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Dying life  作者: 朱鷺
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私は毎日自分を殺す。

今日も粉に塗れて紛らわす。


 ひたすら塗って塗って塗って塗って塗って塗って塗って塗って。その顔で生きることに焦がれているはずなのにこの手から作り出された私を今日も壊す。

 

 いつも通りの日常が壊れたのは高2の時だ。寝苦しいほど暑い夜に寝返りを打ちながら睡魔を待っていた。次の瞬間私の体の左側に突き刺すような痛みが走り目が覚める。混乱と同時に火事だと理解するより早く玄関に向かって走っていた。


私の全てが終わった。


カウンセラーが聞いてくる。

「燈火さん最近は何か変わったことはある?」


「いい加減何年もこの強制されている時間が苦痛です。先生もそうかもしれませんが。変わりなく普通の生活を送っています。それ以外は特にありません。昔のように喚き散らしている方がモルモットのように観察対象として興味が湧きますか。何年も毎週同じ人間と話す話題があるような有益な生活は送っていないので。今日もあと45分ほど無駄な時間を過ごして帰ります。」


「そう。モルモットだとは思ったことはないけど、なぜだか昔のあなたの方が人間らしくて今は人形のように完璧に見えるから逆に心配しているだけよ。

どうしてカウンセリングが50分か知っているかしら、カウンセラーに依存させ過ぎず、集中力が切れない程度に決められた時間よ。短くする例は少ないわね、クライエントに長引かされてしまうことはあるけれど。あなたとは5年ほどになるけれど、ここまで依存心が少ないのはあなたくらいね。それじゃあ今日もあと40分雑談して終わりましょうか。何か思いついたら教えてね。」


「ありがとうございました。失礼します。」

こうは言ったものの感謝などなく、早く部屋に帰りたいとしか思わない。


ひたすら頭を巡るのは今日はどうやって殺そうか。それだけだった。


今日はロープで首を絞めよう、今日は手首を切ろう、今日は腹を包丁で刺そう、頭部を殴ろう、股から割いてみようか、頭部を切り落とそうか、洗剤を飲ませようか、農薬を飲ませようか、血をひたすら抜いてみようか、血管に空気を入れようか、凍死か、過剰摂取か、


顔を焼こうか。


木造アパートの自室に入り鍵をかける。中で待っているのは何も手を加えられていないマネキンだ。冷たい肌触り、今日のは首つきのトルソーだから上半身しかない。上半身だけで殺すにはどうしたらいいか考えを練りながら自分の髪で作ったウィッグをつける。その後やすりをかけ、輪郭を整えて、絵の具で自分に瓜二つな顔を作っていく。最後に火傷跡以外の部分をメイクしたら終わりだ。

どれだけ見慣れようと醜く変わり果てた顔の左側は私にとっての「死」であることに変わりはない。

今日は久しぶりに初歩の首吊りにしようと思いロープを取り出した。結び慣れた手つきでよく見る形に結んでいく。なんという結び方だったか、そんなことを考えていたら結び終わった。トルソーならドアノブでいいのが少し殺しやすいと思った自分に少し変な気分になりながら縄に首を通してドアノブにかける。トルソー単体では軽いので自分の体重もかけながらギリギリと首を絞めていく。明らかに死ぬまでやってやっと手を離す。


今日の私を殺すのは終わりだ。

やっと安堵感がやってきた。引き出しの中でひっくり返してあった手鏡を持って自分の顔を見てあんな痕がないことを確認してから手鏡を引き出しに戻す。この部屋には手鏡が一つあるだけでガラス製のものもないに等しい。あぁ、疲れた。あとはお風呂に入って寝るだけだ。今日も何事もなく平和だったな。

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