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魔王を倒した元勇者、元の世界には戻れないと今さら言われたので、王国を捨てて好き勝手にスローライフします!  作者: あけちともあき
スローライフ四年目

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第343話 お腹の中で動いているらしい

「動いた!」


「うごいたー!?」


 カトリナが声をあげたら、俺とお人形さん遊びをしていたマドカが立ち上がる。

 バタバタとカトリナに駆け寄り、ズザーッとヘッドスライディングしながらお母さんのお腹に耳を当てるのである。


「おおー! ぼんぼんって!」


「そうそう。お腹の中から蹴ってる!」


「げんきねーあかちゃんねー」


「そうだねえー。マドカももうすぐお姉ちゃんになるもんねえ」


「おねえちゃ!! まお、おねえちゃ!」


 グワーッと立ち上がるマドカ。

 踊りだす。


 最初は、親の愛情がお腹の子どもに取られてしまうから、寂しがったりしないか心配だった。

 日本ではそういう話をよく聞いてたしな。

 俺と海乃莉くらい年が離れていると別だが、マドカは二歳ちょっとだし、まだまだ親の愛情を独占したかろう……。


 なんて思ってたのだが、なんのことはない。

 勇者村がまるごと一つの大家族みたいなもんなので、周囲から愛情をガンガン受けて育っているのだ。


 自分が受け止めた愛情を、今度は生まれてくる小さな命に注ぎ込んでやろうと、うちの子は考えているようなのだった。

 頼もしい。


「まおね! あかちゃうまれたらねー」


「おうおう」


「あのねー、おにんぎょさんねー」


「ほうほう」


 マドカの宣言を聞くだけでも楽しい。

 うちの第二子よ、早く生まれてくるのだ。

 絶対に楽しいぞ。


 カトリナのお腹は順調に大きくなっている。

 そして彼女の食欲は完全に元通りになっており、パクパクとなんでも食べる。


 つわりだという間も、割となんでも食べてた気がするが。

 ミーの方が大変そうで、しばらくは丘ヤシが主食になっていた。

 そっちも今は平常通り。


 二人で赤ちゃん服を作っては、キャッキャと騒いでいるようだ。

 男の子なのか、女の子なのか……。

 我が家の赤ちゃん服が全部ピンク色で、ミーの家のが全部ブルーなのはどうしてなのか。


「そりゃあ、ピンクが可愛いからよ!」


「そうでしたか」


「マドカがちっちゃい赤ちゃんだった時は、私も不器用だったもん。こんな革鎧みたいな服しか着せてあげられなかったからねえ……」


 この三年弱でレベルアップした腕前を使い、次の子は最初からフルスペックベビー服で挑む腹積もりらしい。


「では俺も作ってみようかな」


「ショートがやったら、すぐにできるようになっちゃいそう……! だからダメ」


「な、なんだってー!」


「むっふっふ、妻は自分の強みを夫に渡さないのです」


 そ、そういうものなのかー!

 感心していたら、マドカがトテトテと外に飛び出していった。


 もうそろそろ夕方なのになあと思っていると、途中でビンと合流しているではないか。

 なんだなんだ。


「あかちゃんねー!」


「うまれるねー」


 おおっ!

 新しくお姉さんとお兄さんになる二人の会議である。

 どうやら、これから増える家族に何をしてあげるかを相談しあっているようだった。


 なんという微笑ましさよ。

 ニコニコしながらこれを見ていた俺。


 その脳裏に、何か怪しいものがこの星に近づいている予感が走った。

 魔王っぽい物が来たらすぐ分かるように、ワールディアの成層圏に魔法をかけてあるのだ。

 セキュリティ魔法『ケービイン(俺命名)』。そのうち、カールくんとかに引き継ごうと思っている。


 そこを抜けて来る気配は……オーバーロードのものである。

 そして何かを連れている。

 これは……。


『お前は本来死ぬはずではなかった魂なので、お詫びに超能力を与えて新たな赤子の肉体に転生させてやろう。勇者の子として生まれ、世界を救うのだ』


『なんだって!? 仕方ねえなあ! じゃあチートを選択して……』


「そんなことは許さんぞ! ツアーッ!!」


『ウグワーッ!?』


 ギリギリのところで陰謀に勘付いた俺。

 シュンッで成層圏まで移動し、そこからバビュンで星を半周して駆け寄りざまに転生者の魂をチョップで粉々に砕いた。


『あっ!! わしが選びに選びぬいた尖兵としての転生者の魂が一瞬で消滅させられた!! き、貴様~!! 勘付くのが速すぎる!』


「まーだワールディアを諦めてなかったかオーバーロードめ。しかも俺の新しい子どもに転生者を宿らせようとか、とんでもない大罪だぞ」


『今お前が消滅させただろうが! 消滅まではさせることないだろ!』


「念のためにな。これで再利用できまい。ということで俺の怒りのパンチを喰らえ!  かなり本気のパーンチ!!」


 ワールディア成層圏で、俺のパンチがオーバーロードの腹に炸裂した。


『ウグワーッ!?』


 世界を揺るがすほどの衝撃を発する腹パン。

 これがオーバーロードを、再び遠い宇宙へと吹き飛ばしていった。


 今度来たら、鍛冶神を呼んで剣で叩き切ってやる。

 いかにオーバーロードだろうと一撃死だぞ。


 しかし何と言うか……ネタバレを食らってしまった気分だな!

 消滅させた転生者の魂は男だった。

 つまり新しく生まれてくる我が子も男なのでは……!?


 ……まあ、どっちでもいいか!

 絶対に可愛いしな。


 俺は考えるのをやめた。


 大地でカトリナが手を振っている。

 マドカもいる。

 お腹の中の赤ちゃんから、思念みたいなのも感じた。


 うむうむ、早く産まれて来たいとな?

 世界は色々大変だが、楽しいぞ!



一瞬異世界転生めいたサムシングが発生しそうになったがそんなことはなかったぜ!


comicグラスト16号で第三話公開中!


気に入っていただけましたら下の☆をツンツンツンっと増やしていただけますと筆者が喜びます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 転生者、とばっちりで消滅させられて可哀想なんだけどw 救済で猫か何かに転生させてあげてほしいw
[一言] >「まーだワールディアを諦めてなかったかオーバーロードめ。しかも俺の新しい子どもに転生者を宿らせようとか、とんでもない大罪だぞ」 ショートの逆鱗に思いっきり触れてるオーバーロードェ…。
[一言] >つまり新しく生まれてくる我が子も男なのでは……!? 何を言っちょるのかねショート君 最近はTS異世界転生なんかザラよ?
感想一覧
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