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魔王を倒した元勇者、元の世界には戻れないと今さら言われたので、王国を捨てて好き勝手にスローライフします!  作者: あけちともあき
スローライフ四年目

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400/500

第400話 来る乾季!

 朝起きると、雨雲は一切なかった。

 空は晴天。

 カンカン照りの太陽。


 そして昨日までとはぜんぜん違う、カラッとした空気。


「乾季だ!!」


 俺は外に飛び出し、叫んだ。

 勇者村は熱帯にあり、乾季と雨季がある。

 今までは雨季、今日からは乾季。


 勇者村の仲間たちも、どんどん飛び出してきた。

 朝飯ができる前に、太陽の光をいっぱいに浴びてちょっと仕事をするのだ。


 肩慣らしに地面を掘り返したり、雑草を引っこ抜いたりしていると……。


「ごはーん!!」


 カトリナの大きな声が響き渡った。

 男たちがわーっと食堂に戻っていく。


 ずらり並んだ、本日の朝ごはんは大鍋のおかゆに適当な保存用食材をぶっこんで自由にカスタムし、好き勝手に食うやつである。

 お椀におかゆが盛られ、みんなでガツガツ食う。


 おかゆな理由は簡単で、雨季の間に残った保存食をこの数日で一気に消費しようという試みなのだ。

 おかゆは薄味だから、保存食の濃い味が非常にマッチする。

 食べて食べて食べて食べる。


 塩気が濃くても、どうせ昼間の仕事でガンガン汗をかくから問題ない。

 ちびっこたちには、ドライフルーツとおかゆの組み合わせが大人気だ。


 俺も日本にいた頃は、おかゆに甘いもの? なんて違和感を感じたもんだった。

 だが、イギリスなんかではオートミールとかおかゆみたいなのにジャムを垂らしたりするそうじゃないか。


 似たようなものだ。

 こっちではドライフルーツをおかゆに浸けて食ったりする。

 慣れるとまあウマい。


「んまま!」


 マドカが猛烈な勢いで食べる。

 親はちびっこたちのために、ドライフルーツを細かく切り分けてやったりするのだ。

 ちびたちはこれをひたすら食う。


 勇者村の子どもたちは、食が細い子でもあまり好き嫌いなく食う。

 色々な要素が魔法で説明できる世界なので、アレルギー的な概念も無いらしい。

 そこは便利だよな。


 マドカの他には、バインが食う。大人顔負けに食う。

 ちびっこ筆頭のこの二人に引っ張られて、他のちびたちも食べるのだ。


 離乳食を食べだしているダリアなどは、じーっとバインが食うさまを眺めてから、自分もあーんと口を開ける。

 そこにヒロイナが、冷ましたおかゆを放り込むのだ。


 あのちっちゃかったダリアも、よく食べるお兄さんお姉さんたちに囲まれて、つられてめちゃくちゃに食べるようになった。

 お陰で体もどんどん大きくなっている。


 ちびたちを食べさせつつ、父親と母親でバトンタッチし、タイミングを見ながら食う。

 マドカは放っておいてもガンガン食べ続けるから、うちはかなり楽な方。


 先にパクパクパクっと自分の分を食べたカトリナは、他のちびっこに食べさせる役割を買って出たりしているのだ。

 そんなこんなで、楽しい朝ごはんは一時間くらいゆっくり食べて終了。


 三十分ほどの食休みの後、作業開始である。

 水路にたっぷり張られた水の中、たくさんの魚が泳いでいく。


 みんなこれを釣りたそうに眺めつつ、午前中は畑作の時間と決まっているので仕事に従事する。

 好きなことはやるべきことをやってからな。


「畑仕事は村を維持する大切な仕事。ルーチンワークになってきて面白さも減ってるかもだが、こいつはちゃんとやってかないとな。昼になったら、水路で釣り大会でもしよう! 俺は見学な……」


 うおーっと盛り上がる村人たち。

 仕事の後にはご褒美も必要なのだ。


 まあ、うちの村、午前中の仕事さえきっちりやれば後は何をやったっていいんだが。

 こんな感じで、勇者村の四年目が終わる。

 もうすぐ五年目か。


 感慨深いなあ……。


 遠くで、炭焼の煙が上がっている。

 木を切り出していたゴーレムたちと目が合った。


『おーい炭焼小屋は』

『灼熱地獄でーす』

『水分なくなっちゃうよー』


「お前ら暑さ感じないだろうがー!」


 にこやかに挨拶を交わす。

 しばし畑仕事をしていると、変わった帽子を被ったちびっこ軍団が走ってきた。

 まるで、帽子に傘がついたような……。


「あ、日傘かあ! どうしたんだマドカ」


「くさむしい!」


「草むしりか! そうか、みんなお手伝いする年頃になって来たんだなあ」


 ちょっとじーんと来る。

 ちびっこたちは、きゃあきゃあわいわい騒ぎながら、草をもりもりむしっていく。


 すると、すぐ近くまでやって来ていたホロロッホー鳥たちが草をむしゃむしゃ食った。

 こいつらは雑食だからなあ。


「なんか懐かしいなあ。俺もこっち来た時、もうちょっと年上だったけど、それでもガキだったから、草むしりくらいしかできなかった」


「おっ、アムト。そうだな。お前はでかくなったもんなあ」


 最近すっかり大人びてきたアムトである。

 実家からも独立して、リタと一つの家庭を築いている。


「で、どうだ。できそう?」


「村長もそれ聞くんですか!?」


「だって村の一大事じゃないか。人が増えれば増えるほど、できることだって増えてくんだ。何より、賑やかで楽しくなる」


「あ、それはそうですね。へへ、まあ、その、そんなにお待たせしないと思います」


「そうかそうか……」


「フーとピアのところはもっと早いかも知れないですけど」


「あー! この間グーの家に行ったら、ずっと励んでたもんなあ。あの二人はパワフルだからな」


「ですよねえ」


 そんな話をしつつ、太陽が空の真ん中に来たのを悟る。

 午前の仕事も終わる時間だ。


「よーっし! みんな、ここで仕事は終わり!! 本日は昼飯の後、釣りをするー!!」


 五年目の勇者村も、楽しくやっていこうじゃないか。


かくして、四年目終わり!

次回から五年目となります。

マドカとトリマルの、大陸沈没!ドッカンバトルはやりませんw


コミックスが発売しました!

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ぜひぜひご一読あれ!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 祝400話!こういう村の共同生活描写が微笑ましく楽しく感じられます。新章にも期待!
[一言] 祝!400話達成!! 村人もいっぱい増えて、5年目も楽しくなりそうですね。」
[一言] 村も大きくなりましたなぁ。
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