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お届け便  作者: フクフク
本編
18/23

18




 お風呂から上がった俺の姿に、ベッドにいた白銀が「キャン?」と、心配した様子で、かけよってくる。

 上機嫌な俺は「ん? どうした?」と、白銀の頭をなで、お風呂からずっといる魔樹のツルに向けて「お風呂、最高だった!」と、親指を立てた。

 それを見た白銀が「キャン、キャン」と、なにやら魔樹に抗議している。魔樹のツルが、文字パネルで「ムネン」と示し、白銀に訴えていた。

 なんだ? ムネンって? と、二人のやりとりを尻目に、椅子に腰をかけた。

「っ……」と、痛みが全身にくる。服が皮膚に擦れただけで、ヒリヒリとした痛みがあるが、まだ我慢できる。上の服を着ないで、正解だった。

 俺の上半身、顔を含め、全身が真っ赤に腫れあがっていた。

 原因である石鹸擬きを片手に、水酸化ナトリウムの成分が、強すぎるのだと思う。服を洗う時にも、手が赤くなっていたので、直接肌に使えばこうなることは、わかっていた。だが、後悔はしていない。

 調合のレベルを上げる前に、袋から、塗り薬をだして、上半身にすり込む。これで、赤みは抑えられるだろう。



「おっふろ、おっふろ、おっふろ……ん?」


 俺が上機嫌で、お風呂場に足を向けると、白銀が俺の服を咥えていた。


「どうした? おまえも一緒に入りたいのか?」


 的外れな俺の質問に、首を横に振りながらも、咥えた服は放さない。

 ふと前をみると、お風呂場への入口である木の扉を魔樹のツルが、覆い隠していた。


「おまえら、なにがしたいんだ?」


 俺の声に魔樹が、文字パネルを持ちだし「バツ」と答えた。


「お風呂に入るなと?」

「キャン「マル」」

「えっ、やだよ」

「アカ」

「あか? あー、肌が荒れたことか?」

「マル」

「これはお風呂が悪いんじゃなくて、身体に使用した石鹸が悪かったんだ。ほらこれ、赤くならない石鹸だ。ボディソープって言うんだけどな。これで毎日身体を洗えば、清潔になるし、病気とかの感染予防にもなる」 

「キャン「バツ」」

「なんで!?」

「アカ」

「だから、赤くなったのは、石鹸の成分が強すぎて……。思い出してみろ。服を洗った時も、手が赤くなっていただろ?」

「……バツ」

「いま一瞬、心あたりがあっただろう! わかったよ。今日は石鹸を使わない。だけど、お風呂には入る!」

「キャン「バツ」」

「なんでだよっ! まさかっ! おまえら、お風呂を壊したら、嫌いになるからなっ!」

「……」


 その手があったかと、魔樹のツルがウネウネと活発に動きだす。


「おいまてっ! まてまてっ! 話し合おう。ここはお互い、話し合いが必要だ」

「……マル」


 魔樹の回答を確認してから、調合していたテーブルへと足を運ぶ。

 後ろにいる白銀が、俺の動向をちくいち確認しているが、抜けかけしてまで、お風呂には入らない。

 入るなら気持ちよく入りたい。

 色んな素材が、グチャグチャしているテーブルの前に座り、一番大事なことの釘をさす。


「まずお風呂は壊すなよ」

「マル」

「よし。じゃ、おまえらが誤解していることからだ。俺の全身が赤く腫れているのが、気になったんだろ」

「キャン「マル」」

「それが、お風呂に入ったせいだと」

「キャン「マル」」

「それは誤解だ」

「キャン「バツ」」

「心配してくれたのは嬉しいが、まずは俺の話を聞け」

「キャン「マル」」

「これは――」


 今日丸一日かけて製作したボディソープをみせ、いかに石鹸擬きと、ちがうのか。

 お風呂に入ることが、どれだけ大事で、俺にとって楽しみであるかを熱意をもって語った。

 実際に泡立てて、白銀の片足を洗ってみた。洗った白銀の足の毛に艶がでたのを確認させ、痛くないだろうと納得させる。

 お風呂に関しても、身体に悪い物質が含まれていたら、最初に影響を受けるのは魔樹だろうと説得する。

 結果、二人は納得してくれたが、身体の腫れが治まるまで、お風呂はお預けとなってしまった。

 くそっ、どうしてだ!

 家に、超豪華なお風呂があるのに、入れないなんて……。

 悲しみの極み……。






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