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魔王を倒した元勇者、元の世界には戻れないと今さら言われたので、王国を捨てて好き勝手にスローライフします!  作者: あけちともあき
スローライフ三年目

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第257話 出現、幻(?)の巨大ウナギ

 釣りが始まった。

 最初は、ウナギの餌となる小魚である。


「楽勝楽勝。昨年の俺から、目覚ましい成長を遂げているのだ。小魚程度ならば軽々と……」


 釣り糸を垂らしてじっと待つ。

 増水しているものの、思ったよりも川の流れは穏やか。


 濁った水の中で、水面に近いところを小魚がすいすい泳いでいる。


 そらそら、俺の釣り針に掛かるがいい。

 俺が仕掛けた餌は美味しいぞ……。


 俺は水面を凝視し、来い、来い、と念じる。

 魔王すら倒したこの俺だ。

 小魚一匹程度、どうということはあるまい!


 さあ来い!

 俺のウナギ釣りの糧となるべくやって来るのだ、小魚!!


「釣れた!」


 横で、カトリナがスパァーンと気持ちよく一匹釣り上げている。

 勇者村で一番乗りである。


「おお、カトリナ、やるな!」


 ブルストが褒める。

 さすが、ブルストの娘だけあって、うちの奥さんは釣りも上手い。

 夫である俺が釣りの達人になってもいいはずだ。


「俺も行くぞ、俺も釣れる! さあ来い! 来い!! 来い!!!」


「ショート、気合入りすぎだよー。もっと楽に構えて……」


「そ、そうか? では楽に……むっ!!」


 カトリナのアドバイスを受けて、ラクーにしようとしたら釣り竿に反応あり。

 来たか!

 ははははは、ついに来てしまったようだな!


「うおおおお! フィーッシュ!!」


 俺は世界ごと釣り上げる気持ちで、全身全霊で釣り竿を振り上げた。

 ブツーンッと釣り糸が切れた。


「ウグワーッ!?」


 俺は自らの勢いにふっ飛ばされて、甲板をゴロゴロ転がった。

 勢い余って川にバシャーンと落ちる。


「村長が釣り損なったぞ」


「ショートさんのあのオーバーリアクションを見ると、今年も楽しい釣り大会をしてるんだなあと安心するよ」


 アキムの反応に、フックが穏やかな言葉で返しているのを聞いて、俺が釣れないのは勇者村名物ではないぞ、と思ったりするのである。

 おかしい……。

 何故釣れないのだ。


 俺はフワリで浮かび、船の上に着地した。

 すぐさま、デッドエンドインフェルノを使って服を乾かす。

 火力調整もバッチリだ。


 まあいい。

 釣り糸が切れてしまったのならば、新しい釣り糸を用意すれば……。


「し、ししょー! たすけてください!」


「むっ! カールくんが何か大物にヒットして釣り竿ごと引っ張り込まれそうに!!」


「カールー!」


 息子を応援するためについてきたシャルロッテさんが悲鳴をあげる。

 俺は素早くカールくんのフォローに入った。


「よし、引くぞ! ツアーッ!!」


「とあー!!」


 二人で気合を入れながら叫び、釣り竿を振り上げると……!

 そこには、キラキラと鱗が輝く、全長1メートルはある大きな魚が!!


「うおおお、つ、釣れたー!!」


 ヒットさせたのはカールくんだが、ともに釣り竿を握って釣り上げたのである。

 あっ、なんか満足したぞ。


「す、すごい! これがつりなんですね、ししょー!!」


「そうだ。これが釣りだ……。とりあえずこっち方面では、君は俺を越えたな……!!」


「いえ! ししょーがいてくれたからです!」


 なんと殊勝な! 

 俺はカールくんを今後もめちゃくちゃに可愛がることにしたぞ。


「ははうえ、みてください! ぼくもつれました! あっ!」


 早速シャルロッテに報告しようとするカールくんだが、目の前の光景を見てハッとしている。


「お、重いですー! 市郎さん、手を離さないでくださいね……!」


「も、もちろんです! いっせーの、でいきますよ!」


「まあ、可愛い掛け声。うふふ」


「うふふじゃないですよー! いっせーの!」


「いっせーの!」


 シャルロッテと市郎氏の共同作業では……?

 なんか、二人でそこそこの大きさの魚を釣り上げている。

 

 ともに釣りは初体験らしいが……。

 ふーむ。


 俺はカールくんとシャルロッテを交互に見た。


「ははうえ!!」


「はっ! カール! こ、これはね、市郎さんに手伝ってもらったの! ええと、カールも釣れたのね。すごいわ!!」


「そ、そうです! ははうえもすごいです!」


 おお、いつもは仲良しな母子がちょっとだけギクシャクしている。

 お互い空気を読もうとして、大変なことになっとるな。


 市郎氏はどうしたらいいか分からずにフリーズしている。

 人の良さが現れているな。


「二人とも俺を越えたので凄いじゃないか。市郎氏はお手伝い感謝だ」


「あ、いえいえ。農協勇者村出張所の所長として当たり前の事をしたまでです」


「そうかそうか。……で、どうなんだ。ちょっと進展してるのか。うちの嫁さんがその辺めちゃくちゃ気にしてるんだ」


「カトリナさんですよね。その、猛烈なプッシュを受けて、シャルロッテさんが出張所を手伝いに来ることになってまして……」


「カトリナやり手だなあ!」


 ちょっと向こうで、「フィーッシュ!」とか言いながらガンガン小魚を釣りまくっているカトリナを見る。

 あまりに釣りまくるので、隣りにいるマドカが「おかたんすごー!!」と感動している。


 ちょこっと人間ドラマがありつつ、餌となる小魚は溜まってきたようだ。

 あまりに多く捕れたので、船の中ほどで調理してお弁当にすることにした。


 念動力の船なので、火を起こしても大丈夫。

 カトリナが魚に串を通して焼き始めた。


 巨大ウナギ釣りは、小魚を食べてからであろう。

 さて、ご飯、ご飯……。


「ひえー!」


 突然悲鳴が聞こえた。

 なんだなんだ!


「ママー!」


 サーラの悲鳴も聞こえる。

 これは、スーリヤに何かあったな。

 船尾の方で、釣り糸を垂らしていたスーリヤ。


 彼女が何かに釣り竿を引っ張られている。

 勇者村の男たちが駆けつけて、彼女をガッチリホールドした。


 すると、釣り糸の先に、巨大な影が見えるではないか。

 あれは……。

 あの、ニョロニョロっとした長ーくてふとーい影は……!


「間違いありません。ウナギです」


 巨大ウナギ、現る!!

ウナギ出現!

川の主を釣り上げるのだ!


やるじゃん!と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】からスーッと星に色が付いてるやつを増やしていっていただけるとありがたいです

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[一言] いきなり、本命キターッ!
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