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夢幻星

作者: ショッピー

 僕が個人用宇宙船に乗ってたどり着いたのは、見たこともない絶景が広がる小さな惑星だった。この惑星丸ごと天然記念物に思えるほど美しい情景だった。まだ開拓されていない星だ。多分人もいないだろう。僕はこれまで数々の星を見てきたけれど、人がいる星からは匂いがするのだ。得体のしれない匂いが。しかしこの星からはそんな匂いは発せられていない。僕は心躍らせた。

 僕の目の前には草原が広がっていた。一面の緑だった。遠くに見えるのは巨大な山。渓谷も見えた。空には虹が架かり、白鳥が駆けている。まるでドキュメンタリー映画を見ているかのようだった。風が吹き抜け、僕の髪は揺れる。息を大きく吸う。肺は美味い空気で満たされた。僕の故郷の人工都市にはこれほどおいしい空気はなかったし、美しい自然も存在しなかった。あの町は排気ガスと高層ビルで成り立っていたから。僕の暮らしは満足いくものだったけれど、そんな街に嫌気がさして出てきた。それ以来、自分が本当に住みたい場所を探して宇宙を飛び回っている。僕はこの星なら自分にぴったりではないかと思い始めていた。


 何もすることが無かった僕は、とりあえずこの星を探索することにした。宇宙船にパスワードロックをかけ、歩き出した。周りに建物などは無く、やはり人間はいないようだった。何もない草原をただ歩き続けた。こんなに綺麗な場所なのに、なぜ人間が一人もいないのだろう。僕と同じように宇宙を旅する人はそれこそ星の数ほどいるのに誰もいないなんて。観光地になってもおかしくないのに。開拓されるのは嫌だけれど。

 しばらく歩くと、森が見えた。針葉樹に囲まれた薄気味悪い森だった。太陽のもとをずっと歩いてきたので暑くなった。少し涼もうと、僕は森に足を踏み入れた。入った途端、周りから音という概念が消えた。それまで風の音や鳥の声などが聞こえていたが、森に入った瞬間にすべてが消えた。

不思議だったが僕は奥へと進んで行った。開拓されて無いので歩きづらかったが、腰にぶら下げているナイフを使って何とか進んだ。途中木の枝にぶら下がっているフクロウに睨まれ悲鳴を上げそうになったが、特に何もなかった。

 暗い森の中に光が差し込んでいる場所があった。行ってみるとそこには小さな湖があった。太陽の光に照らされてキラキラ光っていた。僕はそこで少し休むことにした。

心地良い風に暖かい木漏れ日。寝転がっていた僕は、うとうとし始め、知らぬ間に寝入ってしまっていた。

それからどれくらい眠っていたのだろう。目が覚めた時、僕の隣には少女が立っていた。この星に人間がいることに驚いたが、それも気にならなかった。彼女が今まで見たこともないくらいに美しかったからだ。大きな瞳に透き通るような白い肌。銀色の細い髪の毛が映えていた。華奢な体つきで少し背が高かった。白いワンピース以外は何も身に着けていなかった。そんな彼女に僕は見とれていた。

「いつからここに?」僕は尋ねた。

しかし彼女は何も答えず遠くを見つめている。

「この星の住人なのかい?」

またしても答えない。

しばらくの沈黙の後、彼女は僕に手を伸ばした。何も言わなかった。

僕は彼女の手を握った。

彼女は僕が立ったところを見ると、ゆっくりと歩き出した。どうやら僕をどこかへ連れて行くつもりらしい。僕はついて行くことにした。


 彼女は軽い足取りで森を進んでいった。ごつごつとした岩もお構いなしに登っていく。川を渡るための丸太の上も、不安定なはずなのに体制を崩さず進んでいた。僕はと言うと、途中で息が上がってしまった。そんな僕を気遣って、彼女はスピードを緩めてくれた。やさしい子だな、と僕は思った。


 冒険小説さながらの冒険の果てに、彼女と僕がたどり着いたのは、洞窟だった。

ただの洞くつではなかった。水晶のような宝石の塊がところどころにある、とても幻想的な空間だった。

紫色の光で満ちていた。宝石が光を発しているのだ。

彼女は僕をここに連れてきたかったのだ。

「ありがとう」僕は短めに言った。

すると彼女は微笑んだ。

絵画に描かれているような笑顔だった。僕は心の中から、今までの嫌な事や怒りがすっと消えていくのを感じた。彼女の笑顔は魔法だった。

「君の名前はなんていうの?」

「わたしは・・・」

彼女が言いかけたところで突然視界が真っ暗になった。僕はパニックに陥った。

何が起きたのか理解できなかった。

目を開けるとそこには信じられない光景があった。土が怪物みたいに盛り上がって僕を食べようとしていたのだ。気づいたのが遅かった。僕の体はもう土にのまれていた。

僕は恐怖に動くことができなかった。ただこの星に来ただけなのに、なぜこんな目に合わなければいけないのか?僕が何をしたって言うんだ?土はやがて僕の顔を埋めてしまった。

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁ」

また視界が真っ暗になった。

 昔、本で読んだことがあった。眠った者に甘い夢を見させ、その間に眠った者を食べてしまうという惑星があるらしい。

その名も夢幻星。

 

 今回はSFチックなホラーです。美しい星に潜む罠。美しいバラには棘があると言いますしね。結構気に入ってます。

少し短めだったので1時間ちょっとで書けました。春休みなのでこれからもドンドン書いていきたいと思います。

感想、アドバイスお待ちしています。

ではでは。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短い文字数の中でしっかりとまとまっていて、大変読みやすかったです。 [気になる点] 少し物語の展開を求めすぎて、主人公の言動や行動が強引に思えました。 [一言] 以前、メッセージを頂いてい…
2013/05/08 21:23 退会済み
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