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フレイの森のお医者さん  作者: 夢育美
一章 黄金の林檎
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二十話 害虫駆除には薬を

 帰りの馬車は橋脚の側で待機していたので一時間で戻れた。橋脚には詰め所のような部屋があるらしい。

 検問は無いと聞いていたけど、どんな用途で使うのだろう? 多少気になるけど、今はそれどころで無いから、機会があったら知っていそうな人に聞こうと思う。

 王都に戻ったその足で、神官長のセレヴィアンさんに会いにいった。エフィルさんが話しを通してくれていたので、神官長との面会は、面倒事も無くすぐに許可された。


「あら、お帰りなさいリィ。意外と早かったのね。アルフェルも久方ぶりですね。息災でしたか?」

「ご無沙汰してます。セレヴィアンさまもおかわりなく」

「この歳になると、変わりようもなくてねぇ……ところで、どんな用かしら?」


 グローラナ大渓谷で見てきた事と、黄金の林檎の樹の現状、そしてこれからやろうとしている事を伝える。弱っている状態を回復したい事。その為に薬を作る必要がある事。ネーミアを助ける為にも、黄金の林檎を手に入れる必要がある事を。


 セレヴィアンさんは時々相づちを打ちながら、黙って話を聞いていた。そして、一通りの話を聞いた後で、まずボクたちを労ってくれた。特にアルフェルはユールを通じて、黄金の林檎の樹を発見した事を褒められ、また感謝された。

 神官長に褒められた事で、彼女は大いに照れている。日頃から感謝される事は多くても、行いを褒められるというのはまた格別なのだろう。


 ボクの事はと言うと、セレヴィアンさんは真実を知っているので、まぁ無理をしないでしっかりやんなさいよ、的な事をやんわりと言われた。

 必要な事は全て話したので、お礼を言って面会を終えた。


 できる限りの便宜を図ると約束してくれたこの人、いったい何者なんだろう。神官長という立場しか知らないし、プライベートな事も聞かされていない。エフィルさんと親しい、偉い人なんだ位に思っていたけど。

 ナウラミアを通じて、実家のバラエル家にも手伝って貰えないか打診している。ただ、今のところ色よい返事は無いみたいだった。必要な物を自分の手の届く範囲で探すしか無い。権力を持たないただの幼女が、どれ程のものかというわけだ。


 害虫の駆除に必要なのは殺虫剤だ。

 本当は有機リン系の殺虫剤を手に入れたいけど、この世界では無理だろう。幾つか製法を知っているものの、材料も製造に必要な器材も揃っていない。

 孤児院の畑を手伝って、農業の技術もだいぶ遅れているのは分かっていた。野菜を作るにも、施肥も行わないし完全無農薬栽培なのだ。

 せいぜいが自然農薬を作るのがやっとだろう。この辺りは出来る範囲から改善するつもりではあるけど。


 原因がネジラミだと分かって、すぐに頭に浮かんだのは石灰硫黄合剤だった。これは比較的作るのが容易で、手間は掛かるけどこの世界でも作れそうだった。

 炭酸カルシウムを高温で焼成して酸化カルシウムに、それを水に溶かして水酸化カルシウムの飽和溶液を作る。そこに純度の高い硫黄を加えて出来るのが、石灰硫黄合剤だ。

 カイガラムシやダニに良く効く殺虫剤である反面、強アルカリの為に取扱が難しい危険物でもある。皮膚に触れれば熱傷を受け、眼に入ったら失明の恐れもある。


『なんか、すごいにおいするのよね、温泉の強烈なやつ』

 精霊のプリムラが、なぜ温泉を知っているのかは不問としよう。たぶんボクの知識が元になっている。それにしてはやけにリアルな反応を返す時があって……いやいや、今はそんな事はどうでもいいか。

 材料の炭酸カルシウム、つまりは石灰岩と純度の高い硫黄の入手が難しい。大理石を粉末にすることで、代用に出来なくも無いけど。むしろ硫黄が重要だ。


 それ以上に問題なのが、硫化水素の発生だ。“混ぜるなキケン”で有名になった、火山ガス中毒の原因にもなるガスだ。

 強アルカリ性の石灰硫黄合剤は、酸性の物質が混ざると硫化水素を発生する。林檎の樹が生えている大地は、長期間乾燥状態が続いていた。そう言う土地は極端に酸性に傾いている事が多くて、場合によってはpH4近い酸性を示す時もある。

 そんな場所に石灰硫黄合剤を灌注すれば、硫化水素の発生待ったなしだ。下手をすると死人が出るだろう。


 カイガラムシ類には最適な農薬である反面、今回はかなりの危険が伴ってしまう。

『さすがにマズいわよねぇ、死人が出る可能性は。それに、運搬だって慎重にやらないと、酷いことになりそうだし。別の方法を考えたら?』

 そうなんだよなぁ。となると、自然農薬系で他に作れそうなもので、カイガラムシにも効く物を考えないといけない。

 アブラムシやイモムシ相手なら、ピレスロイドを含む除虫菊が使えるけど。


 除虫菊は既に見付けていて、エルフさんも虫除けに使っていた。乾燥した葉を石皿に乗せて、火を付けて煙で燻すやり方だ。

『陶器のブタさんがあれば完璧だったわね』

 また懐かしい物を……プリムラだって、見た事ないでしょ? ボクは子供の頃に使った記憶があるけど。

 ピレスロイドは日本でもおなじみの、蚊取り線香の主成分だ。揮発しやすく、紫外線で分解される為、液剤として使うには生の除虫菊から抽出したい。


 度数の高いお酒を凍結濃縮して、純度の高いエタノールを作る。それに除虫菊を漬け込めば、高い濃度でピレスロイドを抽出できる。

 治療院で消毒に使っているのは、スクテラの溶液を媒体にした、魔法で殺菌を行う消毒薬だった。エタノールを消毒に使ってくれていたら、簡単にエタノール溶剤が手に入ったんだけど、さすが魔法が存在する世界は違う。


 ただ今回相手にするネジラミは、全身を蝋物質で守っているので、ピレスロイドは効きにくい。蝋を溶かす性質のある有機酸を混ぜないと駄目だろう。

 酸と言っても酢酸では植物のダメージが大きいので、竹酢を使ってみようと思う。


『竹の酢? 酸っぱいの?』

 あまり酸っぱくは無いかなぁ。口に入れるものじゃ無いし。

 竹材は夏の神殿で見掛けた。作り方を連絡すれば、たぶん向こうの薬剤師さんで作れると思う。でも手順が面倒だし、自分で作らないと品質に問題が出るか。

 他にも薬効を高める為に、ニンニクの抽出液を加える事を考えている。とにかく、土中にはびこるネジラミを駆除するのは大変なのだ。



 他にもヘンルーダ、バジル、ミントなどハーブ系の成分を元に考えてみたけど、どれも殺虫能力の点で今ひとつ。アブラムシやヨトウムシなら、これらでも濃度によっては十分な効果が得られるけど……やはり除虫菊で決まりかな。


 それからボクたちは、手分けして殺虫剤作りに取り掛かった。

 アルフェルにはニンニクの抽出液作りをお願いした。女の子にニオイのきついもの、と思うけど他も大変だし。


 王都の薬剤師さんには、魔法で濃縮エタノールを作って、ピレスロイドの抽出液を作って貰う。これは漬け込んでおくだけなので、時間が掛かる分早く取りかかってもらう必要がある。

 殺虫剤の主剤だから量が必要で、300倍の灌注剤を作るなら、木桶一杯が6リットルとして、林檎の樹の周囲全体と考えると……うーん……100リットル、17杯分あればいいかな。


 作り方のポイントを伝えて、頭を下げてお願いする。上手くいけば多くの人を救える可能性があるから、大事な作業だと分かってもらう事は必要だ。

 王都での作業は薬剤師さんにお任せして、ボクは夏の神殿へ向かった。向こうではアルフェルのお姉さんのファニアンさんが、竹を集めてくれている。

 タリル・リングの接続待ちでしばらく直通が無い。急いでいるのでいったん秋の神殿へ行って、そこから夏の神殿へ向かった。


 移動自体は一瞬で済むけど、本来は私用禁止の移動設備を、連続で使いまくるというのは……正直、気分がいいです!

『偉くなった気分よね。気分だけで何も無いけど』

 まぁ、たまにはいいではないか。瞬間移動の連続なんて、めったに体験出来ないし。


「いらっしゃい。話は妹から聞いているわ。大変そうな事に関わってるわね」

 再会の挨拶もそこそこに、ファニアンさんに作業場となる、神殿の裏の空き地に案内してもらった。青竹集めと事の次第は、アルフェルにお願いしてユール経由で伝えて貰っている。

 こういう時に長距離を素早く移動出来る、鳥の精霊の便利さをあらためて感じた。

『……』

 えーと、ディスってないよ?


 竹酢の作り方は少々面倒で、青竹を二つに割って、地面に掘った穴に斜めに詰めていく。100本程詰めたらバショウの葉で上を覆って、更に土を被せて盛り土を固める。

 風上の位置に火焚き口を作って、反対に節を抜いた長い竹のパイプを、盛り土の空間に抜けるよう差し込む。

 竹のパイプは水属性魔法の『氷結』で、氷で覆った状態を維持してもらい、パイプの口の下に木桶を準備。火焚き口から炎属性魔法で火をどんどん送り込んでもらう。


 日本だと炭焼き窯が必要になるけど、魔法なら楽が出来るわけだ。竹炭を作る要領で、出てきた蒸気を冷やした蒸留液が、竹酢とタールなどの混合液になる。

 最初の内はフェノールなど有害物質が多すぎて、終わりの頃はタール分が多すぎて使えないので、ちょうどいい濃さの蒸留液だけを取り分ける。薄い紅茶くらいの濃度が、竹酢成分が多くて目的に適うものだ。


『何これ、火事の時のニオイ? 染み着きそうで苦手だわ……』

 ニオイはひどいけど、比較的安全で残留もしないし、自然に優しい農薬なんだよ?

 こうして採取した竹酢は、ピレスロイドの欠点を補い、カイガラムシの蝋分を溶かしてくれる。さらには土中で分解された後に、無機肥料としても利用される。

 残った竹炭もとても良い炭なので、脱臭に、水質浄化や土壌改良に使える事を伝えて、利用方法も簡単にレクチャーした。


 ファニアンさんも最初驚いたけど、転生者である事を話して納得してもらった。もちろん他言無用である事は、しっかりお願いした。

 取り分けた最初と最後の蒸留液も、最初の薄い液は千倍に薄めて、虫除け、殺菌に。濃い液は木材などに塗って防腐、虫除けに使える事を伝えた。

 この辺りでは炭の利用自体があまり無くて、竹炭と竹酢の利用は非常に喜ばれる事になった。こちらの人は、山火事のニオイと言っていた。割と平気なニオイらしい。


 二日で必要な作業を終えて、王都に戻って来た。その間に順調に除虫菊液、ニンニク液も作って貰ったようだ。

 全ての材料を揃えて、割合を考えながら三種類の液体を混合していく。誰も口にはしないけど、すごいニオイが周囲に漂っていた。多少目に染みる感じもする。

 これ、ほんとに大丈夫なのか? とその場の皆が思っている。プリムラですら嫌な顔になってるし。


「ちょっとこれ、竹酢の時より凶悪なニオイじゃ無いの? マジで大丈夫なの?」

「うーんと、少し不安に感じてる……実際に作るのは初めてだし。って、冗談だってばっ! 大丈夫だからっ!」

 プリムラだけじゃ無くて、アルフェルや一緒に作業してくれている、エルフさんまで拳を握りしめたので慌てて謝った。TPOを考慮しない発言は、幼女と言え危険だね。


 ボクがいない間も、毎日ナウラミアから手紙が届いて、状況を伝えてくれたらしい。代わりにこちらからも作業状況を伝えて、交換日記のようになっていた。

 エフィルさんの治癒魔法は、一定の効果を発揮したようだ。喋れなかった状態が回復して、手足の震えが止まったらしい。視野狭窄も起こっていたけど、こちらは神聖魔法である程度元に戻ったそうだ。

 魔法が効果があると分かってホッとした。これなら症状が軽微な人なら、魔法だけでの回復も望めるかも知れない。



 翌日の二回目の訪問は大所帯になった。実際に殺虫剤を撒いてもらう作業と、谷底まで原液を運んでもらう男手が必要だからだ。

 原液を馬車に積み込んで、希釈液を撒く為の空の桶や柄杓、軽量用の印を付けたコップなどの道具と、向こうで食べるお昼ご飯も一緒に積む。


 作業を手伝ってくれるのは男のエルフさんが6人。いずれも王都の神官さんで、若い元気な人たちだ。アルフェルは垂れ目の可愛い女の子で、ボクも見た目は庇護欲をそそる幼女だ。手伝ってくれる人たちも悪い気はしないみたいだった。


「分かってるとは思うけど、二人とも男を手玉に取るような、悪女タイプになっちゃ駄目よ? その気があるならわたしが指導するけど」


 見た目ちんちくりんのプリムラが、なぜかドヤ顔で胸を張っていた。

 こじんまりとした胸だなとか思った瞬間に、延髄切りが炸裂する。一瞬意識が飛びかけたけど、アルフェルの胸の感触を思い出して意識を留める。

 おーけー大丈夫だ。いまさらこの程度、どうと言う事は無い。だてに何度も理不尽な突っ込みを受けていたわけじゃ無い。


 その件は良いとして、原液の希釈はボクとアルフェルが担当する事にした。濃度は重要で薬害を出さない、ぎりぎり濃い濃度を保ちたい。男のエルフさんには300倍の希釈液を撒く事に専念してもらおう。


 谷底まで続く階段を初めて見たエルフさんは、全員が目を丸くして驚いた。中には神の奇跡とまで言い出す人がいて困った。真実は教えられなくても、奇跡に近い気はするからあながち間違ってはいない。

 ノームが川を復活させてくれたので、真水の調達が楽なのは助かる。魔法で出して貰う事も考えたけど、ただでさえ体力使うのに、セレグ(生命)まで減ったら大変だ。


 イドゥンさまの姿は、男の神官さんたちにも神々しく映ったようだ。女神さまに拝謁出来たと、地に伏せて喜ぶ人までいる。そんな人にまで、今日はよろしくお願いね~なんて気さくに応じているから、イドゥンさまの人気はうなぎ上りだった。


 原液を薄めているとは言っても、竹酢とニンニクのニオイはやっぱり凄い。特に精霊は、香りを食すると言われる程においに敏感なのだ。ユールもイドゥンさまも、プリムラも作業中は顔をしかめっぱなしだった。

 もちろんボクたちもである。


 全ての薬液を撒き終わるのに、四時間ほどかかった。お手伝いのエルフさんにお礼を言って、道具を片付けて帰りの階段を登る。

 イドゥンさまは終始面白そうに、不思議そうに作業を見ていて、ボクたちが帰る時に少し寂しげにしていた。また様子を見に来ると伝えて、手を振って別れを告げる。


『ホントね? また来てくれるのよね? 嘘だったら、泣いちゃうからっ!』

 何とも憎めない人懐っこい女神さまだった。雰囲気がどことなく、暴走状態のエフィルさんに似ている気がする。


 取りあえず必要な作業は終えた。量としては十分染み込むくらいだったし、川が近くに出来た事で土壌の改善もされる。おそらく林檎の樹は回復すると思う。ピレスロイドは即効性なので、殺虫効果はすぐに現れる。

 ただしその後に追加で行う、樹勢回復の為の作業も必要だろう。今日の作業の合間に、土壌pHを知りたかったので、数カ所の土を水に溶かして上澄み液を舐めてみた。

 はっきりと酸味を感じる程だったので、pH4に近い酸性土壌は間違いないだろう。


 竹酢液がバッファーとなって、ある程度のpH緩衝作用は期待出来るけど、やはりアルカリ性の物質を散布しての土壌改良が必要だと思う。

 その為の手配は既にしてあったので、後は実行するのみだ。普通なら樹勢回復にはしばらく時間を掛けないと難しい。でも今回はあまり余裕が無い。ある程度の速効性が求められていた。


 三日後に再び訪れる事にして王都に戻る。ナウラミアと手紙のやりとりをして、それぞれ一日遅れで状況を知って、安堵したり不安になったりしながら過ごした。

 次に行う作業は、緩やかに土壌酸度を下げる事、有害物質を早めに吸着してしまう事。それから硬くなってしまった土地の再生の三つだ。


 バラエル家の伝で、ある程度の石灰岩を入手出来ていた。本当はチョークに使いたかったけど、優先順位を間違えてはいけない。焼いて生石灰(酸化カルシウム)を作って、それを粉にして水に溶かして水酸化カルシウム溶液を作る。

 濃度は0.5%ほどの極薄いもので良いので量は必要ない。それに水飴を薄く溶かして、即効性の栄養剤を作る。人に例えるならブドウ糖の点滴みたいなものだ。これで酸の中和と活力補助を図る。


 中長期的な土壌改良の手段には、消石灰をまぶした竹炭の粉を撒く。地下水が行き渡れば、下から酸性の水が上がってくる。これにある程度の期間対応する為だ。

 土壌の環境が正常になって、微生物や小型土壌動物と呼ばれるヒメミミズ、トビムシ、カニムシ、ハネカクシなどが増えてくれば、自然に土壌pHも落ち着くだろう。その為には十分な腐植も必要になるので、森から腐葉土も集めていた。


 全ての準備を整えて、また男手に頼って林檎の樹を訪れる。今度はそれ程量も作業も多くないので、三人くらいでいいとお願いしたのに……

「ヌァズェ、増エテルゥンディスカァ~」

 オンドゥル語になってるってば。参加した男のエルフさんが、神官さん以外も含めて二十人規模になっていた。


「ありがたいとは思うんだけど、これでは遠足みたいね~」

 困った笑顔で休憩の飲み水を配るアルフェルも楽しそうだった。何より一番楽しそうだったのは、イドゥンさまだったのだけど。

 力のある人に深い穴を掘ってもらって腐葉土を埋める。林檎の樹の周りの何カ所もそれを行って、根に空気を送る経路を確保する。栄養剤兼中和剤の薬液も、みんなで全体にまんべんなく撒いた。


 こうして二回目の作業を終えて、三度目の訪問は半日と掛からずに終了したのだった。これからさらに三日空けて様子を見る事にしたい。

 ふと足下に緑の二葉を見付けた。最初の殺虫剤の水分で、幾つかの種が芽生えていた。ちょっと気の早い、でも嬉しい発見だった。

 きっと今回は上手くいく、そんな予感がした。


 王都に戻って、疲れた身体を休めようとベッドに潜る。何の気なしにプリムラに呼びかけて、彼女の姿が見えない事に気付いた。アルフェルと話す事でもあるのかな?

 幼女の身体は眠気には勝てない。戻ってこない彼女を気にしながら、いつしか眠りについていた。


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