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旅人がガラリと音を立てて障子を開くと、女が後ろ向きに座っておった。


旅人は言った。

『こちらを向いて顔を見せてもらえないでしょうか?』


女は答える。

『最後にもう一度言うが見ない方が良いぞ』


旅人はそれを聞いてしばし考え込んだ。

もし、女が本当にあばた顔であったならば、それは女にとても悪い事をしているのではないかと。


女は旅人の心を見透かすように言う。

『思慮深いというのは良い事じゃ』


そして女は背中を向けたままくすりと笑ったようだった。


旅人は言った。

『どのような姿であっても決して怖がったりはいたしませんから、顔を見てきちんとお礼を言わせてはもらえないだろうか?』



女は、ほうと呟くとこう言うた。

『もし我の顔を見ても怖がらないのなら、我を一緒に旅に連れて行ってはくれないか?

 我は長い事をここにいて退屈しておったところなのじゃ』


そう言って女は後ろ向きのまま旅人の方に手を差し出した。



旅人は物凄く醜悪な面構えの女人が始終自分の側にいる事を想像してそれは少しばかり愉快ではないなと思うた。

だから女がここに留まるようにすすめるのじゃった。


『いやしかし旅は女人には大変かと思います。

 無理な事はせんでここにおった方が貴方様のためによろしいのでは思います』


『そうか、ならば旅に連れて行ってくれなどとはもう言わぬ』



それから女は扇子をパラリと広げると顔を隠して目を瞑ったままゆっくり振り返った。


そして振り返った女の美しさに旅人は腰がぬけるほどおったまげたのじゃ。



旅人は取り繕うように話しかけた。

『貴方様はまるで天女のように美しいではありませんか。眼を開いて扇をずらしてしかと顔を見せてはくれませんか。

 いやいやそれより先程の話ですが、どうかワシと夫婦になって一緒に旅にいってもらえませんか』



それを聞いた女は

『調子のよい殿方だのう。我は好かん』

というやいなや、くわっと眼を見開いた。



そして旅人は女の鋭い眼光を一目見ただけで心臓がぐっとつかまれその場に倒れ込んでしまったのじゃ。


サイト“へのへののもへじ/紳士と熟女のための挿絵のある童話”より、文章のみ(少々修正を加え)お引越ししました♪



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