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魔王を倒した元勇者、元の世界には戻れないと今さら言われたので、王国を捨てて好き勝手にスローライフします!  作者: あけちともあき
スローライフ三年目

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第256話 第三回、勇者村釣り大会

「正確には第二回なのだ。一回目は村の形になってなかったからな」


「ショート、どこに向かって話しかけてるの?」


「ああ、なんでもない」


 首をかしげるカトリナに笑って返す。

 知らなくてもいいことだからな。


 ということで、勇者村一行は熱帯雨林から流れ出ている、大きな川に向かうのだ。

 雨季なので増水してなかなかスリリング。


 そこは、俺とビンが協力して魔力で船を編むことにした。


「ちょやー!!」


 ビンの念動魔法が実体を得る。

 俺がこれに魔力を上乗せして拡大。船の形へと変化させた。


 これを見て、勇者村一行は仰天。


「ビン、いつの間にそんなことが!?」


「うそ、あたしたちの子どもって天才……?」


 フックとミーが驚いているが、知らなかったか。ビンは正真正銘の天才で、しかも努力を続けて成長し続ける天才だぞ。

 船の上に勇者村一行を乗せて、いざ出発。

 川をどんどん遡っていく。


 何しろ念動魔法で作った船だから、川の流れなんか関係ない。

 ずんどこずんどこ遡る。

 途中で雨が降って増水したが、そんなもの関係ない。

 ずんどこずんどこ遡る。


「こりゃあすげえ……。これがありゃ、どんな時だって釣りができちまうぜ。だがショート、どうして雨季の釣りなんてしようと考えたんだ?」


 ブルストからの質問が飛んできた。


「それはな、クロロックがこの時期じゃないと巨大ウナギが出ないと言ったんだ」


「そうです。増水し、全てを押し流すほどに大きくなった川に、あれは現れるのです」


 カエルの人が帆柱の影からひょこっと顔を出し、説明をし始める。


「見たことあるのか、クロロック!」


「もちろんです。ワタシは両棲人ですよ。水中でも問題なくすいすいと泳ぎ回れるのです。増水した川はちょっとしたバイキングですよ」


 すいすい泳ぎ回りながら、流れてくる珍しい魚をパクパク食べていたらしい。

 意外とワイルドなところがあるな、この学者。


「自分の体を使って、珍しい魚の味や毒の有無が確認できますからね。ちなみにワタシは胃を体の外に出せるので、毒があった魚を食べたらすぐに胃を吐き出して洗います」


「便利だなあ」


 俺とブルストで、感心してしまった。

 とにかく、雨季の川を泳いでいたクロロックは、熱帯雨林に近づいたところでそれを見たらしい。


 常識はずれの巨大ウナギ。

 全長は聞いたところでは、なんと十メートルはあったとか。


「幸い、ワタシは彼に発見される前に自ら飛び出し、壁に張り付きましたので助かりました」


「めちゃくちゃ危ない橋を渡ってるじゃん!!」


 俺は驚いて、クロロックの肩を掴んでガクガク揺らした。


「やややややすすすすみみみみままませせせんんん」


「ショート、クロロックをあんまりシェイクするな! なんか体のしっとりした粘液が分離されてきてる!」


「いかん!」


 ブルストに指摘されて、俺は冷静になったぞ。

 クロロックが、分離しかけた粘液をまた体に塗っている。


「ふう、危うく脱水されるところでした。いやあ申し訳ありません。ワタシも時折、冒険をしたくなる時がありまして。しかし、お陰で巨大ウナギを発見できたわけです。ぬめっとした魚類の皮を使った靴というのは、湿地帯などでよくあるのです。巨大ウナギとなれば、頑丈で長持ちする皮がたくさん取れることでしょう」


 加工素材がたくさん手に入るのは嬉しいな。

 水面を覗いているマドカとサーラを見て、二人の喜ぶさまを想像する。


 ちなみに赤ちゃんたちがころりんと落ちては大変なので、二人はビンの念動魔法でちょっとだけ宙に浮いている。

 甲板を歩くことはできるのだが、甲板より下の高さには行けないというわけだ。


「おみずいっぱいねー」


 サーラが言うと、マドカが「おー」と答えた。


「あっ、おさかな! すいすいーって、あっち!」


「おさかなどこ!」


 赤ちゃんズはキャッキャとはしゃいでいる。

 大変カワイイ。


 サーラはめちゃめちゃ語彙が増えてきたな。

 もう、ビンとあまり変わらないくらいおしゃべりしてる気がするぞ。

 そしてお姉さんとしての自覚があるようで、マドカに色々教えてあげている。


「まお、おちたらいたいいたいだからね。きおつけようねー」


「おー」


 マドカは、なんこれー、とか話したりはするが、まだまだ難しい言葉は理解できていないのだ。

 仕方ないね、一歳半だからね。

 いやいや、一歳半としてはとんでもなく頭がいい気がする。

 二歳にならんとするサーラが、あれだけ言葉を操れるのが凄いのだ。


「……というわけでまずは小魚を釣って、それを巨大ウナギの餌に」


「えっ、なんて?」


 しまった、うちの子たちを見るのに夢中でクロロックの話を聞き流してしまっていた!

 クロロックが、じーっとカエルの瞳で俺を見つめてきた。


 うっ、す、すまん。


「いえ、お気になさらず。巨大ウナギが小魚を捕食していましたから、まずは餌となるそれらを釣ってから巨大ウナギ釣りを始めましょうというお話でした」


「おお、簡略にまとめたな。クロロックが類稀なる観察眼で、巨大ウナギの生態を見極めていった下りとか本当に面白かったけど、そこをバッサリやるとはなあ」


「何それ聞きたい」


「聞き流してたショートが悪いぜ」


 ブルストの正論にぐうの音も出ない!

 そんなわけで、釣り船は流れる川の上に停止する。


 村の仲間たちは、めいめい釣り竿を準備して、いよいよ巨大ウナギ釣りが始まるのである。

サラッと第四の壁を超えてくる主人公。


やるじゃん!と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】からスーッと星に色が付いてるやつを増やしていっていただけるとありがたいです

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― 新着の感想 ―
[良い点] >何しろ念動魔法で作った船だから、川の流れなんか関係ない。 >ずんどこずんどこ遡る。 >途中で雨が降って増水したが、そんなもの関係ない。 >ずんどこずんどこ遡る。 一見ただの韻を踏んだ面…
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