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魔王を倒した元勇者、元の世界には戻れないと今さら言われたので、王国を捨てて好き勝手にスローライフします!  作者: あけちともあき
スローライフ四年目

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第361話 ショータ、ショートをガン見する

 神や天使の名を子どもにつけるというのはどういうことか。

 まあ、その名前から来る祝福みたいなのが我が子にもあれ、みたいな意味合いはあるよな。

 つまりおめでたい名前だ。


 我が村にも、神っぽいのの名をもらった赤ちゃんが誕生した。

 名はショータ。

 肥溜め管理人の家の息子だ。


 そして神っぽいのは俺。

 ショートである。

 まだ現役バリバリで活動している神っぽいのの名前をつけるというのはどういうことになるのか。


 若干だが祝福が流れ込むのである。

 これは仕方ない。不可抗力だ。


 俺が近くを通りかかると、ポチーナに抱っこされていたショータがじーっと俺を見た。

 動くと目で追ってくる。


「生まれてちょっとしか経ってないのにガン見してくるんだが」


「ショートさんは、私もニーゲルもお世話になったです! ショータもきっと分かるですねー」


 ポチーナによしよしされて、むふーっと鼻息を吹き出すショータ。

 おっぱいが欲しければ泣き、うんちやおしっこが出たら泣く普通の赤ちゃんである。


 だが、俺が近くに来た時だけ反応が違う。

 目をカッと開いて俺を見ているのだ。


 なんだなんだ。

 俺はまた何かやっちゃいましたかね。やったことが多すぎてもう覚えていないぞ。


「今回はあんたは何もしてないわねー」


「おお、名付けとか神との縁に詳しいヒロイナ!」


「何よその呼び名。これねえ、あたしも迂闊だったわ。神様とか天使の名前をつけることってよくあるものね。うちの村で今までそれがなかったのが不思議なくらいだったのよ。うちってあんたがいるじゃない? あんたの世話になった人ばっかりいるじゃない。あやかって名前をつけるのは当然だったのよね」


「ははあ。俺の名前をつけるとどうなるわけさ」


「祝福が与えられるわねえ。だって名前の元になった本人がいて、バリバリ活動してるんだもの。そこに、あんたにあやかる意味で名前をつけたんでしょ? 形が似てるだけで縁ができるんだから、同じような響きの名前で、そこに縁をもたせたい意図も絡んだら……」


「俺が名付けるようなもんじゃないか」


「そういうこと。これは本来はあんたの意志でコントロールできると思うわよ。だけど今回はダメじゃない? 特にニーゲル側の感謝みたいなのが強く関わってる感じだから。あー、祝福されちゃったかあ」


「祝福はいいことですー」


 ポチーナがニコニコした。

 母親が笑顔なので、ショータもちょっと笑ったような顔になる。


「もう親の表情を察して真似してる。めちゃくちゃ早熟よこの子」


「ビンに匹敵する天才になってしまうかも知れないな」


 するとポチーナが目を丸くする。


「私とニーゲルの子どもが天才に!? 大変!」


「大変なのよ」


「早くにニーゲルのお仕事を手伝えるようになっちゃうですねー」


 俺とヒロイナで、がくっと来た。

 基本的に、ポチーナは純朴なのだ。

 ニーゲルも同じ。


 まあ、この二人の間に生まれた子どもなのだ。

 間違いなく善良に育つことであろう。


 俺は途中でビンを呼び、ショータと面通しさせておいた。


「いいかビン。あいつはお前の後輩になるはずだ。立って歩くようになったら、色々教えてやるんだぞ」


「うん! ショータ、ぼくをみてるよ! あたまのなかぐるぐるっとなってるから、いまはなんにもわかんないみたい」


「赤ちゃんだからな。というか、あいつの頭の中が分かるのか」


「うん、なんとなく」


 共鳴みたいなものかも知れんな。

 その後、ポチーナがビンと握手させたいというので、トテトテ駆け寄っていったビンがショータのちっちゃい手をにぎにぎしていた。

 うーむ、可愛い光景である。


 少々ビンを一人前として扱いすぎている気がした。

 人には子ども扱いしてやらねばならぬ時期というのがあるのではないか。


「ショートがまた難しい顔してる!」


 後ろからカトリナに背中をペチられた。


「そう?」


「そう! 最近色々あったもんねえ」


「あったなあ。スローライフをしているはずなのに、日々何かしら事件が起こっている気がする。いや、俺が事件に首を突っ込んだりしているんだが」


「何もない日っていうのが、実は特別なのかもよ? でも、ショートが頑張りすぎてダウンしちゃったら、困るのは私とマドカとお腹の子なんだからね?」


「そうだった!」


 カトリナのお腹は臨月も間近。

 いつ生まれてくるか分からない。


「ぼくんちもね、うまれそうなの!」


 ビンが嬉しそうに告げる。

 ミーも臨月なんだったな。


 勇者村のベビーブームだ!

 なかなか賑やかなことになりそうである。


 なお、勇者村の料理当番に関しては問題なくシフトが組まれている。

 生まれた子どもは、村全員の子どもという認識なので、みんなが世話を見るのだ。


 肥溜め管理人家のショータは、まだ生まれたばかりなので、人見知りというものがない。

 誰が抱っこしても無表情でぽやーんとしている。


 こいつはどんな性格の子どもになるんだろうなあ。


 世話焼きのビンと、引っ込み思案だが優しいサーラ、食いしん坊のマドカ、気は優しくて力持ちなバインと、気難しいダリア。

 これに、ショータが名を連ねるわけだ。


 皆、勇者村で生まれた子どもたちである。

 そのうち、ちびっこたちを集められる、勇者村保育室みたいなのも必要ではないかと思う俺なのだった。



ショータはどんな子どもに育っていくことやら、なのであります


comicグラスト21号にて今回ぶん掲載されてます!

コミックスの作業が進んでおります。


本作が面白かったら、いいね!とか下の星をスッと増やしてくれると作者が笑顔になります

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― 新着の感想 ―
[一言] どうも名前からするとイケナイおねーさんを(萌え的に)殺すマンになりそうな予感がするのだ
[一言] おおう! こりゃすげえ!
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