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魔王を倒した元勇者、元の世界には戻れないと今さら言われたので、王国を捨てて好き勝手にスローライフします!  作者: あけちともあき
スローライフ二年目

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150/500

第150話 魔王のお話を伺う

 掴まえたウエストランド連合とやらの人を、縛って転がす。


「よし、では頭の中を拝見」


「や、やめろーやめろー! 俺の頭を覗くんじゃなーい」


 何か言っているようだがスルーして、精神操作魔法ココロミル(俺命名)でチェックしてみた。

 ほうほう、明らかに精神操作されていますな。

 思考ってのはこいつらの言語で流れてるのと、写真記憶みたいなのがあるんだが、そこに雑多に、洗脳者による刷り込みが重ねられているのだ。


 魔王大戦中は、こうやって洗脳されている奴らが多かったので、ちょいちょい読心魔法を使う機会があったのだ。

 その時に見た心象風景がこんな感じだった。


 なので、洗脳を解くのは実に簡単。

 この刷り込みをベリベリと剥がすだけでいい。


「おりゃ」


 べりべりっと精神の中の刷り込みを、雑に剥がした。


「ウグワーッ!?」


 おっ! 陸揚げされたエビみたいに跳ねてる!

 これ、まあまあ精神的にダメージが行くらしいが、それはそれだ。

 めっちゃくちゃ苦しむだけで、後遺症はないからな!


「な、なんという恐ろしい技……!!」


 海の王国の人たちがドン引きしている。


「確かに、これは悪の側が使うような魔法かも知れないな。だが考えても見ろ。こっちで精神操作ができないと、仲間が洗脳された時に殺すか、幽閉するしかなくなるだろう。こいつを使うと、一時的に打ち上げられたエビみたいにピチピチするけど、すぐに仲間に復帰できるんだぞ」


「なるほど、そう言われてみると人道的な魔法のような気がしてきましたぞ」


 ザザーン王がすぐ信用してくれた。

 いい人である。


 しばらくのたうち回っていた男は、ハッと目を見開いた。


「お……俺は一体……。確か、いつものように正義のお題目を掲げてポジション争いをしていたはずだったが……」


 洗脳が解けてもろくでもない奴だな。

 彼は俺を見て、再びハッとした。

 しょっちゅうハッとしてる男だ。


「ゆ、勇者ショート! お前が俺に何かをしたのか!? なんという邪悪なことをするんだ! 謝罪を要求する!」


 俺は男に軽く腹パンした。


「ウグワーッ!?」


 打ち上げられたエビのようにのたうち回る男。


「な、なんという恐ろしい打撃……!」


 海の王国の人々がちょっと引いている。

 今度はこいつの頭に指を突っ込んだりしてないから、ちょっとはマシに見えているようだ。


「どうやら骨の髄まで、共和国仕草が身についているようだが、お前の頭でよく考えてみろ。俺は何だ? 俺は何をしてやった? 俺の名前を言ってみろ」


「ハッ……あ、あなた様は、俺を洗脳から救って下さった勇者ショート様……」


「よろしい」


 俺はアルカイックスマイルを浮かべた。

 連合軍の男は、カクカクと水飲み鳥オモチャのように頷く。


「陛下、本当にこの人が味方で良かったですよねえ」


「うむ。わしもこれほど恐ろしい方だとは思ってもいなかった……。あれ、百分の一の力も出してないよ絶対」


「ヒェー」


 震え上がるのはやめろ。

 俺は、カトリナとマドカが起きてくる前に尋問を終えねばならんのだ。


「教えろ。お前を洗脳したのは魔王だな? 姿かたちを思い浮かべろ」


「う、ウグワーッ!? また俺の脳内に直接!」


「直接指を突っ込んで走査してるのだ」


 連合軍の男は、頭の中に一人の女の姿をイメージした。

 年頃はカトリナと同じくらいか。

 すらりとスレンダーで、炎のように鮮やかな赤毛を長く伸ばしている。


 瞳はルビーのように輝いていて、瞳孔が無かった。

 放つ気配は文句なく魔王である。

 俺が去年、サクッと倒した名前も知らない魔王よりは随分格上っぽいな。


 そんな、男の中にいた魔王の像が微笑んだ。


『無粋な真似をするのね。レディの秘密を覗くなんて。その報いは受けてもらうわよ、勇者ショート』


「ほう」


 俺の背後で悲鳴が上がった。

 俺が指を突っ込んでいる男の頭から、巨大な赤い腕が生えてきたのである。

 光の腕だ。


 それが手を広げて、海の王国に攻撃を仕掛けようとする。

 なので、俺も魔力で腕の形を作った。


 俺の魔力の腕と、魔王の腕がぶつかり合う!

 ……わけではなく、ぎゅっと手を握りあった。


『!?』


 魔王が驚愕した気配がする。


「格の違いを教えてやろう。これは俺の考案した、魔力ゆびずもう!!」


『なんですって!?』


 親指だけが自由になった形で、俺と魔王の指が激しくポジションを取り合う。

 フェイント、スウェー、ダッキング……。

 なるほど、一通りの技は心得ているようだが。


 だが、まだまだ青いな。


「ツァーッ!!」


 俺は裂帛の気合を発した。

 それと同時に、魔王の動きを全て突っ切り、俺の親指が動く。


『ば、バカなーっ!?』


 魔王の親指を、しっかりと上から押さえつける。


「1,2,3,4,5,6,7,8,9,10!! さらばだ魔王!!」


 俺の勝利である。

 十秒押さえたらこっちの勝ちなのだ。

 魔王の、魔力で作られた腕が消滅していく。


『そ、そんな……!! こんな馬鹿げた強さの勇者がいると言うの……!? これでは、今の私では及ばない! もっと、もっと強くならなければ……! あと、なんでゆびずもうなのよ!? 納得できなーい!!』


 その叫びを最後に、魔王の気配が消えた。

 名前を聞き忘れたな。

 まあいいや。


「これでしばらく、向こうから攻撃は仕掛けてこないだろう。俺が怖いだろうからな。あと、あの魔王は独善的な正義みたいなのを人間に刷り込むのが得意なやつらしい。そこで倒れてる男から読み取れた。後は任せるが、また何かあったら呼ぶがいい。はい、コルセンター」


「うおっ、わしに何か魔法がかかった!」


 これで、海の王国ともつながりができた。

 食堂から、マドカの泣き声が聞こえてきた。

 目覚めたのだろう。


 あと、多分またお腹がすいて泣いている。


 では、もうちょっと何か食べてから帰るとしよう!

 同盟に買い付け、どちらも成功だ。



若い魔王をちょっと撫でてやったのだ


やるじゃん!と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】からスーッと星に色が付いてるやつを増やしていっていただけるとありがたいです

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