表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王を倒した元勇者、元の世界には戻れないと今さら言われたので、王国を捨てて好き勝手にスローライフします!  作者: あけちともあき
スローライフ一年目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/500

第31話 カトリナvsトラッピア

 俺の目の前で、二人の娘が争っている……。

 一方は目下、俺が一番結婚したい女性ナンバーワン、気立てがよくて家庭的なオーガの少女カトリナ。

 一方は目下、俺が一番会いたくない女ナンバーワン、謀略と策略で各国から畏れられる王女トラッピア。


「くそー、パワーでは勝てないわ!! せいっ」


「うっ」


 トラッピアがカトリナの胸元に鋭い逆水平チョップをして、彼女をひるませた。

 その隙に間合いを取る。


 さすが王女、体術も学んでいるんだな。

 どうみてもプロレスのムーブだったが。


 そして、王宮で会った時よりも彼女の喋りがフランクになっている。

 あれがもともとのトラッピアの口調なんだろう。


「人間の女がどれだけ小細工を弄しても、私には通用しないんだからね!」


「おっ、カトリナが凄くオーガっぽい言い回しをした!」


 俺は感心した。

 いつもほんわかしてて優しい娘なので、オーガというかおっかさんみたいだなあと思っていたのだが、やはりオーガであったか。


「わたしは自らが前線で戦うわけではないの! ええい、こんな強敵がショートの近くにいるなんて聞いていないわ。特戦隊!」


「は、はい!」


 特戦隊のでかいやつが標的になった。


「あの女のことが報告になかったけど!」


「あの女じゃないよ! 私はカトリナ!」


「お前の名前なんか聞いてないわよ!!」


「性格悪ーい!」


「なあんですって!」


「なによー!」


「「むきーっ!!」」


 大変だ!!


「こりゃあ血の雨が降るぞ」


 俺が戦慄していたら、ブルストがスススっと女子二名の間に入っていった。


「まあまあ待て待て。カトリナも、お姫様もあれだろ。ショートのことが好きなんだな」


「はっ」


「はっ」


 この一言で、我に返るカトリナとトラッピア。

 二人とも、サッと距離を取った。


 おお、一瞬で二人の熱を冷ました。

 やるな、ブルスト。


 これには特戦隊の面々も感心している。


「やるなあ」


「なかなかの策士だ」


「まあ、年の功だからな」


 褒められて嬉しそうなブルスト。

 なんか、うちの男どもと特戦隊はすっかり仲良くなりそうな空気だ。


 だが、状況は全然解決してないけどな。


「いい? ショートはこの国にとって大事なの。だから、わたしが王都へ連れ帰って婿にするのよ!!」


「なんでショートじゃないといけないの! 貴族とかたくさんいるでしょ。それでいいじゃない!」


「だめよ!! ショートは特別なのよ! そりゃ、召喚したばかりの時は頼りなさそうだったし、50Gと布の服と木の棒だけ渡して外に出すお父様の仕打ちに、さすがの私も目を疑ったけど」


「ひどい! 王様ひどい!!」


「そう。うちのお父様後先考えないで目先の利益だけでそういうことするから!! だから国がガタガタで今にも各国から攻められそうなのよ! この状況をどうにかするにはショートが必要なの!」


「だったらお婿さんにする必要ないでしょ? っていうか、ショートはそんなに強いの? え? 召喚……? ショートが?」


「いかん!!」


 俺は動き出した。

 一瞬でトラッピアのところに現れて、人差し指で彼女の唇を塞ぐ。


「そのことは内密に……な」


「もごもごもご」


 彼女は唇をむずむずさせながら、ちょっと頬を赤くしている。


「カトリナ、つまり、俺は魔法をかなり使える人ショートなので強いのだ」


「うん。こっちの人たちをあっという間にやっつけたもんね。ショートがすごく強いのは分かるよ。でも、ならお婿さんじゃなくていいんじゃないかなーって」


「もごもご……ぷはあ! ショート! 指先でわたしの口を閉じさせるのやめなさい! するなら唇で……じゃない、いい、オーガの娘カトリナ! 彼は婿でないと絶対に意味がないのよ! それは! それは! それは……」


 おっと、その先の言葉が出てこないぞ。

 なんとなく先を察しているのか、ブルストと特戦隊の面々がニヤニヤしながら見守っている。

 お前らなあー。


「わ、わ、わたしのモチベーションが違うのよ!!」


「そんなのあなたの勝手じゃない! 私だってショートがいないと楽しくない!! だからショートはあげません!」


「な、なんですってー!」


「なによー!!」


 いかん、話が元のところに戻った。

 うーむ。

 俺が唸っていると、クロロックが肩を叩いてきた。


「優れたオスであるならば二人に卵を産ませればいいのでは?」


「凄く人間っぽいと思ってたらやっぱりあんた思考がカエルだな!?」


「やっぱりも何も、ワタクシはカエルですが」


 けろけろーと喉を鳴らすクロロック。

 だが、クロロックの提案は二人の娘に気づきを与えたらしい。


「いいわ。ならばショートに見極めてもらうわ! わたしとこの女のどちらが妻に相応しいか!」


「そうだね! ……えっ、妻!? それってお嫁さん……あーん」


 カトリナがもじもじした。

 可愛い。

 そしてそれを見て、トラッピアも赤くなる。


「あなたね!! そうやって恥ずかしがっているとこちらまでシラフに戻って恥ずかしくなるでしょう!!」


 どうやら二人が俺を取り合って戦うようだ……。

 一体どういうことだってばよ?


 よく事情は分からんが、大体状況は把握した。


「よし、ではトラッピアはしばらくこっちで暮らしてみて、辺境生活というものを体験していくのでいいか?」


「なんでそういう方向になるの!? ああ、でも、わたしとこの女の格の違いを見せつけてやるためにはそれがいいかも知れないわね……!! ふふふふふ!!」


 なんて自信だ!

 俺は特戦隊のギロスに聞いてみる。


「もしや王女はスローライフ経験が?」


「あるわけないではないですか」


「だよねー」


「大体なんでも自信たっぷりにやってみるお方なのです。自己肯定感がとても強い」


「分かる」


 ということで……。

 騒がしいのがスローライフに加わってくるのだ……!


まさかのスローライフ対決……!

ちなみにここだとちょっと可愛げがある感じのトラッピアですが、執務する彼女は超怖い


やるじゃん!と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】からスーッと星に色が付いてるやつを増やしていっていただけるとありがたいです。

つまらなければ一個とか、大変よくできましたなら五個とか!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 先に裏切っておいてどの口で言うのだろうか……。
[一言] ふむぅ やはり私の見立て通り、トラッピア王女もなかなか楽しい・・・ もとい、ヒロインの資格が無いとは必ずしも言い切れないようにも感じられる方ですな! え、さんざんダメ出しした? 誰がそんな…
[一言] こわい! お姫様、意外と「努力の天才」だったり!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ