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魔王を倒した元勇者、元の世界には戻れないと今さら言われたので、王国を捨てて好き勝手にスローライフします!  作者: あけちともあき
スローライフ一年目

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第80話 式の準備RTA

 式をやると決まったら早い。

 俺はカトリナを連れて、ぴょいっと王都に飛んだ。

 仕立て屋の扉を叩くと、ドレスは完成しているという。


「カトリナ、着てみるのだ」


「う、うん」


 店の奥に引っ込んだカトリナ。

 しばらくして、めちゃくちゃ可愛いくて綺麗な、青と白のドレス姿でやって来た。


「うわあっ、可愛い!! 世界最高に綺麗だ!!」


「うひー、て、照れるー!」


 カトリナがモジモジした。

 ウエスト部分のコルセットが無いので、胸の下からふんわりと、ドレスが広がるタイプの作りだ。

 腰回りまではちょっとだけ絞ってあり、そこから花が開くように、スカート部分が大きく広がる。


 これがもう、白を基調として青が実に的確に散らされてて綺麗なのだ。

 いつもは健康優良児っていう感じのカトリナが、どこかのお姫様みたいに見えるな。


 ちょっと日焼けしてたくましいお姫様だ。


「時に仕立て屋さんや」


「なんでしょうか」


「これの着付けは難しくはない?」


「ちょっとコツが必要でして」


「よし、着付け方法を頭の中で思い浮かべてくれ。読心魔法と記録魔法で、マニュアルを作る」


「は、はあ。では……」


 ということで!

 着付けの方法はマスターした。

 これで、勇者村の女性陣も問題なく、着付け補助ができるようになるだろう。


 次にごちそうの用意である。

 いつもの猪でもいいのだが、ここは特別な肉も食べたいし、何より村のみんなに振る舞いたい。


 なので、手前村で牛を一頭買った。

 ナムナムと冥福を祈った後で、その場でスパッとやってお肉にする。

 それを、アイテムボクースに放り込むのだ。


「ショート、お肉作り、すごく早いね……!?」


「俺がやればこんなものだ。だけど、全部俺がやる訳にはいかないし、肉づくりもできる人が多いほうがいいだろ? 一番できる人が何でもかんでもやったら、組織は育たんのだ」


「あー、確かにそうかも。ピアちゃん、最近腕を上げてきてるってお父さんも言ってるしねえ」


 好きこそものの上手なれ。

 ピアは食欲のため、一番美味しくなる肉のカットを試行錯誤しているのだ。

 あれは村一番の肉職人になるぞ。


 その他の野菜類は全部村で自給できる。

 ハーブすらあるからな。既に乾燥させてスパイスにしている。

 肉だけ手に入れればいい。


 こうして、手前村を後にした。


 勇者村に戻ってくると、ヒロイナと侍祭娘の三人組が、わちゃわちゃと式の準備をしている。

 ここに俺も参戦した。


「飾り付けの指示を出すがいい! 俺がやる!」


 レベル上限を突破した俺は、通常の人間では不可能な速度と正確さで飾り付けを行えるのだ。


「うっわ、超便利……!!」


「今回だけだからな!」


 ヒロイナに便利扱いされつつ、猛スピードで飾り付けを行い、ついに侍祭娘たちが作った飾りを全て飾り終えた。

 ほんの十分ほどのことである。


 ここから外に飛び出す。

 図書館に飛び込む。


「ブレイン! カタローグ!」


「おや、どうしたんですかショート」


「お急ぎのようで」


「婚礼について書かれた魔本はどいつだ? あと、ブレインはそれと最新の婚礼のやり方を教えてくれ」


 勇者村最高の知性がここに集う!


「何を急いでいるんですかショート」


「ドレスをもらってきたからな。体型が合ううちに式を済ませたいのだ。あと、今が一番カトリナのテンションが高い」


「なるほど、それで魔王討伐時代と同じように、大急ぎで行動しているのですね」


 ブレインが懐かしそうな顔をした。

 ああ、そうか。

 これは魔王と戦っていた三年間と一緒なのだな。


 同時に複数のクエストを並行して進め、それをやりながら社会に食い込んだ魔王の手下と社会戦を繰り広げ、隙間時間で魔法を開発する。

 自然と、俺が作った魔法はシチュエーション特化のものになった。


 いやあ……あの頃には二度と戻りたくないな。

 それに比べれば、カトリナとの結婚式のために奔走する今の、なんと楽しいことか。


「ショートが嬉しそうで、あの頃とは大違いだと私も分かります。とてもいいことですよ。さて、どうやら魔本のチョイスも終わったようですね。私も講釈を始めましょう。端的に述べていきますから、メモしていって下さい」


「おう、助かる!」


 かくして、婚礼のマナー云々はOK。

 これをカトリナでもやれるようにブラッシュアップして……。


「ショートさん、お願いされた蝶ネクタイ? こんなもんでどう?」


「いいね!!」


 縫い物をお願いしていたミーが完成品を見せに来た。

 いい出来である。

 我が村で採れた綿を使い、糸にして織って作った、勇者村製蝶ネクタイ。


 参列者はこれをつける。

 よしよし。

 俺の自己満足でしか無いが、なんとなく格調高い式っぽくなるだろう。


 これで参列者の準備も終わり。


「ねえ、一個だけもらっていい?」


「いいけど、どうするんだ?」


「ビンにつけてあげるの。絶対可愛いから」


「なるほど……!!」


 それは、フックとミー夫妻の楽しみとして差し上げるとしよう。


 かくして、式の準備は整った。

 リハーサルもした。


 ドレスを着て、教会の真ん中の道をしずしず歩くカトリナは、ちょっと恥ずかしそうで、そして始終ニコニコしていた。

 司祭として、対応するヒロイナはさすがプロの顔である。


「ユイーツ神の名のもとに、いかなる苦難の時も、あなたは夫を愛し続けることを誓いますか」


 とかキリッとした表情で言うんだからな。

 やはり彼女の実力は超一流なのだ。


 周囲で見ていたちびっこ侍祭たちも、目を丸くして感心していた。


「司祭様のかっこいいところ初めて見た……」


「ほんとうの司祭様だったんだねえ」


 普段、あの子たちにどんな姿を見せているんだ……?


次回は結婚式ですよ!


やるじゃん!と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】からスーッと星に色が付いてるやつを増やしていっていただけるとありがたいです。

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