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魔王を倒した元勇者、元の世界には戻れないと今さら言われたので、王国を捨てて好き勝手にスローライフします!  作者: あけちともあき
スローライフ四年目

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第371話 ミーのとこで先に生まれた!

 ミーが産気づいた!

 きたーっ!!


 ポチーナとショータに続く、赤ちゃんラッシュ第二弾だ。

 きっと呼び水になって、カトリナのお腹の子も出てくるだろうなーと思う俺である。


 何かあれば呼ばれるであろうから、俺はまったりと生まれるをの待つ。

 フックが不安げにうろうろしている。


「落ち着くのだフック……」


「いやさ、二回目になっても慣れないよな。あー、心配だ心配だ……」


「心配は今しかできないもんな。いつでも俺が助けに入れるように構えているぞ、ちなみに俺に助けられると祝福されるから大変なことになる」


「大変なこと……!?」


「なんか生まれつき宿命とか運命みたいなものを得ることになる」


「うわあ、いやだなあ! ……ってことはもしかしてビンは」


「今気づいたか。済まんな……! すっごい祝福を受けて何かものすごい宿命を背負った子になった」


「あー……それであそこまで出来がいいんだな。俺の子どもなのに、なんであんな凄いのが生まれたんだって思ってたら……」


「あの頃は俺も自分の力に無自覚だったからなあ。ビンとうちの子とショータが祝福を受けた感じになってるな」


「ショータは、まあ仕方ないよな。村長にあやかった名前を付けようって気持ち分かるもの。それで祝福を受けちゃうのはもう通り魔だよ」


「わっはっは! 祝福の通り魔だー」


 すっかり和やかになってしまった。

 そうこうしていると、オギャーッ!!という物凄く大きな泣き声が聞こえてきた。

 このパワフルさは……。


「生まれたー!」


 フックが家の中に飛び込んでいく。


「男の子だー!!」


「おとこのこだー!」


 フックの叫びを真似して、どこからかビンもやって来て叫んだ。


「おお、ビンは心配してうろうろしてなかったのか」


「あのね、おとうとがね、おなかのなかにいるのはしってたんだよ」


「知ってたのか!」


「ママもげんきでねー、おとうともげんきでねー。だからぜんぜんしんぱいしてなかった!」


「驚くべき念動力の力!」


 ビンは念動魔法に関して、俺を凌ぐエキスパートである。

 謎の手段で母体と弟の安全を察知していたというわけだ。


 フックが赤ちゃんを抱っこして出てきた。


「ビン! 見ろ! 弟だぞ!」


「はじめまして!」


 弟への挨拶がはじめましてってのは凄いな。

 そしてこれで、フックとミーの子は男の子二人ということになるんだな。

 我が家はどうだろう?


 転生者が入り込もうとしてたのは男だったから、多分男の子が生まれるんだと思うのだが……。

 男子人口が増えるな。

 ということは将来の労働力が増すということでもある!


 男手が増えると、開拓なんかもやりやすくなっていくからな。

 女手が増えると、村の環境維持がやりやすくなる。

 つまりどっちが増えてもいいことばかりということだ。


 大事なのはバランスである。


 フックの次男が、ほぎゃあーと泣いている。

 元気元気。

 そして丸々としていて大きい。


 勇者村の栄養分をたっぷり蓄えたわがままボディだな。

 きっと活発な子に育つであろう。


「男の子かー。うちはどうなんだろうねえ。なんだかね、あの子が生まれたのに刺激を受けて、うちの子ももう生まれそうって気がする」


 カトリナが隣に来て、そんな事を言う。


「もうすぐ生まれそう?」


「多分。泣き声聞いて、もぞもぞってしてる。お腹の中なのに自己主張が凄い子だよー」


「マドカみたいにめちゃくちゃ元気な子どもが生まれそうだ」


「んー?」


 自分が呼ばれたと思ったのか、マドカが顔を出した。

 そしてすぐに赤ちゃんに気付くと、パタパタ走っていってしまう。


「あかちゃんね! ちっちゃいねー」


「おっぱいのんでおっきくなるんだよ」


「おっぱいいっぱいのむといいねー」


 マドカとビンが、赤ちゃんを前におしゃべり中。

 自分たちが通ってきた道を、このちっちゃいのも通ってくるであろうと、語りかけたりしているようである。


 心温まる光景だなあ。

 ビンは弟の誕生にも比較的クールというか冷静だが、マドカはどうだろうな。

 弟か妹が生まれて、どう反応するだろうか?


 俺が聞いた話だと、年の近い兄弟は下が生まれると、上としては愛情を取られたと思って反発したりするらしいが……。

 マドカはそこまで、カトリナにべったりではないしな。

 村人みんなが家族みたいな勇者村なら、その辺りの心配は少ないかも知れない。


「まおもねー、おねえちゃんになるの」


「マドカもだよねー。いっしょにがんばろう!」


「がんばろう!」


 ビンとマドカでエールを送り合っているではないか。

 心温まる光景だなあ。


「ショート、さっきからすごくニコニコしてる。ちっちゃい子たちがやるぞーってなってるの、可愛いよねえ」


「ああ、めちゃくちゃ可愛い」


「あっ、新しい可愛いのが……なんだかこう……外に出てきたがってるみたい」


「なにいっ」


 陣痛が始まったらしい。

 連鎖して生まれてくるのか!?


「ヒロイナ! もうひと仕事頼んでいいか?」


「まさか来たわけ!? やるわよ。ほら、カトリナ運んであげなさい! おっしゃ、二人目行くわよー!!」


 腕まくりするヒロイナが心強い。

 そんなわけで、我が家のニューカマーが誕生することになるのである。



ついに誕生!

次回はショート家に二人目が……!


コミックスが発売しました!

各電子書籍サイトで販売してますよー。

ぜひぜひご一読あれ!


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― 新着の感想 ―
[一言] >おっしゃ、二人目行くわよー ヒロイナさんが異様に頼もしくなってる・・・ 男漁りに精を出していた(出させていた)元性女とは思えぬ安心感
[一言] さー次回はショートによる名付けを回避するカトリナの回か? マドカで名付け力は使いきってるだろうしなぁ・・・
[一言] こうして、営みは続くのか…
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