表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お届け便  作者: フクフク
本編
16/23

16




 昨日、白銀が狩猟した大量の獲物の解体と、採取した素材を整理するべく、朝から大忙しで、動いていた。

 ウサギの解体は、慣れたもので、次々とスムーズに処理がされる。ただ白銀が捕まえたウサギは、一個体が大きいので、解体に時間を要していた。

 とはいえ、解体スキルのおかげで、処理に失敗はなく、素材もきれいに仕上がっている。

 この解体スキルの利点は、解体知識がなくても、解体ができる点。刃物がなくても、鋭い石などを代替え、解体ができる点。不要な部分は、解体が完了すると、勝手に消える点だ。

 もちろん、刃物などの専用道具を使用したほうが、早くきれいにできる。その他にも、果物などで外皮が固いときも、解体で皮をめくったり、ウサギの肉を塊ではなく、スライスやミンチの状態で処理ができたりする。

 失敗もある。果物を解体したら、中身は液体だったとか、ミンチにはできたが、受け皿がなく、地面に散らばったとか。たくさん失敗もしたが、能力は、試してみるのが、一番だと学んだ。


 俺がせっせと、ウサギの解体に励んでいると、魔樹が、解体したウサギの皮と魔石をツルで器用につかみ、木の穴へ収納していた。

 さすが魔樹! 仕事が早い! 気がきく!

 なにができるか、いまからとても楽しみだ。希望はフワフワの布団セット! まあ毛皮の量が微妙だから、手堅く服だよなあ。寝巻きも捨てがたい。

 そうこうしている内に、ウサギの解体が終了した。

 全部で16匹になると、肉の量も半端なく、100キロは、堅いと思う。なにしろ異世界サイズなのだから。

 そろそろ解体のレベルが上がっても、いいのではないかと思うが、相変わらずのDだ。


 次はシカだな。

 袋から、身長の2倍ぐらいある大きなシカをだす。

 ドスッン。

 地面に落ちた音で、このシカの大きさを、改めて感じる。シカは過去2回解体したが、とても難儀した経験がある。解体レベルがギリギリなのだろう。

 さてと、腕をまくり、シカの解体をはじめる準備をする。まずは血抜き。解体スキルで、嘘のように早く血抜きができる。

 スパッ―。

 ん? 音がした方に顔を向けると、尻尾を振りながら、白銀が木の棒を咥えて、戻ってきた。それを魔樹に渡す。

 スパッ―。

 木の棒を受けとった魔樹が、ツルで遠くに投げる。それを嬉しそうに追いかける白銀。典型的な遊びをしていた。

 昨日の様子が嘘のように、元気に走り回る白銀の姿に、もう大丈夫だと理解していても、ほっとする。あのまま、ふさぎ込まないで、本当によかったと思う。


 昨日、魔樹に怒涛の質問をした結果、判明したことが、たくさんある。

 まず、ここの(・・・)安全地帯は、俺の家、所有物となっていた。魔樹が家で、外エリアの境界線までが、俺の庭との認識だ。

 そのため、俺の許可がなければ、人さえも入ることができない。もともと魔物などは、入れないエリアなので、俺以外の人が、その対象に加えられただけだ。

 次に、問題となった移動だが、ここの安全地帯は、この場所から動くことはない。外エリアへの移動の違和感は、外敵から数百メートル離れた場所、危険が少ない場所に、移動するようにできているらしい。白銀との距離が、数百メートルあったのは、この安全面が考慮されたようだ。

 白銀が、短時間で情緒不安定になった原因も、これが大きく関係していて、安全地帯に拒否されたものは、大きな精神負荷がかかり、その場所に恐怖を植えつけ、近づけなくさせるためのようだ。

 普通の魔物なら、すぐに逃げかえるほどの恐怖のようだ。しかし白銀は、それに耐え、俺を捜していた。なんて情に厚い狼なんだ。

 この質問中に、俺は感情的になり、つい願ってしまう。

 白銀が、安全地帯へ入れる許可を教えて欲しい(・・・)


『承りました』


 どのような素敵アイテムが届くのか、期待していると、魔樹が「マセキ」と、文字パネルで示す。

「そうきたか!」と、袋を逆さまにして、すべての魔石をだす。すると魔樹のツルが複数伸び、ひとつは、木の扉を開け、ひとつは、魔石をつかみ、それを次のツルに渡すリレー方式で、外まで魔石を運んでいく。ここからは確認できないが、おそらく木の穴へ魔石を投入しているのだろう。

 魔石の数が半分以下となった時に、魔樹から「デキタ」との報告が上がる。

 はじめは、許可の方法がわからないと、回答していた魔樹だったが、俺が願った瞬間、許可の方法がわかったようだ。

 ここで俺は、ひとつの仮説をたてる。

 安全地帯は、魔樹と融合されたのではないかと。

 俺が、魔樹を安全地帯の中心に植えたときは、ただの木の苗だった。しかし、その成長過程で、理由は不明だが、魔力を保有する樹へと変化した。徐々に魔樹の魔力が増え、安全地帯と融合しはじめ、結果、俺の所有物になったのではないかと思う。

 魔樹が、安全地帯の仕組みに詳しい理由も、そうであれば、説明ができるし、すべての辻褄が合うのだ。魔樹の話だと、自然と俺の質問に答えが浮かぶそうだ。


「痛ッ!」


 シカの皮を剥いでいる際に、刃物で誤って指を深く切っていた。

 やはり大きい分、技術がいるようだ。

 この処理で、解体レベルが上がればいいが……。

 止血しながら、ほどんど解体されていないシカをみて、イノシシは難しいかもしれない。まだ袋からもだしてもいないイノシシに、戦意喪失した。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ