5.情報収集
ヘンデルに入った俺は少し街を散策してみた。
薬屋、装備屋、宿、ギルドハウス、酒屋…。
思った通りの配置でお店が並んでいた。
「情報収集なら酒屋かギルドハウスか…。」
なら、とりあえず酒屋だな。
俺は元の世界から来たという事実を言うべきなのかどうかを迷っていた。
変な人扱いされて警察がいるのかは分からないが警察沙汰にでもなったら大変だからだ。
「おう、いらっしゃい。」
酒屋に入るといかつめの叔父さん店主が出迎えてくれた。周りを見渡してみると2.3人のグループがちらほら。10人程お客さんがいた。
とりあえず俺はカウンターに座り注文を済ませる。
「お任せで。」
店主は了解。と言うと後ろを向いて色々なリキュールなどを混ぜ始めた。
それを確認すると俺は周りの会話に耳を済ませた。
いきなり話しかけるのも怖いし何かいい情報でもないかと思ったのだ。
出てくるワードはレベル上げの事や、家の子供の話し。最近森で強いモンスターに出会った話し等だった。
強いモンスターは気にはなるが、心当たりはある。
ここがヘンデルでその傍の森だったらゲームの中でも1匹だけ強いモンスターがいるのだ。
それから色んなグループの話しを盗み聞きしていたが元の世界のワードは出てこなかった。
「お待ちどうさん。」
気付けば店主がお酒を作り終わり俺の前へと出してきた。
透き通った青い綺麗なカクテルだ。
「ありがとうございます。」
「ーーっ!」
甘かった。元の世界ではお酒が弱かった俺だがこの世界なら行けるかと思っていた。
だがこのカクテルは最低でもアルコール度数30度はあるのではないだろうか。
だがここで引くわけにはいかない。
お任せとカッコつけて言った手前飲まないわけにはいかないのだ。
ちびちびとお酒を進めていると店主の方から声をかけてきた。
「あまり見ない顔だが冒険者かい?」
「はい、そうです。まだ冒険者になりたてですが。」
「ははっ!そうだろうな。基本的には冒険者は20歳からしかなれないからな!」
店主は豪快に笑いながらそう言った。
なるほど、確かに俺は今23歳だが周りからは少し若く見られる顔立ちだ。
「それよりも店主さん、この街は長いんですか?」
「あぁ、俺はこの街出身だからな。一時は冒険者を夢見て他の街へも出てたが諦めて帰ってきて今はずっとこの酒屋を営んでるよ。」
「なるほど、ではこの街の人はやはりこの街出身の人が多いんでしょうか?」
「そうだなぁ。クエストとかで用事があってこの街に来る人はいるがこんな街にしょっちゅう顔を出す人はこの街出身が多いだろうなぁ。今ここにいるお客さんらも全員常連で全員ヘンデル出身だよ。」
お、有益な情報が得られた。
ここにいるのは全員がヘンデル出身か…。
店主から転生のワードが出てこない所を見ると、少なくともよくあることではないのでは、という憶測が立つ。それか俺のように素性を明かさないかどちらかだろう。
「ま、ゆっくりしていきな!この街のクエストは比較的優しい方だからな。冒険者なりたてならギルドハウスで色々聞くといいだろうよ。」
店主は豪快に笑いながらそう言い残し他の席へと向かっていった。
俺は残りの酒を飲みながらもう1つ試して見たかったことを行った。それは周りの人のステータスを見られるか、だ。
だがそれは簡単に出来てしまった。
周りの人を見ながらイメージしていると簡単なステータスが表示されたのだ。
角谷 遥 Lv3 魔道士
鈴木 卓 Lv7 アーチャー
藤崎 慎二Lv4 プリースト
安東 勇気Lv8 フレイムウィザード
近くにいた4人がこのステータス。
攻撃力などの細部は表示されないようだ。
やはりヘンデルにいる人はレベルはこのくらいか。
だがフレイムウィザードとプリーストは中級ジョブだ。ゲームでは少しレアなジョブだったが、案外この世界では中級ジョブの人もいるのかもしれない。
なんとなくの情報を得られたのと試したい事が試せたので、残った酒を勢いで飲み干し酒屋を後にした。