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「うまっ!! ウサギの肉って、こんなにも美味かったのか」
危険を冒しても森の奥に入ったのは正解だった。もう少し行動範囲を広げてもいいかも。それにしてもこの肉は美味い! 絶妙な塩加減が素晴らしい!
料理の腕が上がったのかも、貴重な塩を使ったかいがあったと、頬いっぱいにウサギの肉を詰め、素早くたいらげていく。緊張感がないように見えるが、常に木の棒を意識し、周囲を警戒していた。
「薬草類をもう少し採取して、拠点に帰るか。その前にこれをチャージして、チャージはできるよな?」
綺麗に解体されたウサギの皮を手に掴み『チャージする』と念じると、ウサギの皮が消え、機械音が聞こえた。
『3ポイント、チャージしました』
「おっ! 意外にポイントが高い。肉も美味いし、明日からはウサギを狩るか」
ウサギの皮のポイント率に満足し、皮の横にあった小さな石を拾い上げる。
魔石と鑑定されたそれは、チャージ、合成可能とあった。ポイントは欲しいが、合成が気になった。直感は大事にしているので、チャージはせず腰にある袋へ入れる。
ザッ――。
木陰の奥で何かが動いた気配を察知し、すぐさま木の棒を構える。
額には汗が浮かび、緊張した空気が流れる。
ザッ、ザザザッ――。
一呼吸して、木の棒を下ろした。敵は逃げたようだ。
解体した際にでた血の匂いが、魔物たちを引き寄せているようだ。
すぐにその場を立つことにする。
4日前と同一人物には、思えないほどの行動と決断力、順応力の高さに苦笑いをした。
泣き叫んだあの日、何も考えずに緑の玉を飲みこんだ。
精神崩壊寸前だったからできた行動でもあった。
すぐに効き目があり、さきほどの心情が嘘みたいに精神が落ち着き、冷静になれたのだ。これほどまでに、なぜ精神が荒れだしたのか理解できなかったが、その理由も後で判明することになる。
俺は、すぐに糸口である白い玉を飲みこみ、俺の能力の説明を求めた。
すると頭に情報が入ってくる。
俺の能力は、固有スキル『お届け便』で、ポイントの対価として、欲しいものが届く能力のようだ。
ポイントのチャージ方法は、複数あり、中でも自動的に付与される生存ポイントが気になった。一日生存していれば、ポイントが10付与されるのだ。
初期段階で俺に付与されていたポイントは、18300だった。
俺は25歳なので、単純計算すれば約9万ポイント以上を所持しているはずだが、数字から読み取る限り、生存場所の過酷さで反映する数値が変わるようだ。この世界は、俺がいた地球よりも5倍近く生存が難しい場所だと判断する。
詳細を確認したいが、これ以上の説明を求めるには、鑑定レベルが足りないようだった。
白い玉は、鑑定の能力を取得できるスキル玉だったのだ。
続いて、この場所の説明を求めた。
考えていた通り、直径1キロの安全地帯であった。
ほっと安心するも、通常よりも精神、肉体への負荷が軽減するとの説明が引っかかる。わざわざ強調している点がおかしいと思い、鑑定を試みた。
全ての情報は開示できなかったが、俺なりの見解を述べる。
この世界は、レベルに依存しているようだ。
例えば、生命維持に必要な食を一定時間抜いた場合、精神や肉体に負荷がかかる。
レベルや能力により、一定時間の割合や負荷の度合いが違うのだ。まさに弱肉強食の世界である。
あくまでも現時点では予想にすぎないが、ほぼ見解通りだと思われる。
俺の鑑定能力が低いため、開示される情報も少ない。
ステータスたるものもあるにはあるが、いまの段階では、あまり意味を持たない。
まあ、モチベーションの向上には、役立っている。
「ステータスオープン」
【 名 前 】 レン・タカハシ
【 年 齢 】 25
【 レベル 】 4
【 スキル 】 鑑定E、棒術F、料理F、解体D、気配察知F
【固有スキル】 お届け便
【 状 態 】 正常
料理レベルが、G→Fへ上がっていた。
ウサギの肉に、塩をかけて焼いただけで、レベルが上がった。
なんてちょろいんだ。
初めての食材に味を加えたことが、レベルアップのポイントだったのだろう。
とはいっても、初心者に毛が生えた程度なんだろうな。
おそらく、ここからが本番で、中々上がらないとみている。
食事は精神負荷がかからないよう、三食きっちりと食べることにした。
美味しい料理を所望して、料理のスキル玉を出したのは、記憶に新しい。
もちろん他のスキルも、全てスキル玉から取得した。
努力をすれば、スキルの取得は可能らしいが、俺には便利な能力があるので、それを活用しただけだ。
決して怠慢したわけではない。
ステータスの分類は他にもあるが、いまの俺の鑑定レベルでは、表示されない。
例えば、体力や魔力などの値も、鑑定レベルを上げれば見ることはできるらしい。
上位のスキル玉を獲得するか、熟練度を上げることで、レベルが上がるようだ。
精神、肉体への負荷の影響があるのは、自身のレベルで、これが高ければ高いほど、生命維持に必要な行動をとらなくても影響はでずらくなる。
どれぐらいの高さで、一食抜けるのかは、わからないが、俺がこの世界にきた時は、レベル1だった。
安全地帯を離れると、すぐに精神状態が不安定になったが、レベル3に上がったあたりから三食で安定した。
幼児から子供ぐらいには、ランクアップしたかと思われる。
まだまだ不明点は多いが、『はじまりの場所』を拠点に、日本へ帰還することを目標として、充実な拠点ライフを目指すのだ。