四話 女神さまの周辺事情
おもに心が疲れた式典を終えて、セレヴィアンさんの部屋に戻ったら、アルフェルとナウラミアが待っていた。こちらの治療院に頼まれ荷物があったので、届けついでにお祝いに来てくれたらしい。
「わぁ! なんだかすごく立派だね~」
「そうしてると、どこかの氏族のお姫さまって感じね」
いやいやいや、褒めても何も出ませんよ?
「プリムラも何かもらったんだって?」
「んーと、これだよ。フレイ神殿が身分を保障しますよ、っていうペンダント」
「あー、いいな~、わたし見習いだから、まだもらえないんだよ」
本気で羨ましそうなナウラミアに、プリムラもまんざらでは無さそうだ。彼女が貰ったのは、正規の神官になると与えられるフレイ神殿の紋章。弓と麦の穂を象った銀細工のペンダントだ。
ただしプリムラの物は普通と違って、青と黄色の宝石が所々に埋め込まれて、特別な物であると分かる。一般の神官に渡される物は、階位を表す紺色の彩色があるだけで、宝石が付けられる物は無い。
二種類の宝石には意味があり、青は王族に列なる者、黄色は王国の高位役職者を示す。勲章みたいな意味もあると思う。
「これを持っていれば、どこの街でもどの種族と会っても、無体な目には遭わないと思うわよ~。フレイ神殿とリョース・アールヴ国王が後ろ盾ですって意味だもの」
「そっか! ご老公さまの印籠なのね、コレ」
さすがにそれはボク以外分からんと思うぞ。あ、後ろでエフニさまが妙にうなずいてる。実は時代劇好きだったり?
ハテナを浮かべる二人に来てくれたお礼を言って、この後の予定を尋ねる。実は一緒に行きたい場所があった。
「特に無いけど、時間が掛かるなら帰りは送ってね? ナリーも予定無かったよね?」
「今夜は実家に泊まるつもりだったから、良ければ三人とも一緒に……アルもそれで良かったよね?」
「……うん、おじゃまで無ければ。それで、リィはどこに行きたいの?」
ちょっと言いよどんだのは、やっぱり何かあるのかなと思う。チラ見したプリムラも気付いた様子なので、後で話を聞いてみようか。
「イドゥンさまに会いに行こうかと思って。あの方さみしがりだし、あれから会いに行ってないから、不義理だーとか怒られそうだし」
それを聞いてしまったという顔になったナウラミア。実は両親とネーミアは、晩餐会の少し後にお礼の挨拶に行っていたらしい。ナウラミアだけ先に春の神殿に戻っていたので一緒に行けなかったのだ。
その後は噂が噂を呼ぶ大盛況となって、おいそれと会いに行く事自体難しくなってしまった。その辺はバラエル家の意向とあれば、いくらでも融通が利きそうな気がするので、ぶっちゃけナウラミアが忘れていたのだと思う。
「そ、そうよね、人と話すのがお好きだって聞くし、会いに行くなら人数が多い方がいいわよねっ!」
勢い込んで話す彼女の焦った様子も久しぶりだ。こんな所は年齢相応で、可愛らしく思う。イドゥンさまには釘を刺しておかなきゃならないし、数の圧力にも期待しよう。
馬車の手配は予め済んでいたので、神殿付きの馬車でグローラナ大渓谷へ向かう。っていうか、あまりにも観光地化が進んでいるらしくて、辻馬車が出ていたってどういう事?
「……商魂たくましいというか、なにわ商人に通じるものがあるわね」
うん、それもボクとエフニさまくらいしか通じないからね。ほら、二人がプリムラを見る目が奇異なものになってる。残念な事をしゃべる人ってレッテルが付くよ?
『リーグラス、それは口に出して言って上げないと、本人の為にならないのでは?』
良いのですよエフニさま、あえて言わない事が優しさという場合もあるのです。
「すごーい、お店だけじゃ無くて、宿屋も出来てるんだ~」
前に来た時は大渓谷に架かる橋の橋脚部分に、警備兵向けと思われる部屋があるだけだった。それが今や橋脚周辺に数件の二階建ての建物が見える。更にそこから崖の手前に、一列に屋台が並んでいる。それは谷底へ下りる階段を挟んで、反対側にも続いていた。
逆の側は馬車の駐車場となっているらしい。綺麗に一列に並ぶ馬車は、どれも綺麗な装飾を施された立派な物だ。馬車の周囲を警戒しながら歩く警備兵もいるので、王国で手配したのかもしれない。
「門前町かってにぎわいだよねぇ。夏のお祭りを思い出すなぁ」
帰りは辻馬車で帰る事にして、神殿の御者さんにお礼を言って帰ってもらった。最初は聖人さまにそんなまねを! と食い下がられたけど、公務でも無いしプライベートな訪問だし。そう言ってもかなり長い間粘られてしまった。
「リィの場合は、養子とはいえ王族扱いってのもあるんじゃないの?」
「あっ……」
ま、まぁ、帰ってもらっちゃったし、御者の人が怒られるとかそう言う心配も無いだろうと思いたい。無いよね? 無いといいなぁ。
◇
『よく来たわねー、っていうか、ちょっと、久しぶりすぎない? やってやりっ放しは良く無いと思うよね!?』
怒っていらした。
イドゥンさまへの面会は、神殿から派遣された係の人が順番にさばいている。ボクたちの来訪を知ったイドゥンさまが、先に会いたいとわがままを言ったそうで、列の後ろに並ぶ人たちにすごく睨まれてる気もする。
「いやいや、女神さまに対してわがままとか、不敬に当たるでしょ」
「気安い方ですし、忘れがちなんですが確かにそうですね」
係の神官さんも苦笑している。もっとも順番云々は、ボクの首にある聖人を表すペンダントを見た途端、誰もが黙って何も言わなくなった。むしろ驚きと好意的な雰囲気に変わっていた。
「長居してると、リィまで一緒に拝まれちゃいそうね」
さすがにそれは無いと思いながら、ちょっと嫌な予感がする。
『相変わらず楽しそうでいいわね~ふん!……ところでリーグラス、そっちの娘は一緒にいたおちびちゃんよね?』
「あ、はい、あの時はありがとうございました。頂いた林檎のお陰で、こうしてリィと二人で居られるようになりました」
深々と頭を下げるプリムラは、本心から感謝しているようだ。普段は軽口ばかりでお調子者だけど、決めるべき所はちゃんと決める。
わたしって、出来る女でしょ、ドヤァ! とか言い出したら締めなきゃな。
『その姿を見られて安心したわ。会った時から、ちょっと存在が不安定に見えてたから。林檎が役に立ったなら何よりよ』
うぉ、さすがは女神さまか。あの時点で将来起こるかも知れない、プリムラの不調を考えて渡してくれていたとは。話し好きなナイスバディのお姉さんとか、ちょっと子供っぽい所が可愛いとか思ってごめんなさい。
「ボクからも感謝します。もっと早くにお礼に来なきゃって、遅くなってごめんなさい。ようやく二人の状況にも慣れてきました」
『ふむ……ま、いいわ、本心みたいだしね。二人ともすっかり“らしく”なったじゃない。さすがドライアードは育つの早いわねぇ、背も伸びたし』
え!? と思って隣のプリムラを見る。その後ろにはナウラミアとアルフェルの二人。
「……プリムラ、いつの間にそんなに育ったの? 主にお胸以がぁっふっ!」
サマーソルトからの高速ローリングソバットとは、さては貴様ガ○ルだなっ! 薄れ行く意識の中で、残心のままボクをにらみ付けるプリムラがニヤリと笑った……
なんて事は無くて、顎とこめかみを蹴られた痛みでうずくまる。ちょっ、マジで痛かったから今のは! しゃれになんないからっ!
涙目で見上げると、なぜだか美少女三人に上からにらまれていた。イドゥンさまは呆れ果てた目で見ている。ドブを流れていく空き缶を見るような、冷めた視線に胸が痛い。
それはそれとして、確かにプリムラの背はナウラミアと同じくらいに見える。と言う事はボクも同じくらいに育っている?
「もう、リィはやっぱり分かってなかったのね。わたしたち、けっこう背が伸びてるのよ、この通りね」
そう言って胸を張る(無い胸と言いたいけどまた蹴られそうなので割愛)、彼女は既に少女の面差しというか、幼女とは言えない女らしい顔付きだった。双子のボクもきっと同じように、少女の姿なのだろう。
『あなたたち、ドリュアデスから何も聞いてないの? ドライアードは妖精族の中でも成長の早い種族なのよ。生まれて七日で、はいはい。ひと月で立って歩くようになって、一年で不自由なく会話出来るくらいに育つのよ』
あの子も悪戯好きだから、わざと教えなかったのかもねぇ、というイドゥンさまもなんだか楽しそうだった。ボクがこの世界で目覚めてから、そろそろ五ヶ月経とうとしていた。最初の姿から考えて、もうすぐ生後一年といったところだろうか。
んー? でもそれって、なんかおかしくないか? セレヴィアンさんに初めて会った時に、四歳だって言われたはずだ。それにドライアードの村でドリュアデスさんと話した時も、プリムラの身体だったボクの双子は、長い間目覚めないと言っていた。
あれれ? もう何が本当なのか、良く分からなくなってきたぞ……
『ごめんなさい、混乱させちゃった? でも今いったことは嘘ではないのよ。これ以上の詳しい話は、ドリュアデスに直接聞いてみて。何かあるのかもしれないし』
「……はい、今度尋ねに行ってみます。一つ教えて頂いてよろしいですか?」
『何かしら?』
「ボクの今の姿は、この二人とそれ程変わらないほど成長しています。普通ならどのくらいでここまで成長しますか?」
イドゥンさまが視線を下げて思案顔になった。
『わたしの知っている限り、人で言う七歳くらいの姿までは三年で、その後はゆっくりになるけど、そうね、10歳くらいに見えるし……五年ってとこかしら?』
すると、計算は合う……のかな? 早春の頃がボクの誕生日と思うから、それで五歳になるはず。それにしても、いつの間にこんな姿に。
「アルお姉ちゃん、ボクが育ってたのって、気付いてた?」
「ん、そうね~、最初にあれ? って思ったのは、二人がドライアードになって戻ってきた日かな。ちょっと大きくなったかなぁ? って思ったよ」
なんと、あの頃から成長が始まっていたとは。
「それでね~、毎朝見かける度に、ちょっとずつ育ったかな? って感じだった」
「リィ、戻ってすぐの頃、毎日関節が痛いっていってたでしょ。わたしもそうだったけど、あれは成長痛ってやつよね」
あー、なる程、急激な成長に伴う四肢の痛みだったのか。生まれ直すって話だったし、てっきり身体の変化に慣れるまで痛かったのかと思った。それにしても、自分の事って意外な程気付かないなぁ。
「あの~、つかぬことを聞いてもいいでしょうか」
そう言えばナウラミアの事すっかり忘れてた! 彼女はまだ精霊が見えないはず……の割には普通にしてるし、視線はイドゥンさまに向いてるな。
『なあに? わたしに聞きたいことかしら?』
「はい。わたしは、その、まだ精霊の姿が見えないのですが、イドゥンさまは精霊ではないのですか?」
『あーそういう話ね。精霊なのよ、一応は。この黄金の林檎に宿る精霊として、今はここから動けないでいるし。でも前は違ったからね』
おっと、その話は初耳だ。
『もともとはこの世界の存在じゃなかったからね~。気が付いたらここに居たっていうのが本当のところかしら』
「以前はどちらにいらしたのですか?」
『んー、知らないかもしれないけど、アースガルズという所にいたのよ』
ん? それってアース神族が住んでいる国の名前じゃなかったか? アルヴヘイムにアースガルズって、どちらも世界樹ユグドラシルにあるとされる国の名前だ。それはボクが以前にいた世界でのお話。北欧神話と呼ばれる数多の神話の一つだ。
この世界はアルヴヘイムと教えてもらった。そしてアースガルズもあるというなら、もしかしてこの世界の成り立ちは……今はまだ他にやる事がある。その内に調べてみようと宿題の一つに加えた。
『ま、そういうわけなんで、“神さま”ってことで今後ともよろしく~』
すんごい軽いノリの女神さまは、相変わらずの楽しそうな笑顔でしなを作ってウィンクして見せた。さて、もうそろそろいいだろう、モードを切り替えるか。
「えーとですね、イドゥンさま。ボクたちの事、ここに来る人来る人みんなに話しましたね?」
『えっ!? 話しちゃいけなかったのっ!?』
「確かに、話すな、とはお願いしませんでしたが、そもそもですね、ボクがドライアードだと分かっていらっしゃるんですから、人に知られると……」
という感じでボクの説教が続くのだった。言ったら怒られるだろうけど、涙目のイドゥンさまは可愛いと思った。
◇
せっかく渓谷の底まで来たので、周囲を少し散策してみる事になった。ノームに作って貰った新しい川は、陽光をきらめかせながら綺麗な流れとなっている。川沿いに緑の隊列が出来て、少しずつ外側に広がっているようだった。
「秋だから、お花は咲いてないですね~」
以前の乾いた荒れた大地より、緑という彩りが増えた事でずいぶん印象が変わった。残念なのは季節が秋のため、川が出来てからそれ程経っていない為で、来年の春には綺麗な草原になるんじゃないかな。
「あれ? ねぇねぇリィ、これって、セリじゃない?」
プリムラが嬉しそうに呼ぶ所に、よく茂った青葉の一群が生えていた。言われてみればこの世界でセリを見掛けた事がない。トゥイリン周辺の小川や、森の川に生えていてもいいはずの野草なのに。
葉っぱをちぎって匂いをかぐと、なんとも言えない独特の香気が立ち上る。辛いようなそれでいて刺激が無い、すっきりした香りだ。
「うん、これはセリで間違いないね。念のため確認はしておくけど……」
今では自然になった『写真』を発動して、モニターのinfoで確認する。そうするまでも無くセリだと思うけど、日本の物と同じ保証も無いし意外にも有毒だったり。
そんな心配は杞憂に終わり、食用のセリで間違いなかった。何枚か撮影もして記録に残して、せっかくなのでよく育っている数株を収穫する。
アルフェルとナウラミアが、不思議そうな顔で見ていた。辺りに漂うセリの香気にも、かいだ事のない匂いに興味があるようだ。
「見たことのない草だけど、薬草の一種かなにか? 変わってるけどいい匂いね」
「セルフィーユみたいな姿ね~。食べられるのかしら?」
セリはハーブのチャービル(セルフィーユ)に似た姿なので、エルフさんに馴染みのあるチャービルと近いものだと説明した。
前の世界だと北半球には広く分布していたし、よく知られた食材だと思うけど。どちらかと言えばアジア圏で人気があった香草だし、見た目からヨーロッパ人種なエルフさんには合わないハーブかもしれない。
「軽い精神高揚の作用がある、香り付けの野菜の一つかな。薬草としても使われるけど、特別に有効な効能というより、普段から食に取り入れて利用する感じ。『医食同源』の実践に向いたハーブだね」
懐かしい匂いをかいだせいか、つい以前のサラリーマンだった頃の口調に戻ってしまっていた。何気なく使ってしまった、医食同源も違和感があったので、たぶん二人に通じていない。
「イショクドウゲン? リィはときどき難しい言葉を使うよね。うーん……」
転生者であると二人とも知っているけど、必要以上に身バレする情報は出さない方がいいだろう。軽くやっちまった感があったので、さっと水で洗ったセリの葉を、二人の口に突っ込んで黙らせる事にした。
しょりしょりと、驚きながらもセリをかみしめる二人。神殿のお務めで薬草採取に行くので、生の葉を口に入れることにはあまり抵抗が無いみたいだ。お貴族さまのご令嬢なんだけど、こんなに世慣れてというか、サバイバル慣れしていいんだろうか。
「ふーん、思ったより青臭くないし、美味しいわね」
「噛むと香りが広がるよね~。これは美味しいと思う」
合わないかもと思ったけど、どうやらエルフさんの嗜好にも合致するようだ。これなら普段から食に取り入れてもいいだろう。セリはビタミンCとミネラルが豊富だし、冬に向かう季節には貴重な青野菜だ。
「『医食同源』っていうのは、前の世界の言葉でね。普段から食事の内容に気を付けて、病気を予防しようって考え方だよ」
「それはいい考えね~」
「あーそれ、家のお父様にも聞かせたいわ。さいきん太り気味なのよ」
セリの栄養価について軽くレクチャーすると、二人の目がキュピーンと光った気がした。ビタミンCとミネラルが美容にいいと、その説明に反応するとはさすがに女の子だ。その横でプリムラが、刈り尽くさんばかりに収穫していたのでさすがにそれは止めた。
セリの効能の一つ、食欲増進のせいでお腹がすいたので、帰りは谷沿いの屋台に寄って、めいめいに好きなものを食べる事になった。肉食に目覚めたプリムラは大蜥蜴の串焼きを、アルフェルは甘いパンケーキ、ナウラミアはサンドイッチを選んだようだ。
ボクは何にしようかと探していると、突然エフニさまから声が掛かった。
『リーグラス、あれです、あそこの屋台にしましょう! ケモノ耳ですよ? しかもあれは狐耳ですっ! ケモミミっ子が売り子ですよぉ!?』
ちょっw まてよwwwwwww あんたか! あんたが原因だったか!!
モーザ・ドゥーグの村に行った時に、ボクもプリムラも妙に獣化した子供に萌えた。ネコミミは嫌いじゃないけど、ケモナーと言う程でも無いはずのボクは疑問だった。プリムラも後から考えると、なんであんなに? という興奮だったらしい。
それもこれも原因はエフニさまが魂に巣くっていたせいだった。ここは敢えて、巣くっていたと言わせてもらおう。ケモナーは立派な病気認定だ! プリムラの魂と同化していたエフニさまの興奮が、プリムラを経由してボクにも伝わった、という事らしい。
『そ、そんな事はいいですから、あそこ! 早く屋台に行きましょう!』
……だめだコイツ、早く何とかしないと。
あきらめの心境で屋台に行くと、雑穀と野菜の雑炊を売っていた。とろみのあるスープは身体が温まりそうで、匂いも美味しそうだ。値段は一杯で銅貨二つ。日本円だと200円くらいと良心的。
安いし意外と味もよくて美味しいなぁと、湯気の立つ雑炊を味わう。興奮MAXのエフニさまが後ろで騒いでいるのも、軽くスルーして食べ続ける。むしろ全力スルーすべきだと思う。
「あの……お口に合いませんか?」
ボクが黙っていたせいで、ケモミミさんが不安そうな顔で尋ねてきた。そう言えばボクの格好は普段の質素な神官服じゃ無くて、式典の時の服のままだった。首のペンダントもあるし、身分の高い者に見られたのだと思う。あれ? 身分は高いのか?
「あ、いえ、そんな事無いですよ。ちょっと後ろがうるさくて……」
後ろ? と疑問を浮かべる彼女に苦笑して、味が好みで美味しく頂いてると伝えると、安心したのかとても可愛い笑顔になった。その顔の所どころに赤い日焼けのような発疹が見られる。それにお椀を渡してくれた時に見えた、手先の肌荒れが気になった。
王都に治療院があるから、そこで見てもらうといいよと伝えて、食べ終わったお椀を返して三人の元へ戻った。
ケモナーは正義です、リーグラスは今すぐ改心すべきと思います。




