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最強守護神ふくシリーズ

拾った黒猫が最強の守護神だった件 ~でも国よりちゅーるを優先します~

作者: モカ
掲載日:2026/05/12

 王城は、燃えていた。


「西門が突破されました!!」


「魔王軍、第二陣接近!!」


「避難が追いつきません!!」


 怒号。


 悲鳴。


 泣き声。


 玉座の間では、大臣たちが顔面蒼白で地図を囲んでいた。


「……終わりだ」


「もう持たん……」


 王が、震える声で呟く。


「守護神様は……まだ来ないのか……」


 その時だった。


 ぽてぽてぽて。


 妙に気の抜けた足音が響く。


 全員が振り返る。


 そこにいたのは――黒猫だった。


「……猫?」


 ふくは欠伸をした。


『うるさい』


「しゃ、しゃべっ――」


『騒音は健康に悪い』


 場が静まり返る。


 王だけがガタガタ震えていた。


「ま、まさか……守護神様……?」


『うむ』


 ふくは玉座へぴょんと飛び乗った。


 そして、ぺしぺしと肉球で地図を叩く。


『まず、この城は動線が悪い』


「ど、動線?」


『避難経路、補給、伝令。全部ぐちゃぐちゃ』


 大臣たちがぽかんとする。


『厨房と医務室が遠すぎる。無能設計』


「無能設計って言った!?」


『あと階段が多い』


「そこ!?」


『猫に優しくない』


「知らんがな!!」


 ふくは尻尾を揺らしながら、地図の一点を叩いた。


『敵はここから回る』


「なぜ分かる!?」


『我ならそうする』


「魔王軍目線!?」


 次の瞬間。


 城壁の外から爆音が響いた。


「報告!! 敵軍、本当に北東から――!!」


 玉座の間が凍りつく。


 王が青ざめた顔でふくを見る。


「……す、すべてお見通しなのですか」


『うむ』


 ふくは当然みたいに前足を舐めた。


『千年前に見た』


「その経験値ズルいだろ……」


 ユキトだけが頭を抱えていた。


 ◇


 数分後。


 王国軍は、ふくの指示で布陣を変更。


 結果。


 魔王軍、壊滅。


 終わりである。


「か、勝った……?」


「助かったぞ!!」


「守護神様万歳!!」


 兵士たちが歓声を上げる。


 だが。


 当の守護神は。


『腹減った』


「さっき敵軍消し飛ばした直後だぞ!?」


『運動した』


「猫基準で喋るな」


 王が、おそるおそる近寄ってくる。


「あ、あの……褒美を用意いたしますので……」


『ほう』


 ふくの耳がぴくっと動いた。


「黄金百枚でも、宝石でも――」


『ちゅーる』


「えっ」


『あと高級猫缶』


「世界最強の願いが軽い!!」


 ふくは真顔だった。


『あと、予算配分を見直せ』


「予算?」


『軍費を削れ』


「なっ!?!?」


『ちゅーる備蓄庫を作れ』


「ダメだこの守護神!!!」


 玉座の間にツッコミが響く。


 なのに誰も逆らえない。


 逆らったら国ごと消えるからである。


 ◇


 その夜。


 戦勝祝いで騒がしい城下町を見下ろしながら、ユキトはため息をついた。


「……なんでお前、そんな偉そうなのに、うちだとずっと鍋の前で寝てるんだ?」


『落ち着く』


「王城の方が絶対いいだろ」


『床が硬い』


「そこなの!?」


『あと、おぬしの部屋は日当たりが良い』


 ふくは窓辺で丸くなる。


『昼寝に適しておる』


「基準が猫なんだよなぁ……」


 静かな夜風が吹く。


 遠くで鐘が鳴った。


 世界最強の守護神は、小さく喉を鳴らす。


『……平和が一番だ』


「お前が言うと重いわ」


『うむ』


 そう返事をした直後。


 ふくは三秒で寝た。


「早っ!?」


 ――これは。


 世界最強なのに、

 布団とちゅーるに支配された守護神と。


 振り回される青年の。


 ちょっと騒がしい日常譚。

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