌類の一種が地面に作り出す、淡く光る大きなリング状のもので、並のものでも直径3m位になる。


 ヨーロッパの伝承で、妖精にまつわる話に時々登場する。

 妖精が輪になって、踊る中に足を踏み入れた途端、遠くの見知らぬ土地に居た、そんな神隠し現象として伝えられていた。

 この時踏み込んだ輪の事を、フェアリーリングと呼んで、妖精が行う悪戯の一つと考えられていた。なかなかに迷惑な悪戯と思う。


 目の前のリングは、王都の別の神殿に繋がっている。

 王都にあっても、神殿の敷地内は治外法権で、一種の独立組織扱い。政教分離の原則に沿っている、らしい。


 リョース・アールヴは単一国家を形成しているけど、アルヴヘイムには他の妖精族の国も多数ある。

 フレイ神はこの世界で、最も信仰を集める神さまなので、他の種族の信者も多い。

 どこか一国家に属すると色々と面倒らしい(注:プリムラ調べ)。


「このタリル・リングを使って、神官長の所まで行きますよ」

 エフィルさんに手を引かれて、なんでもないようにリングの中へ入る。

 一瞬だけ周りが光ったら、そこはインガロストの神殿の庭だった。

 マジで一瞬で移動完了。あまり有り難みが無いなぁなんて、少し贅沢な感想を持つ。


「あっという間だったでしょう? タリル・リングは便利なんだけど、地面が無いと維持できないのと、行き先固定なのが残念ね」

 地属性のかなり上位の魔法だろうと、プリムラが言っている。

 後から知ったのだけど、タリル・リングの起動にはやはり魔力が必要で、そんじょそこらの一般人では起動出来ないそうだ。


 もう一つ条件が合って、リング同士が繋がる、つまり移動手段として利用するには、星の運行に依存するらしい。

 一定の周期で数日間だけ、何処とどこが繋がる、と言う縛りが存在する。


 さすがチート装置だけあって、使える人は限られるし面倒な条件もある。

 遠隔地から距離を無視して移動出来るから、防犯を考慮すると誰でも何時でも、では問題が起きそう。

 多少不便な便利装置くらいでいいのだろう。


「さぁ、神官長がお待ちよ。行きましょう」


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