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ふと気が付けば、あたしは2階の部屋で横になっていた。
え?
夢??
知らないうちに眠っていたのか……。
疲れで重たい身体を無理やりに起こすと、自分が喪服のまま眠ってしまったことに今更ながら気づいた。
2階の部屋には誰もいない。
お父さんも……
お母さんも……
誰もいない……
ついにあたしは一人きりになってしまった。
ふと気が付くとあたしは部屋の片隅に置きっぱなしになっているアルバムがあるのに気づいた。たぶん、遺影に使うものを選ぶとかで、誰かが出したのだろう。
なんとなしにあたしはそのアルバムに手を伸ばして中を見た。
あたしの目に最初に飛び込んできた写真は衝撃だった。
あのカップル……。
あたしのお揚げを食べて『美味しくない』といったあのカップルだった。
それは紛れもなくお父さんとお母さんの若い頃の写真だった。
あたしはお父さんとお母さんの若いころの写真を見るのは始めてだった。
ふと……
なんで見なかったのだろうと考える……
特に理由は思い当たらない。
なんか、今までそれどころではなかったからだ。
何気なくアルバムのページをめくる。
次のページにはもう随分前に亡くなったおじいちゃんとおばあちゃん、若い頃のお父さんとお母さんがお店の前で撮った写真だった。
確か、母方のおじいちゃんとおばあちゃんに暖簾分けしてもらったのがうちのお店だと聞いたことがある。
写真に映っているお店の名前は……。
『明日葉』だった……。
目から涙が落ちてきてとまらなくなっているのを感じた。
心の底から寂しかった。
泣いてどうなるわけでもないけど、涙が止まらなかった。
あたしは誰もいない部屋の片隅で声を上げて泣いた。
でも……
泣くのは今日だけ。
苦しくて悲しくて寂しくて仕方ないけれど……泣くのは今日だけ。
あふれる涙をぬぐいながら、誰もいない寂しい部屋であたしは決意した。
明日からは教えてもらったきつねうどんを作ってお客さんに喜んでもらおう。
明日葉が今日抜いても明日には生えてくるようにあたしももっと強くなろう……と。
(了)




